2020山雅の編成、どうなんだ問題
いよいよ2020シーズンのチーム編成が明らかになりました。
今回は山雅の編成について、語っていきたいと思います。
編成から見えるものは?これからどんな強化が必要になるか?
強化方針を見つめ直すきっかけになればと思いますので、どうぞ。
▼編成の評価基準を考える
編成内容を見ていく前に、2020山雅の編成を評価する基準を考えます。
各媒体の記事を読むと、若手育成が今年のテーマだと見受けられます。
なので今回は「若手育成を達成するために何ができているか」を評価の軸として、編成を考えていきます。
具体的な基準としては以下の3つが考えられます。
①各ポジションでの若手の確保
J1残留にはJ1基準の選手が必要ですが、獲得するのはとても難しいです。
「20代中盤以降でJ1レギュラークラス」
そんな選手を獲得する力は、今の山雅にはないのが現実です。
それでも可能な範囲で即戦力になれる選手で挑んできたのが、これまでのJ1挑戦だったと解釈しています。
しかし、若手の段階から育てればどうか。
今は選手として完成していなくても、将来的にJ1基準への成長が見込める若手を獲得し、育てながら挑む。
これが基本的なプランだと思われます。
分かりやすく言うと、第2の前田大然や杉本太郎を輩出していくことですね。
昨シーズンは若手で出場していたのはこの2名のみでしたが、彼らのように戦いながら大きく成長していくような選手が何人もいれば、J1でも戦っていける可能性があります。
そのためには期限付き移籍中の選手も含め、有望な若手を各ポジションで数・質の両面で確保しなければなりません。
これが一つ目の評価基準です。
②若手が出られる選手層
選手にとって成長するための一番の要素は試合経験です。
若手を獲得してきても、使わなければ意味がありません。
実はこれまでの山雅も、若手はそれなりに獲っていたんですよね。
しかし、圧倒的に起用することができていませんでした。
この原因は実は編成にもあったのではないかと思っています。
山雅の鉄板パターンであるJ2で活躍した即戦力を獲る戦略ですが、これをやるとどうしても20代後半以降の年齢層が分厚くなりがちです。
もちろん結果を残すために即戦力は必要なんですが、ここ数年はベンチも中堅~ベテランで固定されている状況でした。
実際それで埋もれてしまい、将来的にJ1クラスになれる若手を上手く活かせなかった例もあったのではないでしょうか。
若手を試合に使うためには、あえて選手層を薄くコントロールすることも考える必要があります。
それができなければ、レンタルに出す以外に育てる術がなくなってしまいます。
まず第一段階として選手層の厚さを最低限に保ち「若い選手がベンチに入れる」「主力にアクシデントがあったら出場できる」という状況を作ること。
それを2つめの評価基準とします。
③今シーズン中に結果が残せそうな若手がいるか
今やJ2でも各クラブの選手層は分厚く、10代で出場しまくっている選手はそう多くないというのが現状です。
この記事でも、目立っていると言いつつJ1、J2を足しても数える程しかいないんですよね。
一口に若手と言っても、18歳と23歳ではだいぶ違います。
同じ若手でも、
・18~20歳までの超若手は将来的なブレイクを狙うグループ。
・21~23歳の若手は今シーズン中にブレイクを狙うグループ。
というような細分化をすることが、現実的な編成をする上では重要だと考えられます。
山雅はまだ育成で結果を出した実績が少なく、選手獲得においても若手に敬遠されるネガティブ要素になっていると考えられます。
逆に徳島、水戸、山口のような育成型クラブは、若手が育つというイメージを武器にして選手を集めていますよね。
この立ち位置を狙うならば、まず今シーズンは21~23歳の手堅くブレイクしそうな年齢層の若手を確保できていることがより重要になると考えます。
これらの基準を軸にして、次からは具体的な編成内容をチェックしていきましょう。
▼ポジション別に編成を見る
ここからはポジションごとに編成を確認し、山雅が狙う「若手育成によるJ1に定着できるチーム作り」が実現できるかを考えていきたいと思います。
※年齢は2019年度の満年齢。
※★は新加入の選手。
※23歳以下の選手は太字で表示。
■ゴールキーパー
村山智彦(32)
田中謙吾(30)
圍謙太朗(28)★
