画像生成AIから最も遠く離れたところにいる自分から見たあれこれ

前回神絵師によるフォロワー弱者救済ムーブと弱者絵師側についての疑問の話を書いた。
その最後で不安要素について触れた。
今回はその件である。

といってもタイトル通りで画像生成AIの話である。
前回も書いた通り私はX(旧Twitter)では絵師界隈を誰一人フォローしていない。
なので最近画像生成AIにまつわる絵師同士(？)の分断が起きているようだということに遅ればせながら気がついた昨今である。
(しかし、AI生成で画像作る人を「絵師」と呼んでいいものか迷うところ)
直近ではそういった問題が声優界隈にまで波及したらしい。
(テクニカルニュースには興味があるのでネットニュースで生成AIの記事を見ることもある)

で、私は前回の神絵師によるフォロワー弱者救済に群がる弱者側の絵師集団を見た時、実はこう思った。
「この絵師たちはこれからが大変だな」

こう考えたのには複数の理由がある。

ひとつは「神絵師に拡散してほしい=多数の人に見てほしい=有名になりたい」ことのデメリットに思い至ってなさそうに見えたことだ。

俗に「有名になるとはバカに見つかること」というありがたい格言がある(芸人さんが言ってたんだったか)

つまりはそういうことである。
有名になるとアンチなども発生することになると思うのだ。

それだけではない。

まだ有名になってない絵師で、特に流行りの絵柄を志向する場合、これからの絵師は戦わなければならない対象が増えてしまった。
それも手強い相手である。
その相手とは冒頭に書いた通り画像生成AIである。
これがふたつ目の不安要素である。

実はこれは以前のnoteでも書いたことがある内容だ。

ちなみに私自身のスタンスとしては画像生成AIそのものを否定するものではない。
(著作権法を侵害せず元絵の絵師の権利を尊重する、という条件付きで)

要はまだ有名でない絵師は、人気の、または流行りの絵柄を集めた(非合法なモノも含んだ)データセットで学習した生成AIの生成画と競い合うことになる。

そして仮に努力が実って念願の神絵師ポジションを手に入れられたとする。
すると今度は名指しで生成AIに捕食されるターゲット側に回ることになるのだ。
これが３つ目の不安要素である。

そこまで考えた上で神絵師の施しの掌に飛び乗り指にぶら下がった絵師が果たしてあの場にどのくらいいたのか。
個人的にそこが気になった。

ちなみに私はオタ界隈のメインストリームから完全に外れたぼっちコンテンツをただ排泄してるだけのショボ絵師である。
なのでそんなぼっちコンテンツを喰いに来る悪食も現れるはずもなく、遠くから「低みの見物」という形になる。
もちろんショボ絵師といえど喰われたいとは一毫ほども思わないけど。
まあ捕食者から見たらショボすぎて激不味コンテンツなのは確かだ。

そして私自身はAIで絵を生成したいかというと、全然興味がない。
デジタルお絵描きしてるのにほとんどデジタルらしい機能を使わず描いてるくらいなので、AIを使いたいという気持ちがまず湧かない。

それからAI生成画はつまるところガチャなので当たりを引くまで繰り返すより自分で描いた方が早い。

そもそも私の描きたい絵はそんなに難易度の高い絵でも技術や高密度の作業の必要な絵でもない。
数多の神絵師たちの描く絢爛豪華な美少女や美青年たちではなくて、自分の脳内ブラックボックス内に隠された脳内イメージを描きたいのである。
自分の脳内にしかないイメージは、他所様の美しく技術力高い美麗イラストにも、AIの学習元のデータセットにも、そこから生成された画像にも存在しない。
だから自分で描いた方が早い。

脳内イメージには必ず「ツボ」があって、ツボ「周辺」ヒットとツボヒットでは全く描いた充実感が違う。
「大体」イメージに合ってればいいというわけではなく、「ここはこうじゃないと『絶対』ダメだ」、という細かすぎるこだわりポイントが存在する。

それも、描く前からこだわってるわけではない。
描いてみてちゃんとツボにヒットした線が、描写が具象化された瞬間に初めてそれがツボだったことが知覚される。
つまり最初から狙っては描き表せないもの。
それが脳内ブラックボックスのツボヒットイメージである。

なのでツボヒットを目指してしまう。
(まあ目指して狙ってコントロールできるモノではないが)
ガチャのAI生成では「大体いい感じのツボ周辺」はたくさん、それこそ無数に出てくるだろう。
しかし、肝腎要のツボに完全にヒットするまでには一体どれだけ生成せねばならないのか、そこが不明である。
出てくる絵柄も(私にとっては)ツボ絵柄ではないし。
それならたとえにじり寄りしかできなくても、細かいこだわりポイントにジリジリと自力でにじり寄った方が数段早いと思うのだ。

それ以前に私のPCは何世代も前のsurfaceなのでAIどころかまずマシンスペックではねられる。

そもそも他人様のように高度に美麗な塗りのために下書き→ペン入れ→マスク作成→色塗りという「工程」を経たり、マスク切ったりといった「作業」が性に合わない。

なので私は一本ずつの線を引くこと自体が楽しい「下書きなしの一発描き」でしかほぼ描かないというかなりの変態である。
一本線を引く→「うひっ、次はこんな線が見えてきたぞ！」→見えた線を引く→「うひっ」→線を引く→「うひっ」…
というのが私のお絵描き風景のスローモーション変換である。

つまり私は絵描きとしては、他の絵師の皆さんのように美麗で高度でゴージャスな絵を描くための努力や、必要な作業にも耐えられないイラチのポンコツなのである。

言い換えると私は「見えた通りの線を一本ずつ引く過程のドライブ感に楽しみを見出す変態」なので、生成AI使ってその過程をすっ飛ばしてしまったら私のお絵描きの楽しみ自体がなくなってしまうのである。

というわけで、自分自身は画像生成AIから最も遠く離れた場所にいると思ってるという話。

しかし絵師全般の環境として考えると今は過渡期ということになる。
今までは(AI学習とよく比較される)二次創作同人誌界隈も性善説と黙認で成り立っていた業界と言えるだろう。
それが生成AIの本格参入によって性善説による理想論だけでは立ち行かなくなってきているのかもしれない。

一本線を引く→「うひっ、次はこんな線が見えてきたぞ！」→見えた線を引く→「うひっ」→線を引く→「うひっ」…で描いた絵