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しいたけ日記 ピカッチがいない日 11月17日

 ピカッチがいないと、空気の振動がないからやけに静かだ。昨晩もしーんとしていた。落ち着きのない破壊的波動がない。ざわめきのない夜。不思議だ。ピカッチを妊娠中のある夜、光の玉がぶつかって来た。重たい光の束が全身を突き抜けて、イメージ映像みたいなものが流れた。あれはピカッチだったのだなと思う。あの波動が。エネルギーの塊。

 夢。妹の右手の五本の指が全部短くなっている。浮腫んでぶよぶよになった短い指。「その手どうしたの?」と言ったら、妹は何でもないふうで「これ?霊が入ってるんだよね」と言う。霊が入ったらそんな風になるのか。「ほらここにも」と妹が言って、服の袖をめくりあげると、手首の関節も腫れて赤くなっている。「手をかざしてみて」と言うので、妹の手首のあたりに手をかざすと、体に電流が流れて、何かが自分にも乗り移ったように思った。「大丈夫?」と訊かれて、「ああ、大丈夫」と喉がつまりながらもやっと答えたけれど、その答えはもう自分の頭から出たのではない気がしている。どこか遠くに私は追いやられて、そこから私はもう一人の自分を眺めているのだ。

 雨が降っている。室内干しの除湿機のうなる音。ネズミーランドは晴れているのか。東京の天気予報を見る。晴れ時々雨。傘持っていかなかったけど、多分大丈夫だろう。

 昼。居間で筋トレしていたら仔猫のマリンが興味津々でやってくる。私のフリースについているチャックの紐にじゃれつく。ズボンの紐にじゃれつく。しまいに四つん這いでプランクしている垂れ下がった私の服の中に入ってくる。お腹がくすぐったい。笑い声がもれる。ふふ、ふふ、ふふふ。仔猫の毛は化学繊維のモップみたいにメロメロしている。メロメロの毛が私をくすぐる。あと10秒。ふふ、ふふふ。「ちょっとやめてよ~マリンちゃん!」と言って、プランクが崩れ落ちたら、マリンちゃんは私の服の中で、カンガルーの赤ちゃんみたいになってキョトンとしている。

 雨がひどくなってきた。

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