【期限付き移籍中の選手】
永井堅梧(25)、ゴドンミン(21)
3人編成とかなりスリムになりました。
他でも3人でシーズンを乗り切るクラブはあるのですが、2人離脱するとベンチに誰もいなくなるというのは少し心許ないです。
と思っていたら、U-18のGK神田渉馬を2種登録するそうなので、これで解決ですね。
年齢的には中堅~ベテランに固まっています。
若手も入れとけと言いたくなるところですが、GKは出場枠が1つしかなく途中交代もほぼないですし、現役でいられる期間も長い特殊なポジションです。
若手は期限付き移籍で出場経験を積ませようと考えているなら、それはそれで有りなのかもしれません。
■センターバック
橋内優也(32)
浦田延尚(30)
乾大知(30)★
服部康平(28)
大野佑哉(23)
三ッ田啓希(22)★
森下怜哉(21)★期限付き
【期限付き移籍中の選手】
森本大貴(24)
3バックか4バックかによって大きく分かれそうな編成となりました。
布監督はシステムを柔軟に組むタイプとのことで、3バックでもローテーションを回せる人数となっています。
しかし仮に4バック採用だとすると、2つしか出場枠がなく比較的消耗も少なめのポジションに7人は多すぎる印象です。
ここまでは4バックの線で進めているようですので、このまま固まるようだとシーズン中に移籍で人数を減らすこともあるかもしれません。
また年齢的にパフォーマンスがピークの選手が4人もいるので、若手に出番を得る難易度は高そう。
大野&三ッ田は若手と言いつつ22、23ぐらいの年齢なのでローテーションに入っていきたいのですが、ベテランが蓋になってしまうかもしれません。
来季以降、年齢層が高い選手に衰えが見えたときに、若手も出場経験を積めていないので大ピンチ、という図がイメージできてしまうので要注意です。
■右サイドバック
田中隼磨(37)
吉田将也(23)★
本職は2名ですが、いくら隼磨が鉄人とはいえさすがに薄すぎるので、ここは鈴木雄斗あたりもカウントされてそうな気がします。
吉田将也はJ2では未知数ですが、年齢的には手堅くブレイクが期待できる若手にあたりますね。
頭数と年齢構成的に、来シーズンに向けた新人の補強がありそうなポジションでもあるのでそこも注目。
■左サイドバック
高木利弥(27)
高橋諒(26)
山本龍平(19)
【期限付き移籍中の選手】
下川陽太(24)
若手は山本龍平をレンタルから呼び戻して確保。
問題はスタメン候補に高橋、高木と2人もパフォーマンス的にピークの選手がいること。
1枠しかないポジションなので、まだ若すぎる山本龍平にとってはかなり厳しい競争になりそうです。
■センターハーフ
山本真希(32)
藤田息吹(29)
アウグスト(27)★
塚川孝輝(25)
米原秀亮(21)
山田真夏斗(18)★
【期限付き移籍中の選手】
安東輝(24)
出場枠は恐らく2つ。
オーバー25が4人ということで、米原や山田がベンチに入るための競争はそこそこ厳しいんじゃないでしょうか。
米原はプロ4年目21歳で能力も高い選手ですし、そろそろ試合に使っていきたいところですが…。
山田も含め、ポテンシャル的に十分やれそうな若手は早期に出場機会を与えて育てるのが青写真でしょうが、同時に結果も得たいジレンマなのかもしれません。
■オフェンシブハーフ
セルジーニョ(29)
中美慶哉(28)
アルヴァロ・ロドリゲス(26)★
鈴木雄斗(26)★期限付き
杉本太郎(24)
村越凱光(18)★
出場できる枠は2~3といったところ。
層は厚いながら、途中交代も多いポジションですし、高卒ルーキーの村越にチャンスが回ってくる可能性はあるかもしれません。
ただ、外国籍のセルジーニョ、他クラブのオファーも多そうな杉本、そして期限付きの鈴木と、いつまでいてくれるか分からない選手が多いです。
その不安を払拭するためには、18歳のルーキーだけでなく21~23歳の実力と成長を両立する年齢層の選手が欲しいところ。
村越への期待の現れとも言えるかもしれませんが、ここももう少しテコ入れしたいポジションかもしれませんね。
■センターフォワード
ジャエル(31)★期限付き
阪野豊史(29)
イズマ(28)
高木彰人(22)★期限付き
榎本樹(19)
【期限付き移籍中の選手】
韓勇太(23)、前田大然(22)、小松蓮(21)、レアンドロペレイラ(28)
