秩序

恐らくは僕達が重なる理由はいらないし、それを探す事は虹の足元に行こうとするようなものだ。君が必死に愛するものを僕は憎んでいるかもしれないし、君が一瞥もくれないものを僕は愛しているかもしれなかった。とにかく僕達は出会った。お互いは歪な円を作りながら、黄金比のような秩序を持っている。不器用というには余りにも繊細な美を隠しているようで、僕はその不文律に満たされている。その事実さえあれば良くて、現実として確からしいものはそれだけのように感じる。言葉ですら必要なくて、その代わりに体温と吐息が僕達のコミュニケーションとして橋をかけている。重く灰色な蓋が世界を覆って、僕達は安心して眠る。声にならない叫びも無視して。

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眠れない夜に

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