見出し画像

【きのうのこと】3年2組 綾瀬たか子


 きのう、わたしは、お付き合いをしていた爽健くんとお別れしました。理由は、大人がよく言う「価値観のちがい」ってやつだと思います。

 爽健くんは、「たか子が好きだからずっと一緒にいたい」とよく言っていました。わたしは、「爽健くんが好きだけど、恋以外のたのしいこともたくさんしたいな」と思っていました。

 爽健くんは、からだにいいものがたくさん入っている、さっぱりしたお茶が好きだと言ってよく飲んでいました。わたしは、少し苦くてにごりのあるお茶が大好きでした。

 爽健くんは、「卒業したら結婚しようね」と言っていました。わたしは、「将来のことを言われてもまだ分からないよ」と思っていました。

 爽健くんは、メールの返信が遅いわたしに「部活が忙しくても、彼氏に対して思いやりくらい持ってほしいよ」と、よく言っていました。わたしは「それって思いやりなのかなあ、爽健くんも部活サボらないで楽しめばいいのに」と思っていました。


 わたしと爽健くんは、別の人間です。だから、育った環境も、考えていることも、クラスだって部活だって違うから、ものごと全て同じ見方ができるとは思いません。でも、だから良いと思っていました。考え方に違いはあれど、わたしは爽健くんが大好きでした。誰とでもすぐに仲良くなれるところや連絡がまめなところ、動物にやさしいところや数学が得意なところ、お別れをしたとしても好きなところはまだたくさん言えます。


 でも、別れてしまいました。爽健くんとお付き合いしてきて、別れるときの言い争いがいちばんつらかったです。

 爽健くんは、わたしに、お前を変えられなかった自分がふがいない。と言いました。

 わたしはかなしくて泣きました。爽健くんに自分を変えてもらうつもりなんてなかったからです。爽健くんが言う「お前を変えたい」というのは、わたしを爽健くんの価値観に合わせるようにしたいという爽健くんのエゴだと感じました。でも、わたしはそれを言いませんでした。ああ、だからわたしたちは別れることになったのだなと、やっとうまくいかないモヤモヤの原因がわかった気がしました。

 爽健くんとわたしは、たくさん話をしてきたと思っていました。お互いの大切なものや、やりたいこと、これからどんなふうになりたいか、恋愛をするときにいちばん大事にしたいこと、話せば分かり合えると思っていました。わたしの気持ちや考え方も、何度も話したから分かってもらえていると思っていました。だから、爽健くんがわたしを「受け入れる」ではなく「変える」気持ちでいたこと、そして私のことを「変えられなかった」ことが「ふがいない」と表現したことが心底つらかったのです。そんな言い方、爽健くんの考え方がぜんぶ正しくて、わたしの気持ちは間違ってるみたい。

 爽健くんには爽健くんの、わたしにはわたしの持ち味があり、考え方と感じ方があります。今回、コミュニケーションがうまくできていなかったことで、「価値観の違い」の「違い」という部分だけがダメなように思ってしまったのだと思います。わたしはこれから、それぞれの良さを存分に発揮できるような話し合いができるようになっていきたいです。この経験をいかして、わたしは人の話に心から耳を傾けること、自分の気持ちを上手に伝えられるようになることを頑張っていこうと思います。つらいこともありましたが、楽しくてよい経験にもなってよかったです。

おわり。











えっなんこれ??

#チーム午前二時 、12月8日


チーム午前二時:2020年12月3日、夜中に思いつきで突如発足。部員一人。夜中に起きている人は誰でも入部可能。フィクションもノンフィクションも雑談も日記もハッピーもネガティブも全部。内容も設定もブレブレ。クリスマス付近までは毎日投稿の予定。あくまでも予定。

ゆっくりしていってね