妖精の恩返し
今日、我が家ではブドウ棚の手入れをした。
枝を剪定し、葉を全部刈り取ったのだ。
今から、手入れをした理由を書きたい。
大きく二つある。
一つ目は、ブドウの生育をよくするためだ。
私はブドウの栽培を経験したことがないので詳しいことは知らないのだが、こちらでは葉が生い茂ると一度全部刈り取るのが普通らしい。
そうしないと、ブドウの実のつきが悪くなるんだとか。
もう一つが今日のメイン。
ブドウ棚の上から腐臭がするからだ。
この腐臭の正体を知り、対処するため。
*
この腐臭は三日前からしていた。
はじめはブドウ棚ではなく、マンゴーの木の下が臭っていた。
ときどき、我が家へくる野良猫が食べたネズミを捨てていく。
今回も明らかに「ネズミだな…」という臭いがしていた。
不運にも雨季に入っていたため、雨に濡れて腐敗スピードも速まっていたと思う。が、死骸は見えない。
家族であちこち探して、一匹、やはりネズミを見つけた。
スコップで死骸を取り出し、庭に埋めて、なんとか「これで大丈夫」と胸をなでおろした。
ところが、次の日もまだ臭う。
「えー⁉」
「もう一匹いるのかな?」
私も姑も夫も義兄も、みんな顔をしかめている。
ネズミよ、君は一体どこにいるんだー????
*
しばらくして姑が「絶対にこのブドウ棚の上よ」と言い出した。
たしかに、ネコたちはこのブドウ棚の上にあがることもある。
でも、棚の上にネズミを置いて食べるかなぁ?
疑問は湧いたが、言われてみればブドウ棚の上あたりが臭う気もする。
姑の寝床はブドウ棚のすぐ脇だった。
姑は臭いがひどくて眠れないという。
それは辛い。
義兄が芳香剤を買ってきて、ブドウ棚と姑の寝床の境に取り付けた。
「えー、死骸の臭いと混じって、余計に臭くなるよ」
私が文句をいうと、姑が「いい匂い~」とうっとりした。
ホンマかいな?
まぁ、お母さんがこれでいいならいいけど…。
翌朝、姑は「今は死骸の臭いがするけど、夜は芳香剤の香りをかいで寝たからよく眠れた」と言った。
ホンマかいな?
でも、昼間だってこの臭いはイヤでしょう?
「うん、それは困る」
そんなわけで、ブドウ棚の葉を刈り取ることにしたのだ。
刈ってしまわないとネズミがいるかどうかわからないもんね。
夫にも話をとおして、昨夕お隣のSさんに刈り取りをお願いした。
*
Sさんは朝一に来て、半日かけて丁寧に剪定し、全部の葉を刈り取ってくれた。
それがどうだろう!
棚の下に落ちた葉を掃けども掃けども、ネズミの死骸は見つからなかった。
ほかの動物の死骸も、腐った葉っぱもない。
ええええええーーーーー。
私と姑は顔を見合わせた。
なんでーーーーー?
そしてそして、さらに奇妙だったのは、何もいなかったはずなのに、ブドウの葉っぱを刈り取ってからは臭いが消えたことだ。
気のせい???
いや、姑も夫も「もう臭いはしない」と言っている。
なんでーーーーー?
わからない。ブドウの好きな妖精か何かがたくさんブドウをほおばって、お礼に強烈なオナラをしていった…ってことにしようかな。めでたし、めでたし。
サポートはとってもありがたいです(ㅅ⁎ᵕᴗᵕ⁎) 2023年年末に家族で一時帰国をしようと考えています。2018年のロンボク地震以来、実に5年ぶり。日本の家族と再会するための旅の費用に充てさせていただきます。