1トップか2トップかは微妙なところ。
交代も多いポジションなので、2トップなら若い榎本にもチャンスは回ってくるかもしれません。
ただ、レンタルに出しているとはいえ榎本、韓勇太、小松蓮と、年齢ポジション共に被る3人を保有している点はどうなんでしょう。
高木彰人の買取りを視野に入れているとすると、更に疑問が深まります。
期限付きで育てたいのは分かるのですが、FWは外国籍選手に頼ることも多いポジションなので、最終的にどうするつもりなのかは気になります。
全体をまとめると、
①各ポジションで若手が確保できているか
⇒特に左右SB、OMFあたりは増やしたい。右SBは高卒新人の獲得がありそう。
②若手が出られる選手層か
⇒中堅~ベテランの層が依然厚く、出場へのハードルは高い。
③今シーズン中に結果が残せそうな若手がいるか
⇒現実的にブレイクを狙えそうな21~23歳の年齢層は(レンタルを除くと)大野、三ッ田、吉田、米原の4名。もう少し増やしたかったのでは。
という感じですかね。
▼他クラブの編成を見てみる
さて、では他のクラブはどうなのか。
例えば、Jリーグ開幕から世代交代を繰り返しながらも強豪の位置をキープし続ける鹿島アントラーズ。
昨シーズンは鈴木優磨、安部裕葵、安西幸輝と代表クラスがシーズン中に3人移籍しながらリーグ3位を確保し、天皇杯も決勝進出という離れ業を見せました。
彼らは編成のお手本と言っていいほど、常に明確で説得力のあるチームを作ってきます。
GK[1名] 曽ヶ端(40)、クォンスンテ(35)、沖(20)、山田(18)
CB[2名] 犬飼(26)、奈良(26)、ブエノ(24)、町田(22)、関川(19)
RSB[1名] 内田(32)、伊東(26)、広瀬(24)
LSB[1名] 山本(34)、永戸(25)、杉岡(21)、佐々木(19)
CMF[2名] レオシルバ(34)、永木(31)、小泉(24)、三竿(23)、名古(23)
OMF[2名] 遠藤(31)、和泉(26)、白崎(26)、ファンアラーノ(23)、荒木(18)、松村(18)
CFW[2名] 伊藤(31)、エヴェラルド(28)、土居(27)、上田(21)、染野(18)
まず一見して分かる年齢バランスの良さ。
主力の高齢化が進んでいるポジションには、23前後の若すぎない若手を確保し、現実的な次代の担い手を準備。
その上で2~3年後に花開きそうな10代の選手も集め、次の次もしっかり見据えています。
選手層も厚すぎず薄すぎず。
ACLの可能性があった鹿島がこの人数に留めている理由は、全ての選手を競争に参加させることが目的だと思います。
「努力していればいずれチャンスが来る」という気持ちに若手がなれる編成で、この辺は本当にさすがだなと。
もちろん、こういう編成はその気になれば他クラブから主力を持ってこれてしまう鹿島だからできる、というのも否めません。
しかし、次に備えることにかけては鹿島はJでもダントツで長けていますし、山雅も見習うべき部分はまだまだありそうだなと感じます。
▼あとがき
いかがだったでしょうか。
色々と書いてきましたが、理想の編成ができているクラブなんてそう多くはないと思います。
欲しいタイミングで欲しい人材が常にいるとは限りませんし、必ず選手を獲得できるわけでもないのですから。
今回、山雅は若手育成という大きな方針転換を行いました。
その最初のシーズンということで、それなりに我慢が必要な状況もあると思っています。
あるいは逆に、結果を得る半面で若手の出場は増えなかった、ということだって考えられるかもしれません。
ただでさえ、山雅は充実したユース組織がある訳ではありませんし、若手を育てるというクラブイメージもほぼ皆無の状況。
本当に難しい仕事だと思いますが、進む方向としては正しいと思いますし、腰を据えて見守っていきたいです。
J2降格で移籍していく選手が多いなか、結果と育成の両輪を為すという最も難しいオーダー。
結果は度外視できる訳もなく、プレーオフを狙える位置の確保は重要。
編成も大変だったと思いますが、そんな中で出来上がったチームが、いい方向に進むことを願っています。
予想を上回る選手が一人でも多く現れますように!
Written by ようへい
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