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「犬派に告ぐ!」幻の第1稿(犬にしてはよくしゃべる#3)

血液にチュールを溶かし磔でキャットタワーに誓う忠誠/中型犬

自作短歌

読者を不安にさせないことの重要性

塔2023年5月号の「方舟」(会員がエッセイ・報告記・誌面の感想などを自由に投稿できる欄)に「犬派に告ぐ!」という文章を掲載いただいた。

毎回、塔に掲載されている歌を読みながら、登場する「犬」と「猫」の数を数えるという遊びをしているのだが、毎回集計すると猫が多い。

私は、犬も猫も好きなので、わんちゃんやねこちゃんが詠まれていると、それだけで満足なのだが、せっかくなのでその事実をエッセイにできないかなと思い、エッセイを書いて、編集部に投稿した。

すると、編集部からすぐに次のような返信をいただいた。

「おもしろい視点の文章で是非掲載したいが、「隠蔽」や「秘密結社」という言葉は読者を不安にさせる可能性もあるので、推敲しませんか」

最もである。

職場でふざけて話している人たちに少しチャレンジングな内容を話してもいいのかなと思って、ネット界隈の都市伝説みたいな話をして困惑した表情をさせてしまい、すぐに柔らかい表現で言い換えることがときどきあるのだが、まさにそんな気持ちになった。

会員の交流の場できつい冗談の文章を載せてはいけない。

編集部の方の指摘を受けて、すぐに真っ当な文章に書き直してOKをいただいた。

優しく諭していただいた編集部の方に感謝を申し上げたい。

そして、第1稿は第1稿として、すごく好きな文章なので、この文章を読んでいただいているあなたを信頼して最後に掲載させていただいた。

是非、掲載版との違いを見ていただき、約15年のサラリーマン生活で培った修正力におののいてほしい。

嘘です、ちょっとでも笑っていただければ本望です。

犬派に告ぐ!(塔2023年5月号掲載版)

塔短歌会会員の犬派の諸君、応答せよ!

まずは左のグラフを見てほしい。これは、塔誌で詠まれた犬と猫の数の推移だ。見てのとおり、この七ヵ月連続で猫が犬より多く詠まれている。

日本における犬猫の飼育頭数は、平成二十六年に猫が犬を上回って以降、猫は増加傾向であるのに対して、犬は減少の一途をたどっている。令和四年では、猫八百八十万頭に対して、犬七百万頭と大きく差がついているのだ。
このまま犬の飼育が減少し、犬の歌も減ってしまうのだろうか。

万葉集で柿本人麻呂が「かきしに犬呼びこしてがりする君青山のしげき山辺やまへに馬やすめ君」と詠むほど、人間に、そして歌人に寄り添ってきた犬。

そんな犬の歌の灯火を令和の世で消してはならない!

その命運は我々犬派にかかっている!

団結し、立ち上がろう!

犬派歌人一人一人の勇気ある詠草が短歌会の未来を切り拓くのだ!

さあ、リードを捨てて犬を詠もう!

塔掲載歌に読まれている犬と猫の数の推移

犬派に告ぐ!(幻の第1稿)

塔短歌会会員の犬派の諸君、応答せよ!

まずは左のグラフを見てほしい。これは、塔誌で詠まれた犬と猫の数の推移だ。見てのとおり、この七ヵ月連続で猫が犬より多く詠まれている。

塔短歌会は全世界に会員がいるが、全世界の犬の飼育頭数は四・七億頭、猫の飼育頭数は三・七億頭である*。不自然に犬の歌が少ないことがわかるだろう。

塔短歌会中央本部において、我々の投稿した犬の短歌が隠蔽されているのだ!

巧妙に歌が配置されていることで、この事実に気付いているものはまだ少ない。しかし、我々犬派は団結し、立ち上がらなければならない!

犬を詠む自由を!

敵は手ごわい。彼の者たちはCTC(CatTowerClub)という結社内秘密結社を組織しており、すべての短歌を猫短歌にすべく日夜工作を行っている。中には、我々の月詠がポストに投函されるやいなや、ポストから我々の月詠を取り出して、犬の短歌を消すという過激活動に身を投じている者もいるのである。

おっと、チャイムだ。誰かが来たようだ。一旦筆を置こう。諸君、また会おう!

*Statista,2018

塔掲載歌に読まれている犬と猫の数の推移

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