見出し画像

少しも完璧ではない"魔法が解ける夜"

去年末のバンド活動休止ライブの少し前に書いた文章が日記から発掘された。
ライブ当日に売っていたzine用の文にするか悩んで、実際使ったのはバンド年表だった。
一応人に見られることを意識して書いたため、ちょっと勿体無いのでここに全文載せようと思う。
2022年11月14日に書いた文なので、今年のことを来年と言っていたりするので混乱しないように…。

来年は10数年以上ぶりのバンド休暇である。
私の大好きな石井ゆかりさんの占い本2023年版でわたしは「2008年から続いた魔法が解ける」年になるらしい。
2008年、わたしはカウントダウンジャパンで清志郎のライブと一緒に年明けを迎えた。
一抜けたとばかりに学校を辞めて、実家からもほとんど失踪状態になり、周りの誰より自由な私はこの日も一人で幕張まで行ってその帰り道、新しい年の新しい朝日を見た。
キンと冷えた空気に、自転車を漕ぐわたしの息が白く熱く溶け合った。
あの日の朝を今でも覚えている。
あのときかかった魔法がわたしを2022年までバンドマンとして生かしたのだとしたら、その魔法が来年溶けるのもなんだが納得がいくような気がする。

子供の頃大好きだったシンデレラも、美女と野獣も最後には魔法が解けてハッピーエンドを迎える。
魔法の時間がどんなに美しくて楽しくても、物語の終わりには必ず、本当の自分に戻ってハッピーエンドを掴まなくてはいけない。
わたしにとってのフェアリーゴッドマザーが清志郎やラモーンズなら、わたしは自分の力だけでは手にすることがなかった魔法の時間の中で、ガラスの靴の代わりにベースを抱え、かぼちゃの馬車の代わりにバンドを組んで、舞踏会のようにキラキラとしたステージに立っていた。
この魔法はわたしに、元々のわたしでは自力で得ることができなかった、自信や友達や広い世界を与えてくれた。
そうしてようやくわたしはわたしの力で自分を幸せにする準備ができた。

わたしは今年の12月25日、夜中の12時の鐘を聴くシンデレラのように、ありのままの自分に戻って家に帰り、友達のネズミ達にわくわくして話すのだ「とんでもなく素敵な夢だった」と。
2022/11/14 日記帳より


うう、なんて希望に満ちた文章なんだろうか。
実際当日は「とんでもなく素敵な夢」なんて言葉少しも出てこないようなボロボロの状態で帰宅し、家のネズミのお世話も中途半端にしてしまった(ごめんよネズミたち…)。
というのもいくつかの要因があり、一つは12月も半ばになって突然職場の上司に今月中の今後のシフト2倍に増やせと言われたこと。
そもそもバンドと両立するために消去法で選んだのが飲食店バイトであった。
にもかかわらず、15年も続けたバンド生活の最後というとんでもない大舞台の前にシフトを増やせ、である。
本末転倒も甚だしい。
結果、うまく時間が作れず練習も十分にできなかった上に、タクシーで通勤したりしていた。
予約していたパソコン教室も半分休むしかなく、おそらく数万はマイナスになっているため、働いている意味が全くわからずブチギレながら仕事していた。

2つめはうちのネズミちゃん、モルモットたちの病気。
もともと高齢のしょうゆちゃんの癌が発覚したのが9月末でこれは織り込み済みだったが、12月ごろしょうゆちゃんの子であるしょうがちゃんに良性腫瘍が見つかったのだ。
2匹の看病、通院。
犬猫ではないので病院もタクシーの距離、しかも予約のできないところなので長くて3時間は待たされる、ヘトヘトである。

この満身創痍の状態で挑んだ当日、極め付けの3つ目の要因、「サポートギターが来ない」。
このご時世だ、熱を出したと言われたら来いとは言えないし、大丈夫だよというしかなかったが一ミリも大丈夫ではない。
現場は混乱を極め、訳もわからないままイベントが終わった。
元々十分な練習ができていなかったのもあるが、そんなことがどうでも良くなるほど普通にぜんぜん演奏もうまくいかず、とりあえず終わらせたという感じ。
音源を録って後で公開するつもりだったがそれもちょっと難しそう…。
正直すっきりとした終わりではなかったので、未だにどうやって心に折り合いをつけたらいいのかわからず、少し混乱している状態が続いている。
まあ、少しずつ吹っ切れるとは思うが…。

というわけで、2022年11月のわたしが予想したような綺麗な終わりは来なかったが、おそらく魔法は解けたのだ。
そんな感覚はじわじわと感じていて、次のnoteにでも書こうと思っている。
とにかく、あんなバタバタな状況で優しくしてくださった共演者の方々、お客様、ライブハウスの皆様、ありがとうございました。
また何かの機会にお会いできたら。

よろしければサポートをお願いいたします! 生きるための糧にさせていただきます。 皆様のサポート一円ごとにわたしの自尊心がぐんと上がり、記事がたくさん書けます。 よろしくお願いいたします。