リーダーシップの範囲:スパン・オブ・コントロールと上司の気遣いから得た学び
先日、自分のプライベートコーチとリーダーシップについて話す機会がありました。そこで、効果的なマネジメント範囲、つまり「スパン・オブ・コントロール(管理範囲)」について教わりました。そして、その後の上司との会話を通して、この概念の重要性を改めて認識することになったのです。
スパン・オブ・コントロールとは?
スパン・オブ・コントロールとは、一人の管理者が効果的に管理できる部下の人数を指します。理想的な人数は状況によって異なりますが、一般的には5人から8人程度と言われています。これは、管理者が部下一人ひとりと適切なコミュニケーションを取り、業務を監督し、サポートを提供するためには、ある程度の範囲に絞る必要があるためです。特に、業務が複雑であったり、高度な専門知識を必要とするチームの場合、管理範囲はより狭くなる傾向があります。
今回コーチから特に学んだのは、優れたリーダーは部下をよく見ている、ということです。そのため、スパン・オブ・コントロールの範囲を超えた部下の部下の状況も把握していることが多いそうです。しかし、重要なのは、違和感や改善点があった場合、直接その部下の部下に伝えるのではなく、必ずスパン・オブ・コントロールの範囲内の直属の部下を通じて伝えるということです。
これは、以下の2つの理由に基づいています。
直属部下の成長を促す: 間に人を挟むことで、直属の部下は上司の意図を理解し、部下への伝え方、指導方法を考える機会を得ます。これにより、部下自身のマネジメント能力、コミュニケーション能力の向上につながります。
コントロール外の部下との過剰なつながりを避ける: 上位者が直接部下の部下と頻繁にコミュニケーションを取ると、組織の指揮系統が混乱する可能性があります。また、中間管理職の権限が弱まり、組織全体の統制が取れなくなる恐れもあります。意図的に直接的なつながりを避け、組織の階層構造を維持することで、より健全な組織運営を心掛けているのです。
コーチのこの教えは、単に人数管理の話ではなく、組織運営、人材育成、コミュニケーション戦略など、多岐に渡る重要な示唆を含んでいると感じました。
上司との会話で得た確信
後日、この話を私の上司である課長にしたところ、「確かにそうだね」と共感してくれました。そして、自身の経験に基づいた興味深いエピソードを教えてくれたのです。
課長が部長とともに役員に報告に行った際、役員が上司である部長の様子をじっくりと見ていたそうです。報告が終わった後、役員は部長に対して「課長が少し疲れているように見えるが、大丈夫か?」と気遣う言葉をかけたそうです。
この話を聞いて、私は大きな気づきを得ました。役員というさらに上のポジションにいる人は、自分が見ることのできる範囲、つまり部下の様子や状況をしっかりと把握し、気遣うことができるのだということです。それは、役員が自身のマネジメント範囲、つまりスパン・オブ・コントロールを意識し、効果的に行動している証拠だと感じました。広い組織全体を管理する役員であっても、直接的に目が行き届く範囲を意識し、その範囲内の人間関係や状況を把握しようとしていることが分かります。そして、必要に応じて、部長を通して間接的に状況を把握したり、指示を出したりすることで、組織全体のバランスを保っているのだと理解しました。
今後の行動への決意
今回のコーチとの会話、そして上司との会話を通して、私も自身の行動を改める必要があると感じました。これまでの私は、どうしても全体を見渡そうとし、全てに気を配ろうとしていました。しかし、それは現実的ではなく、かえって注意散漫になり、本当に大切なことを見落としてしまう可能性があったことに気づきました。
今後は、自分が見ることのできる範囲、つまりスパン・オブ・コントロールを意識し、より効果的な行動を心がけていきたいと思います。具体的には、
優先順位をつける: 全てを平等に扱うのではなく、重要なことに優先的に注意を払う。
適切な委任: 部下に仕事を任せることで、自分の負担を軽減し、より重要な業務に集中する。
コミュニケーションの質を高める: 限られた人数とのコミュニケーションを密にし、より深い関係性を築く。
部下を通じたコミュニケーションを意識する: 部下の部下への伝達事項は、必ず直属の部下を通して行う。
これらのことを意識することで、より効果的なリーダーシップを発揮し、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献できると信じています。今回の経験は、私にとって非常に貴重な学びとなりました。
この記事が、リーダーシップに関心のある方々にとって、何かしらのヒントになれば幸いです。