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賃貸から心境の変化

実は、家を探し始めて1年が経っていた。そのあいだ、転職して新しい環境に揉まれたり、揉まれたり、揉まれたりしながら、再び本腰を入れて家を探し始めたのが4ヵ月ほど前だった。

今住んでいるのが賃貸マンションだ。アパートと言ったほうがしっくりくるかもしれない。学生が多く住む地区の、30㎡ほどの広さ。コロナ禍に住み始めたこの部屋は、フリーランスとして仕事をしていた私にとっての「城」だった。

家を買う前に、いくつか家に住んでみて、自分が譲れない条件は決めておいた方がいい。私は、駅近、ほどほどの広さ、築浅で今の賃貸アパートを選んだが、「賃貸マンションなんてどこも一緒でしょ」と思っていた自分をぶん殴りたくなった。

駅近…駅が近いにも色々ある。駅が近いのは線路が近いこと。今の部屋は電車が通るたびに揺れる。あと音がする。踏切の音が一日中鳴り響く。

北向き…寒い。方角にこだわりはなかったが、北向きの寒さを知った。夏は涼しい。立地によるが湿気がこもりがちであらゆる植物をダメにした。

木造…隣の音がめっちゃ聞こえる。湿気。

というわけで、いろいろ条件はあるけれど、それぞれの条件が重なると寒くて一日中振動と音がする静寂とはほど遠い環境になることを知った。よい学びだった(のか?)。

コロナ禍を乗り越え、転職をし、家に求めるものが変わった。「住めりゃいい」から、ちゃんとした住環境を求めるようになってきた。車を持たず、結婚もしていない、どこか身軽でありたいと思っていたから「ええ?家?買うの?」と、何か心境の変化があったのかもしれないと思った。まるで他人事のように。

新築マンションと中古マンションのどちらも見学に行ったけれど、結果的に築8年の中古マンションに決めた。新築マンションギャラリーは、マンション購入のあらゆることを学べて、それはそれで行ってよかった。

新築マンションはその立地にマンションが建って今後街がこんな風に発展していく予定です、という将来性に目を向けている一方、中古マンションはすでに街が出来上がっている。家を購入することは、自分の未来をよりよくしていきたいからだけど、私はそこまで街の将来性に期待はしていない。

おそらく街のことをよく知らないデベロッパーが街の偉人を取り上げた「この偉人が生まれた街、○○市。そこには可能性がある」というムービーを見せてもらったりもしたけれど、実はその偉人が活躍したのはこの市じゃないし、偉人の博物館は遠く離れた別の市にあったりして、苦し紛れに偉人をプロモーションに使用している気がしてどうもなあという印象だったこともあった。もしかすると、他府県から移住してくる人たちには効果的なのかもしれないが。

別の新築マンションギャラリーでは、初めて一人で足を運んだ際に「今日はご主人はお仕事ですか?」と聞かれて、「いえ…」と答えた瞬間が一番気まずかった。これは女性一人でマンション購入を検討していることに対する後ろめたさではなく、スタッフの人に「世の中でマンション購入を検討しているのはカップルやファミリーだけではない」と知らしめてしまったことに対する、何というか仕事上の小さなミスを目の当たりにしてしまったような気まずさだった。

これらの体験はささいな理由にしかならないが、新築はやめて中古マンション探しに集中することにした。夢を見るのは自由だが、足もとを見定めながら着実に歩かないと。何せ独りなのだ。足を滑らせたところで、誰かが手を差し伸べてくれるわけでもあるまい。

住みたい駅周辺のマンションに狙いを定め、条件に近い物件が出るたび内覧に行った。10件ほど見ただろうか。入居中で気を遣いながら部屋を見せてもらったり、壁のラクガキから小さな子どもがいたことがうかがえる部屋を見たり、同一のマンションでも先住者によって部屋が全く違ったりした。

毎日、更新されない中古マンション情報を眺めて、見尽くしてしまった。一人で住むには広すぎる80㎡超で予算的にもやや高いマンションが、その時点で第一候補だった。広さを持て余すのは明白。しかし部屋のきれいさと立地は良いので候補から外せずにいた。

……ところに、新着物件が飛び込んできた。情報公開されて一週間経たずに内覧へ行き、即決した。65㎡ほどで、私が望む和室もあった。もう少し時期が遅ければ価格が下がったかもしれなかったが、これだけ探してこの条件は先にも後にも出てこないだろうと、ええいと決めてしまった。

決めてしまっちゃったのだ。

箱は契約した。今の家より広くなるが、置く家具がほとんどない。リアル「どうぶつの森」が始まろうとしている。エアコン、照明、カーテンは先住者の残置物を使用することにした。カーテンはいつか一変させたいが、しばらくのあいだは部屋が日焼けしないように活躍してもらおう。

ローンとか、不安もあるけれど、やっぱり楽しみになっちゃうね。購入した部屋の詳細はまた今度。






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