小学生でアウフヘーベンを教えられてた話

昔通っていた小学校の先生が変わっていて、生徒を二手に分けて議論させる、ということを時々させられた。

この先生のエピソードは過去noteにも書いたことがある。

先生は
「いいか、片方の意見と反対の意見を戦わせて、その両方を汲み取ってより良い意見が生まれるんだ、それをヘーゲルという人が考え出して、『正→反→合』とまとめた。いいか、『正→反→合』だぞ」
と教えてくれた。
その時は私も詳しくはよくわからなかった。
ただ国語や他の授業中にも「『正→反→合』!『正→反→合』!」と言われてたので、『正→反→合』という単語とザックリした意味は一応理解していた。

ある時、生徒を二手に分けて行う議論で「人間の成長に本は必要か不要か」というお題が振られた。
文字があればトイレ用洗剤のラベル裏の文字も全部読む私は当然「本が必要」派であった。
しかし、先生に割り振られた役は「本は不要」派だった。
当然の如く議論にならず、【私より本を読まない「本は必要」派】に一言も発することもできずケチョンケチョンにされた。

さすがに先生も私が哀れになったのか
「本が好きなみどりーぬにはちょっと難しかったかな。みどりーぬならできるかもと思ったんだが」
と慰められた。
いや、お世辞言わんでくださいよ。硬直して狭い視野の準毒親育ちだと、本がそれ以外の視野を得るための、生き延びるための唯一の方法なんですよ…ともちろん小学生当時の私に言葉にできるはずがなかった。

今ならね。
ハウツー本とか頭で理解したつもりになっててもちゃんと行動してみないと頭で考えるようには実際は上手くいかないって言えるんだけどね。
本の世界が唯一の心の避難場所の小学生だったからね…。

後年、アウフヘーベンという概念に触れた時『正→反→合』!と何度も言っていたその先生の声が蘇った。
先生、小学生にアウフヘーベン教えるとかやっぱ普通じゃないわ…とその時思ったのだった。

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