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ひとりっこ



母方の祖母宅に行った

会いに行く間隔が長いと、あっという間に5年、いや10年経ったかのように老いて見えるのは悲しい


「あと一年くらいだなあって思うのよね」


なにが?


「生きるの」


祖母は76歳

まだ年齢的には早いが、強がりな祖母の若かりし頃の無理がたたったのか、歩くことはほぼできず、手もうまく動かせない



何言ってんの、わたしあと2、3年すれば結婚するのに?


長生きしてほしいなあ、とは言えなかった


祖母は

毎日寝る時に明日は起きるのだろうか

起きたところで何をしたらいいのか

そんなことを考えているのだろうなと思って悲しくなった


でも、母の方が悲しいだろうな


仕事も手につかないかも


泣いて泣いて大変かも


でもいいな


母には姉がいる


「母を亡くした」


それを共有できる人がいる


いいな


わたしもきょうだいが欲しかった


すごく悲しくても


その悲しみを共有して


慰め合って、一緒に立ち直れる人がいる


いや、

いやだな


母を亡くす悲しみは誰かに分かられるようなものじゃない


父にも分からないだろう

母の家族にも分からないだろう


分かられてたまるか


分かられたくないに決まっている



私だけが私だけの母を亡くした悲しみを抱えるのだ


誰にも共有させない


私の始まりであり、愛なのだ


父にも、未来の旦那にも子供にも


慰めさせもしない

わかりっこないのだ


誰にも分からない悲しみとして


抱えたまま



私も死ぬのだ


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