娘からの涙の手紙
洗濯機を回したのに干すのをスッカリ忘れていた。
…と気が付いたのは市場へ行く直前だった。
でも、干すより先に市場かな。
早くいかないとお店が閉まり始めるもん。
いや、夕方から雨が降るかもしれないから、早めに干したいな。
あー、市場、洗濯物、市場、洗濯物…どっちにしよう?
市場から帰ってきたら帰ってきたで、別のお店でお米と砂糖も買いたい。それが終わったら料理だし…。
あ、そうだ!
おばあちゃんと幼稚園を休んでいる娘・プーちゃんに、洗濯物を干すのをお願いしようっと。一週間ほど前にお願いしてうまくできたばかりなんだ♪
おばあちゃんはうたた寝していたので、プーちゃんに依頼した。
すでにYoutubeに夢中になっているプーちゃんは、曖昧な返事をした。
聞いてないなぁ~。
期待せずに市場へ行った。
*
帰ってきたら、おばあちゃんが洗濯物を干し終えるところだった。
「あらお母さん、ありがとう!」
「プーちゃんがお母さんに頼まれたって言ってたよ」
プーちゃんにもお礼を言うために家の中へ入ると、誰もいない。
あれ?
机の上にこんなメモがあるのを見つけた。
(↑文字が書けないプーちゃんは、波線をひくことで「何か字が書いてある風」にしている)
ギョ!
泣いてる!
ハートブレイク!
何があった????
プーちゃんを呼んでも返事がない。
キョロキョロすると、いつも開けっ放しの寝室のドアが閉まっているではないか。
「プーちゃん」と寝室のドアを開けようとしたが、ドアが重くて開かない。
「ヤダ!」
中から娘の声。
えーっと…なんかあったっけ?
私はプーちゃんが泣くようなことをしていない気がするけど…。
泣いている理由はわからないが、私は寝室に入りたかった。
プーちゃんの顔を見たかったのではない。←ひどい
引出しからお金を持ち出したかったのだ。
いや~、暑くて。
アイスクリームを買いに行こうと思ったん。
こっちは南半球やから、今は真夏。
市場に行って帰ってくるだけで暑いねんって。
「プーちゃん? 開けて」
「ヤダ!」
「アイスクリーム買いに行くけど、一緒に行く?」
「…いいよ」
アイスクリーム最強!
心の中でガッツポーズをしていたら、娘がドアを開けて出てきた。
泣いている。
「もうやだ…」
「どうしたん?」
「おばあちゃんが…」
まさかのおばあちゃんである。
「おばあちゃんが、なぁに?」
「おばあちゃんが服を干したぁぁぁぁぁ」
え。泣くとこなん、それ?
おばあちゃんが干してくれてよかった、じゃないんや。
「プーちゃんが(洗濯機から干す場所まで服を)持って行ったの!しんどかったの!!!なのに、おばあちゃんが干したぁぁぁぁぁ。プーちゃん、干したかった!」
ああ、なるほど~。
全部、自分で頑張りたかったんだ!
「プーちゃんが干したかったんだね。それで、市場から帰ってきたママに『わぁ!プーちゃんが干してくれたの?ありがとう!』って言ってほしかったんだね」
「うん!!!!」
こぶしを握り締めて、両足を地面にグンと突っ張って、プーちゃんは大泣きした。
「…アイスクリーム買いに行こっか」
「うん、行こ」
「暑いから帽子かぶっていこう」
「うん」
泣き顔を隠したくて、帽子を目深にかぶったプーちゃんと外へ出た。
「おばあちゃん、わかってくれなかったね」
「うん…」
プーちゃんはチョコレート味のアイスクリームを選んだ。
すっかり機嫌がよくなって、家に帰ってすぐに「おばーちゃーーーん!アイスクリーム買ったよーーー」とおばあちゃんの膝の上にのった。
サポートはとってもありがたいです(ㅅ⁎ᵕᴗᵕ⁎) 2023年年末に家族で一時帰国をしようと考えています。2018年のロンボク地震以来、実に5年ぶり。日本の家族と再会するための旅の費用に充てさせていただきます。