実家に娘たちと半年間も居候した話です

家族でイギリスに移住してまもなく1年
夫がイギリス国籍を持っているため
家族としてビザを取得して住んでおります

ところが、このビザ獲得までの道のりが非常に大変でした

通常申請すれば2ヶ月ほどでビザは降りるのですが
私たちが申請したタイミングでウクライナとロシアの戦争が勃発。

イギリスは人道的支援を最優先にするため
安全な国に住んでいる人の家族ビザ発給を後回しにしました。(それは命を守るために大切なことだから良いと思っています)

渡英したのち、住む場所がなくては困るなどの理由で
夫は先にイギリスに移動していました。

私は、日本に残り、当時住んでいた神奈川県の家の引き払いや、引っ越し、行政手続きを行う担当です。

手続きを全て整え
スーツケースと飛行機に乗せられる量のダンボール数箱に荷物をまとめました。

そして、最後、しばらく会えなくなるからと、実家に1週間ほど滞在してから
イギリスに向かう予定でした。

でも、待てど暮らせどビザが出ません。
そして、いつビザが出るのかとの問い合わせにも答えてもらえません。

私と二人の娘は、なんとそこから半年もの間、
私の実家のある長野県で暮らすことになりました。
転校や保育園の転園の手続きをして
想定していなかった長野県での生活をスタートさせることになったのです。

そして、半年、待ちに待ったビザが出ました。
いよいよ、イギリスに旅立つ、長野の実家の最後の夜

お風呂上がりの私に父が突然言いました

「おい、美鳥、ブラしないのか」

正直に申し上げますと
私はお風呂上がりに「ブラ」を装着したことは
ほぼ1度もありません。

風呂上がりの開放感の後に、胸を締め付けるベルトを装着することなど
愚の骨頂であると、信じています。

最近は胸の形をキープするためにナイトブラなるものを
意識の高い方が装着していることは知っていますが
私は「意志を持っての風呂上がりノーブラ派」なのです。

なぜ、今、父にそんなことを指摘されなければならないのか

なぜ、旅立ちの前日に
私の「乳事情」について急に尋ねてきたのか。

あれ?もしかして、乳首透けているのか?と一瞬の間にたくさんのことを考えて
「え?なに?お父さん」と聞き返しました

すると父はもう一度
「ブラシ ないのか?」と私に聞きました。

父は、私と娘たちが居候を始めてから平日の夜は毎晩
孫の髪を乾かす担当になっていました。

当時8歳と5歳だった娘たちの長い髪を
半年間の間、
丁寧にブラシでとかして、ドライヤーをかけていました。

そう。最後に孫の髪を乾かそうとしたら
ブラシがないことに気がつき

「ブラシ ないのか?」と聞いただけだったのです。

私は、子どもの時、父に髪をとかしてもらった記憶はありません。
そんなに面倒見のいい父親ではなかったと記憶しています。

イギリスで暮らして1年
ちょっと落ち込んだりすることがあると
私はこの
「おいブラしないのか」
と言う言葉を思い出しては
ちょっと笑って、そしてジーンとしています。

お父さん、私の娘の髪を毎晩乾かしてくれて
本当にありがとう。

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