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about books

そんなにたくさんの荷物を持ってきたつもりはないのだけど、わたしのスーツケースはやけに重たい。これがその原因のひとつ( もちろん文庫本以外の英語やデンマーク語の本もある...) 。
電子書籍にすればいいじゃないと何度言われたことか。未だにわたしは電子書籍で本を読むというのが苦手で、ベッドやソファにごろんとして、お茶かコーヒーを片手に本を一ページずつめくりながら読む時間を愛している。好きなものであればあるほど紙の本で読みたいと思うのはなんでなんだろ。


今回の旅に連れてきた四冊。
群ようこの「かもめ食堂」と片桐はいりの「わたしのマトカ」はわたしが北欧に行くなんて少しも思っていなかったときから何度も読んでいるけど、フィンランドに来て読むこの二冊は格別である。情景がはっきりと浮かぶ。あの通り、あのお店、フィンランド人のあの感じ、と。それにしてもフィンランドに行くかどうかも分からなかったのにきちんとこの二冊を持ってきたわたし、偉い。こんなことなら横尾香央留の「お直しとか」( in カルストゥラ )も持って来たかったなあ。

かもめ食堂は牧野伊三夫の挿画もすごく良い。


「キッチン」と「村上朝日堂」は学生時代にフィンランドに留学していた友人が贈ってくれたもの。彼女もフィンランドでこの二冊を読んだらしい。なんだか面白い。

「村上朝日堂」は村上春樹の文章に安西水丸のイラストという最高なエッセイ集。わたしのお気に入りは「豆腐について(1 )」。どんなお題でもさらりとイラストにしてしまう安西水丸を絵柄の単純さで困らせようと村上春樹が豆腐の話を四連続で綴っている。

最近はおいしい豆腐が減ってしまったという村上春樹は最後に

"おいしい豆腐を減らすような国家構造は本質的に歪んでいると僕は思う"

と締めくくる。それで思い出したけど、デンマークでステイ先のママが買って来てくれた味噌と豆腐で作った味噌汁があまりにも美味しくなくて驚いた。味噌も豆腐も日本独自の食文化なのだということを再認識( 醤油も、みりんも、いっぱいあるね )。そしてわたしは毎日当たり前のように消費していたわけだけど、どうやって作られてどうやってわたしたちの手元に届いているのか、きちんと知りたいと思った。改めて日本の「おいしい」を減らすことなく、わたしたちの手でちゃんと守ってゆきたいなと思った出来事。


そして今日「キッチン」を読み終えた。この始まりの文章がとても好き。本を手に取ったとき最初の2.3行にぐっとくるかどうかってすごく大事。

ああ、前回読んだとき、わたしは洞爺湖にいたのだ。そうそう出稼ぎ先の寮の狭い部屋のベッドの上だった。いろいろ悩んだり落ち込んだりしていたときに、吉本ばななの小説を読み漁っていた。小説の内容に共感したり感動したりというよりも、じんわりの物語の中に浸かっていくあの感覚が好き。そして何度読んでも、読むたびに新たに思うことがあって、それが面白い。こうなったら「デッドエンドの思い出」も読みたくなってきた...。


いま気付いたけど、四冊に共通しておいしい食べ物の描写がたくさん。フィンランドのシナモンロールやコーヒー、ベリーやキノコ、お豆腐をはじめ定食屋さんや喫茶店のごはん、そして「キッチン」といえばカツ丼でしょう...。

カツ丼、食べたいなあ。

わたしが北欧に連れてきたおいしい四冊について、でした。

今日のおやつ。

#note #finland #book #food #sweets

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