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初春大歌舞伎、第一部は華やかに

 1月初めに歌舞伎座に訪れて第一部を観劇しました。
「卯春歌舞伎草子(うどしのはるかぶきぞうし)」で幕を開けたのですが、この日はかぶき者の左源太(片岡愛之助さん)と右源太(中村勘九郎さん)を呼ぶときに、なぜか「左團次さん、右團次さんを呼びましょう」と言い間違えてやり直して呼びかけることに。
 左源太さん扮する愛之助さんも花道から舞台に着いたときに「違う名前で呼ばれたから出づらかったよ」と言い、会場の笑いを誘い、場内の空気は和やかになりました。


 勘九郎さんと愛之助さんが賑やかに踊ったあと、山三(市川猿之助さん)と阿国(中村七之助さん)が登場すると、いっそう舞台が華やかになりました。
 さらに女歌舞伎や若衆らとともに、新年を寿ぎ、歌舞伎の栄えを願いながら舞い踊る姿は明るくめでたい雰囲気に包まれました。1月の演目はこうしたものがやはりいいですね。


 めでたいと言えば、現役最高齢の歌舞伎俳優、市川寿猿さんの引っ込みも大いに盛り上がりました。御年、92歳。
 七之助さんが「ここの舞台でしか見られませんよ。ご覧になられる皆さん、おめでたいことですよ」と。
 まだお正月気分が続くころでしたから幸をお裾分けしていただいた気がします。


歌舞伎座の入口1階に飾られていてお正月気分が漂う

片岡愛之助さんの娘役は見もの

 楽しみにしていたのは、愛之助さん演じる弁天小僧菊之助。
 今年没後130年を迎える河竹黙阿弥による「弁天娘女男白波(べんてんむすめ めおのしらなみ)」です。
 もともと若いころは娘役を演じていた愛之助さん。今ではすっかり立役で活躍されていますが、若いころの女形はこれまた素晴らしいものがありました。
 東京で主役級の愛之助さんを観たのは、2016年の新橋演舞場で行われた「GOEMON 石川五右衛門」以来なので、久しぶりの娘姿に期待は高まるばかりです。

 

 勘九郎さん演じる供の若党とのタッグがよく、背丈のバランスも合ってか、久しぶりに見る武家の娘姿がお似合いです。
 万引きの疑いをかけられ、打ち据えられる姿といい、見事に娘さんの振る舞いを演じられたあとで、弁天小僧であることを明かす場面では七五調の名台詞をテンポよく披露。

 2018年に京都・南座で弁天小僧菊之助を演じられていますが、歌舞伎座では初めてということもあって、今後、こちらでこの演目を観る機会が増えるのではないかと思わせる、いい舞台でした。

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