歌舞伎再開の喜び
2月の公演を観て以降、新型コロナウイルスの影響で休演となっていた歌舞伎座。
先日、およそ半年ぶりの再開に日ごろの鬱憤も晴らす形で歌舞伎座に足を運んだ。
感染予防のため、入り口で検温および手の消毒、そしてチケットは自らが切って入場した。会場内の座席には座れない箇所には布製のバンドのようなものでふさがれていた。花道から2席は人が座れないように配置されていて、座敷も使えないようにしている。
会場を訪れる人のほとんどが無言で、マスクをしたまま。そのマスク越しからは観劇できるという期待に満ち溢れた表情が至るところで見受けられた。
2部と3部を同じ日に観た。お目当ては中村勘九郎さんの「棒しばり」と、七之助さんの「義経千本桜 吉野山」。
大向こうはないので、観客席は無言ながら拍手の強さがその喜び具合を表していた。
「棒しばり」では、勘九郎さんが空中に投げた扇子を惜しくも受け取り損ねた場面で、勘九郎さんの苦笑いとその舞台を壊さない機転とで会場内も温かい目で見守る空気が心地よかった。
左右を棒の両端で縛っているのだからなかなか難しい。
コロナ以前に観たときは、見事キャッチしてやんややんやと会場内が盛り上がったのを覚えている。
そして、3部では七之助さんの静御前にうっとりと見入っていたのだった。手の動き、身のこなし……女性以上に女性らしき細やかなしぐさにズボラな私だからこそ舞台上の女形を見て、現実逃避できるのだ。
一幕ごとに入れ替え制で、一回の公演は1時間もない短さながら非日常を久しぶりに味わえて心が晴れ晴れとした。
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