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詩 押し花


古くなった名作文学全集の
黄ばみの入った頁をめくる
そこにはさんだ一輪の押し花が
結局季節を見送った
夏に始まり夏に終わらせた
ひとりの少女の純欲は
年月を閉じ込めた古本の匂いのように
か細い糸に絡みつく遠い出来事

花の汁跡が残る紙を外せば
挿絵から立ち上る
アルト・ハイデルベルクの
青臭い約束が胸に沁みる

できあがった押し花を
どうしようと考えていたのか
窓の外
まだ強い影を作る欅が葉を揺らす

我に帰る前
少し涼しい風がかき鳴らす
夏の残響


#詩 #創作

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