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余韻を味わいながら

 読書感想を書くのって、あまり好きじゃない。物語の良さを伝えようとするとネタバレ不可避になるし、そうやって内容を説明されたものはそれ以上読もうという気にならない。あらすじで十分、みたいなひともいるし。ぶっちゃけ、これ最高だから読んで、としか言えない。でも、込み上げてくるワクワクと感動と、吐き出したい衝動を感じた。楽しい、楽しい。ページを捲る手が止まらない。起きてから寝るまでひたすら読み続ける毎日。たまには感想を書いてみても良いかな。


 Gシリーズ後期三部作の一作目『χの悲劇』は、読み始めて中盤に至るまで、前作からの時間の流れを全く把握できないほど違和感なく進んでいった。島田文子が台湾へ行ってから数年程度だと思っていたし。しかし途中から、登場人物たちの使っている電子機器等などで、前作からの時間の経過に気づき始める。これはもしかしてかなり時間が経っているのでは、と思いつつやはりはっきりとはわからない。
 そして物語のキーとなる、「金」、そして「χ」という人物たち、彼らは一体誰なのか。まさか今回いきなり出てきた人たちではないだろう、と正体を思い描くが、やはり時系列が合っているのかわからず、決定的なものに欠ける。彼らの目的はなんなのか。でも、「カイ」に「ミナス」つまり月。そこから連想される人なんて一人だけだよね。
 ついに終盤、それも最後の最後で驚くほどの時間が経っている。これは想定外だった。しかしそれほどまでに時間が経っているということで、決定打に欠けた登場人物たちの正体に確信が持てる。ああ、海月くん。
 きっと真賀田四季関連の人間の子なのだろうとは思っていたが、まさか各務亜樹良とは。いやしかし、その各務亜樹良は本物なのか。森博嗣を読み始めて以降、出てくる登場人物全てに、本当に本物なのだろうかと疑心暗鬼になるようになった。
 そして父は小山田という、かつて真賀田研究所にいた人物。いや小山田って誰だよ。海月くんの年齢から考えても、その当時の各務亜樹良の相手となれば保呂草潤平しか思い浮かばない。しかし、小山田は西之園萌絵の両親が亡くなったあのテロに手を貸していた人物。小山田が保呂草産だと仮定した場合、保呂草さんがテロに間接的にでも加担するとは思えない。そういった行為に意味を感じない人だと思っているのだが、どうなんだろう。加えて、真賀田研究所にいたというのも考えにくい。確かに彼は真賀田四季と面識があったが、あの研究所に保呂草さんの興味を引くものがあるとも考えにくい。するとやはり小山田が保呂草さんであるとは考えにくい。そうなると、各務亜樹良が母というのも信憑性に欠ける気がする。そもそも真賀田研究所に出入りしていた各務亜樹良を名乗る人物が、あの各務亜樹良だったのか。あのテロの時も、本当にただ名前を貸していただけで、関わっていたのか。いや、わからないことだらけだ。

 数々のシリーズを通してそれぞれの謎がわかったようで深まるばかりである。ああ、海月くん。



 Gシリーズ後期三部作二作目『ψの悲劇』も続けて。流石に。流石に前作騙されたのでこれはきっと前作よりさらに時間が進み、島田文子は何らかの方法でこの時代に生きているのだろうと予測はついた。しかし森博嗣を幾ら読んでもミステリを読み解くのが下手な私。鈴木が所謂ロボットだとは、全く気付いていなかった。その時代には人型のロボット?アンドロイド?ヒューマノイド?が当たり前のように存在しているということか。とは言え、鈴木に八田本人の頭脳がインプットされているとは考えていなかった。だがそれ以上に驚いたのが終盤の将太。いやはや、そうなるとは。というか実際ちょっと理解が追いついてないです。つまり入れ替わって八田の脳がインプットされたものにすり替わり、プロトタイプは別の場所に隠されているということだよね?本当にびっくりな展開だったよ。
 そして何より、久慈昌山。わたしはどうしてか、『ηなのに夢のよう』で出てきた彼を見過ごしてしまっていたのだ………………………。そう、四季冬で出てきた真賀田四季の子を生かしたかの人物と気付いておらず、この『ψの悲劇』を読んでようやく、合点がいった。だが、いかにして『ηなのに夢のよう』で登場した際には真賀田四季と接点のなかったはずの久慈が、真賀田四季と繋がりを持つまでに至ったのか。というか時間の流れを考えた時、久慈の年齢は本来の年齢なのだろうか。つまりそもそもこの久慈自身、プロトタイプなのだろうか。やっぱり疑心暗鬼が止まらない。次回作ではもう少し久慈に焦点が当たるのだろうか。悩ましいな。

 Gシリーズは後期三部作の最後一冊を残し、読み終えてしまったので、次はXシリーズに移ろうと思う。保呂草さん大好き。…………あれ、赤柳さんって結局誰なんだろう。Vシリーズに出てきた人物だと踏んでいたけれどわからないままだったな。『恋恋蓮歩の演習』に登場した大笛かと思ったけれど違う気がする。は〜気になる………


 よし、閑話休題。一旦短編集を全て読んでしまおう。いつか全てを知る時は来るのだろうか。森博嗣、いつまでもワクワクが止まらないな。

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