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Amazonの置き配 4月9日 しいたけ日記 

 今朝、ベッドの中でスマホのメールを開いて驚く。玄関に昨日届くはずだったAmazonの荷物が「置き配完了」していたのだ。

 昨晩から雨がひどかった。絶え間なく降り続く雨はときどきゴーッという激しい音に変わり、夜中、降り続けていた。
 
 私は注文していた本が届く日だというので、メールを開いては「配達中」の文字を確かめ、トラックの音が聞こえるたびに、玄関を確認しに行っていた。午後8時になっても荷物は届かなかった。その代わり、Amazonから「ご注文商品の配送について」というメールが届き、配達状況が確認できること、何らかの事情で配達が遅れる場合があることなどが記されていた。「今日は届かないのか」と私は思った。

 以前にもAmazonで注文した品が「翌日配送」と書かれているのに、2日も3日も連絡なしで届かないことがあった。だから今回も同じかなと思ったのだ。雨もひどいし、明日来るのだろうと。

 「置き配完了」の写真を見て、私はベッドから跳ね起き、走って玄関ポーチを見に行った。ポストの下に立てかけられた段ボールはびしょ濡れで、持ち上げると箱が破れてくる。ふにゃふにゃになった箱の破れ目から指を入れて開けると、紙の緩衝材を挟んではあるが、ビニールの梱包も何もない状態で本が出てきた。案の定、濡れている。慌ててファンヒーターにあてたり、ドライヤーで乾かしたりしてみるが、表紙はゆがんでしまった。運がなかったとあきらめるしかないのかなと思う一方で、なんだか納得できない。

 第一、こんな雨の夜に濡れた玄関ポーチに荷物を置いていくか?玄関はライトがついていたし、在宅していたのはわかるのだから、チャイムを鳴らして手渡しに切り替えてもよくはないか。濡れたところに段ボールを置くことに配達員は躊躇しなかったのか。しかも、配達完了が人の出入りの少ない夜9時で、気付かない可能性も高いというのに。

昔、某運送会社で配達事故の保険を担当したことのあるカゾクが「配達中の汚損だから交換してもらえるはずだ」と言うので、調べたら、Amazonで簡単に返品・交換の手続きができた。明日荷物を引き取りに来て、代わりの品も明日届くという。それにしても、なんかもやもやする。せっかく届いた本がこんなことでゴミになるし、今日はその本が読めなくなった。それに二度手間、三度手間になった。

 配送員はたくさんのさばききれない荷物を抱えて、一個にかける時間をなるべく短縮したかったのだろうと想像してみる。夜も遅くなり、天候は土砂降り。早く配達を完了して会社に戻りたい気持ち。
 一方で、私もずっとその本が届くのを楽しみにしていた。1か月くらい購入するのを検討して、やっと買った本だった。朝からいつ来るのだろうと予想して、おそらく夕方に来るはずだから、それまでにやることをやっておいて、夜は読書をしようと考えていた。

 誰かが注文して、誰かが梱包して、誰かが届ける。荷物のこちらとあちらに生身の人間がいて、その姿はお互いに見えない。SNSとかインターネットとかばかり使っているせいか、その向こうに見えない人がいて、それぞれの場所で何かを思ったり考えたり対処したりしていることを忘れがちだ。いや、忘れるというよりも見ないふりしているというか。

これからAmazonの使いかたをどうするかという問題と同時に、私のいる場所からよく見えない人々のことを想像した。


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