「挫折論への招待」を読んで
技術書典で購入し、その日のうちに一度読み終えたのですが、感想を書くには読み込みが足りないと感じたので再度読んでからの感想になります。
Growthfactionの前著である「セイチョウ・ジャーニー」は読み終わった感情のまま感想を書いたので、エモさに振り切った文章になってしまったので今回は落ち着いた状態で書いていきたいと思います。
第1章:ゆのんさんパート
どうすれば挫折をポジティブに捉えることができるか
ゆのんさんが経験した挫折と、挫折と向き合ってどう乗り越えたかがプロセスごとに書かれていて、まるで追体験しているかのようでした。(これは第3章でも感じました)
挫折の前にある理想と現実のギャップによる葛藤に対して思い込みからくる認知の歪みに気づき、向き直ることで葛藤から抜け出すきっかけを掴んで挫折していたことを乗り越えるという内容の中で、後述の章でも取り上げられているメタ認知や認知バイアスという言葉も出るなど、最初の章として完璧だと思いました。本書を読み終えた後にもう一度1章を読み返すと理解度が増すので是非試してほしいです。
不確実性という言葉で締められているのは本家へのオマージュなんでしょうか、気になります。
第2章:KANEさんパート
挫折という劇薬に頼らなくても成長することはできる
「挫折」の定義から始まり、挫折しないための方法が書かれていて、確かに挫折しなくて済むならしないほうがいいなと感じました。
挫折回避論という名前で書かれていますが挫折から逃げるのではなく、挫折とは何かを考え、向き合うことで挫折しないように失敗をうまく受け入れて次のチャレンジをするという内容はPodcastなどで常に新しいことにチャレンジし続けるKANEさんらしいなと思いました。
基本なんでもネガティブに捉え、考え込んでしまう自分は挫折に対して真っ向から向かっていたんだなあ、挫折回避論でダメージコントロールできるように試していきたいです。
第3章:てぃーびーさんパート
認知の歪みってこういうことなのか!
てぃーびーさんの壮絶な実体験が赤裸々に綴られており、この人はここから立ち直ってこれたのか…という思いと、乗り越えるまでの経緯を読んでなるほど、このように変化したから今のてぃーびーさんなのかという納得感がある内容でした。
挫折したときに感じる無能感も事実を明らかにしていくと誤った認知であったり、誤りと気づくと正しい認知になること、正しい認知で全体像を把握する力がつくと同じ挫折はしにくいことがわかったように感じました。
前章の挫折回避論と組み合わせていくと更に挫折しにくくなりそうな感じがします。
第4章:ヨコヤマリョウさんパート
理不尽を飼いならせ
思えば、自分の人生もそこそこ理不尽なことが多かった。
それでもドン底に落ちるほどではなかったし、明日の生活に困るような状況も長く続いたことはなかった。
だから本質的にはヨコヤマさんの体験には遠く及ばない、温い人生を送ってきているのだと思う。そんな中でも臆病な自尊心と尊大な羞恥心という言葉は思い当たるところが多かった。自分の能力を過信して無茶なタスクを引き受けて自分がボロボロになっていく経験は何度となくあった。
灰になったら無理に立ち上がらない
この言葉が一番刺さった。無理して立ち上がったことによる反動は大きく、10年以上精神的な病で苦しんでいる(現在進行系)し、あの時の自分に強く言ってやりたい。
挫折を乗り越える場面でも人間はそんなにすぐには変われないという言葉には深い頷きしかなかった。それでも一歩進むことが大事なんだと。
いつの間にか目には涙が溢れていた。・・・そうか、自分がこうなっていたかもしれないことに共鳴していたのか。
この先きっと挫折することがあるだろうけど、そのときは挫折した自分を許してやりたいと思った。
第5章:VTRyoさんパート
ミトミク…よかったなほんと…よかった…(抑えきれない涙)
セイチョウ・ジャーニーのVTRyoさんパート「マヨイ・ジャーニー」と話が繋がっている今作ですが、今回は新人SESの水卜未來(みうらみらい:通称ミトミク)が研修を順調に終えたところから現場で自分の脳力が期待値に至らないことへのギャップに悩み、所謂『SESの闇』と呼ばれる過酷な現場へ足を踏み入れ、遂に緊張の糸が切れてしまう。そのとき手を差し伸べてくれたのは前作の主人公、間宵誠だった――
前作は主人公と自分が重なる部分が多く、感情移入して泣きながら読みましたが、今作は自分の体験と重なるところはありつつも、ミトミクが挫折から立ち直っていく姿や間宵くんの成長した姿がとにかく愛おしくて、応援する気持ちと最後の展開で今後の2人の関係に思いを馳せるなど、物語を見守る感覚で読みました。
作中の社内プレゼン大会はスピンオフ作品として「エンジニアの成長を応援する本」に書かれていますので気になる方はこちらも読むのをおすすめします。
物語を通じて書かれている「メタ認知」は思考の整理に非常に有効な手法だなあと感じました。テディベア効果もその一つですね。
自分も悩みが解決しないときや考えがまとまらないときにはメタ認知を活用してみたいと思います。
プロローグとエピローグを比較するとミトミクの変化と成長を感じられて構成うまいなー!となること間違いないです。
読み終えて
あらためて思うことは挫折は訪れるので挫折とどう向き合うか、かなということです。挫折回避論も向き合い方の一つなんだと思います。
人間誰しもが挫折する可能性があるということも収穫でした。そして挫折を乗り越えた先に拓かれた道を歩くことが成長に繋がるという確信を得ることができました。今回も控えめに言って良著でした。執筆・寄稿された方々に感謝して感想を締めたいと思います。ありがとうございました。
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