くぐもる声で囁く少女
石の上のバイオリン弾きが
片目を瞑り
汗をかきながら働く人夫が
怠け者を蹴り上げる
踊り子達が軽やかに羽を広げれば
王様が角を磨く
頬を赤らめた少女は
囁きを止めて歌い出す
拳を突き上げ
とうとうと語る思いのたけ
ハーメルンの嘘つき市民
お腹を空かせたグレーテル
鼓動の高まりはミュージカル
虫達を舞台装置に見立てた少女に
観客はお前自身だと囃す蝉
驚いた少女は背をむけてしまう
うっかり踏みつけた
ひなげしを拾いあげても
くぐもる声は自己憐憫だと
気づく事も無いままに
#詩 #創作