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倒産寸前の会社で働いています

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小説です。私こと斉藤が働いている会社、実は倒産寸前だった!この先どうなるの?
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「倒産寸前の会社で働いています」第四話

「倒産寸前の会社で働いています」第四話

 事務所の前に現れた二人を見て
「飯田さんも来たんか。」
と、基谷さんがつぶやいた。それにより私は、河野さんともう一人の人が飯田さんだと知る。河野さんと飯田さんは、
「お邪魔しまーす!」
と言って、元気に入って来る。飯田さんは、
「いやー、これはヤバいで。膵臓癌ステージ4。」
と座るなり笑いながら、社長に告げる。
——それ、助からんやつなのでは…。しかも笑いながら告げられてる…。アホって見下してた

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「倒産寸前の会社で働いています」第三話

「倒産寸前の会社で働いています」第三話

 いつも、事務所で色々と話をするのは社長である。話すのが大好きで、もう何回も聞いた話だが、私達に話したことを覚えていないようで、
「この後どうなったと思う?」
みたいな聞かれ方をよくする。その話の結末知ってるよ、とは思うのだが、
「えー…?」
と言って濁していると、待ち切れないのか勝手に結末を話してくれるので、いつもその手で乗り切っている。特にその返答に違和感を覚えている様子もない。
 話し上手な

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「倒産寸前の会社で働いています」第二話

「倒産寸前の会社で働いています」第二話

 少し、私斉藤が勤めている、会社の紹介をしておくと。
 田舎の小さな運送会社で、事務所で働いているのは、社長を含め4人。
 前出の基谷さんは、運行管理者である。
 運行管理者がどういう役割か、詳しくは説明しないが簡単に言うと、働いているドライバーさんをまとめる人である。体調不良者が出たり、事故があったりすると、その人の代わりに運行をすることもあり、事務所に不在のこともしばしば。基谷さんは、長年ドラ

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「倒産寸前の会社で働いています」第一話

「倒産寸前の会社で働いています」第一話

3月初旬

 ある日、社長が私にこう言った。
「あのー斎藤さん、先月の銀行の収支が600万円赤字なんやけど…。」
「え…。」
——は?600万?意味が分からないんですけど?
「ちょっと、調べてみます。」

 言っておくが、私斎藤は、経理でもなんでもない。
 うちの会社に経理は存在しない。会計士さんに丸投げしているからである。
 とはいえ、会計士さんに丸投げする前段階で、私が請求書や領収書をまとめた

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