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家具職人としての僕の矜持

こんにちは。
「音楽好きのための家具屋 midd craft (ミッドクラフト)」の野田です。

高校を卒業して10年近くホテルの接客業を経て転職、憧れの家具職人になるべく2社の工房で12年間修行して技術を身に付け、非常に小規模ながらも家具製作工房を構えて5年となりました。

とはいえ、この業界では職人修行ばかりで営業の経験は皆無、当然ながら何もコネのない個人事業にそうそう仕事は回ってきません。
だからこそ、住まいである借家の一角に工房を構えて固定費をかけず、20代の頃に取った杵柄である接客業のアルバイトをしながら生活費を確保しつつ、焦らず少しづつ事業を大きくしていこうと考えていました。

しかし、5年を経てもそうなかなか上手くはいきません。
「音楽好きのための家具屋」という自分なりに練った(でっち上げたと言う方が正しいかも)肩書きを利用して立ち上げた音楽イベントやDJ活動で人脈はできたものの、そこからバカバカ依頼が舞い込むという都合のいいことは起こらず(潜在的な需要はあると睨んでいますが)、腰掛けで始めたアルバイトは店舗における事実上のバイトリーダーとなってしまい、どれが本業なのかわからなくなる始末。
正直なところ、高校を卒業し就職して以来、今が一番気楽で楽しい、と言っても過言ではないほどに充実した日々ではあります。気ままな独身生活で結婚願望も無い、というのもそれに拍車をかけていることでしょう。
しかし、そんなぬるま湯のような状況をまだこれからも続けるのは、流石に年齢的にどうかと思うので、今年こそはあらゆる手段を取って事業を飛躍させようと頑張る所存です。
(この頻繁な note 投稿もその一環だったり 笑)

さて、僕が修行していた家具製作工房が手掛ける仕事は、主に店舗什器の製作でした。
美容室にチェーン飲食店、ショッピングモールやデパートなどなど。
業界の常ですが、大手の施工会社はそれぞれ下請けの工房を持っていて、大抵の大きな仕事はそこに卸されます。
僕の勤めていた工房2社も、昭和の時代からの老舗の下請け会社でした。
そして、この製造業が盛んな愛知県において、多くの老舗がひしめく業界で新規参入者が仕事を取るのは容易ではありません。
競合と仕事を競り合い「うちはもっと安くできます!」と仕事を請け負った会社がどんどんジリ貧になり、設立しても長く続くところは皆無だとか。怖い怖い。
でもやっぱり、独立は職人の憧れなんですよね。

そんな店舗什器の仕事というのは、非常に高額なものです。
なんでもないショッピングモールのなんでもない家具にも、一般的な観点から見るとビックリするような値段が付けられていて、修行時代に家具の仕上がりが甘かったり不備があったりすると「お客さんがこれに幾ら払うと思ってんだ!」と、よく怒られたものでした。
そんな高額な仕事なので、一般住宅やごく小規模の個人経営の店舗からの依頼というのは、ほぼ皆無でした。
だからといって、そういう方面からの家具製作の需要が無いと言う訳ではないでしょう。それどころか、そういう人達こそ自身の生活や経営にジャストフィットする家具を求めているのではないでしょうか?

世間一般の趣味に、DIYというものがあります。
"自分でやる"(ドゥー・イット・ユアセルフ)と名付けられたそれは、自分の家の補修や収納を自分で作る、というものですが、必要に迫られてやるというより、趣味としての料理と同じく製作する過程を楽しむ、という意味合いが強いのだと思います。
使用する材料としても、一般的にはなかなか手に入らない高額な無垢材や化粧板などは使用せず、ホームセンターで手に入るリーズナブルな合板や角材など。
なので、熟練の職人からは「素人のやること」というやや軽視した見方をされがちで、本職がやることではない、という業界の認識があるように思えます(とはいえインスタや You Tube には本職も舌を巻くとんでもないDIYをする人が山ほどいますが)。
しかし、前述の一般的な住宅や小規模経営店舗においての住環境の向上という点においては、非常に有効だと思います。
そのDIYを、しっかりと職人修業をした人間が作るのであればどうでしょうか?

小規模の住宅や店舗の家具製作であればさほど大きな物にはならず、工房の敷地も狭い面積で製作は可能であり、大型の機械がなければ加工が難しい無垢材や集成材ではなく、ホームセンターの建材を使用するのであれば電動工具で事足ります。
インターネットやSNSを介すればクライアントを通さずに、お客様からの直接の受注も可能です。
何よりも修行時代の僕は、改装や閉業などにより一生懸命作った家具が数年で産業廃棄物になることに一抹の虚しさを感じていたので、僕はそこにこそ「本当に必要としている人に求められる仕事をする」という職人本来の矜持を感じずにはいられません。

検索で「オーダー家具」と入力すれば数多くの工房のURLがヒットし、スタイリッシュなホームページとともにスマートできれいな家具や施工例を見ることができます。
ただ、値段が明確に提示されたページはあまりなく、大抵は「まずはご相談下さい」というご案内があるばかり。
そんな中に、トップページにいきなり値段が提示されていて「丈夫な家具がDIYで安く手早くできます!」と謳っている、ラフだけどなかなか味がある仕上がりのアイテムが並ぶ家具工房のホームページが、1つくらいはあっても良いのではないでしょうか?

Wordpressで自作したホームページは、さながら手作りの小さな飲食店のようだな、と我ながら思いますが(笑)、ミッドクラフトはそんなお客様からこそ必要とされる家具工房でありたいと願っています。


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