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公共R不動産・HITOTOWA INC.・ADDReCと事例を紐解く~シン・まちづくり業界のこれからと働き方~前編/micro development inc.【イベントレポート】

地域活性化、エリアマネジメント、コミュニティ、ウォーカブル、スマートシティ、、、
様々な考え方と合わせてその時々で可能性の広がっていく「まちづくり」。
これからのまちづくりはどこへ向かって行くのだろうか?
そして、その業界で活躍する人たちはどのような働き方を目指しているのだろうか?

https://shinmachizukuri2.peatix.com/view

イベント「シン・まちづくり業界のこれからと働き方」では、まちづくり領域において新たな動きに挑戦する3社が登壇し、最新のまちづくり事例やこれからのまちづくりの動向について話しました。

リアル会場とオンラインを併用して開催し、合わせて144名のご応募をいただきました(好評につき、申込枠を4回追加いたしました!ありがとうございます!)。本記事では、micro development inc. 広報の花崎が当日の様子をレポートとしてまとめ、お伝えしていきます!

前編では、登壇企業の取り組みや大事にしていることの紹介、後編では、「シン・まちづくり業界」と題して重なり合う領域で新しい活動に取り組む各社を交えて行った、まちづくり業界のテーマに関するクロストークを中心にまとめていきます!



公共R不動産/菊地純平氏

<プロフィール>
1993年埼玉県生まれ。大学卒業後、UR都市機構に入社し、団地のストック活用・再生業務を担当。その後、公共R不動産/OpenAに入社。公共不動産活用の”プロデュース”や”研究開発”機能をもった”実践メディア”である公共R不動産を運営。全国の自治体や企業とともに、公共空間の活用やマッチング、公民連携案件に対して、リノベーションを得意とした設計事務所「OpenA」や、「R不動産」のネットワークをベースに、多様なバックグラウンドをもったメンバーと共にクリエイティブな活用策や手法を見出し、公共空間がひらかれていくために活動中。共著に『テンポラリーアーキテクチャー :仮設建築と社会実験』(学芸出版社)。https://www.realpublicestate.jp/


公共空間をもっと楽しくオープンに。

従来、一般の市民や企業には届きにくかった公共空間の物件情報。低利用・未利用な公共空間の活用を大きなムーブメントとして盛り上げ、革新していくのに取り組んでいるのが、公共R不動産です。
公共R不動産のアプローチは、メディア・R&D(研究開発)・プロジェクトプロデュースの3つの事業に渡ります。


①メディア
「公共R不動産」は、全国から集めた遊休公共空間の情報や、公共空間がどのように活用されているのかがまとまったウェブメディア。公共空間を革新するためのエンジンとして、記事だけでなく、音声メディアでのゆるくやわらかい内容や、公共空間活用アワードの開催など、多様な発信をしています。


②R&D(研究開発)
公共空間活用が広がるための調査・研究・開発にも取り組んでいます。例えば、クリエイティブな公共発注のための「公募要項作成ガイドブック」や公共不動産の情報をまとめた「公共不動産データベース」などをはじめ、架空の研究所「公共R不動産研究所」では、事業に取り組む中で得たノウハウや、書籍を読んで得た知識などを記録しており、熱心な読者もついてきているそう。


③プロジェクトプロデュース
メディアや研究開発で蓄積してきた知見をもとに実際の風景をつくっていくのが、公共R不動産のコアとなるプロジェクトプロデュース事業です。現在、1日1校のペースで廃校が増えており、今後日本の公共空間は膨大に余ってくるようになる、といいます。これから大きくなっていく公共空間活用のマーケットやニーズに対して、どう面白く、クリエイティブに活用していけるか。旧大宮図書館活用プロジェクトの例を挙げてご説明いただきました。


【事例】旧大宮図書館活用プロジェクト(埼玉県さいたま市)

解体されることになった旧大宮図書館。公共R不動産では、潰してしまうより、既存の建物をつかってどう地域を盛り上げられる魅力的な場所にするかを考えるそう。

そのときに検討するのが、
・どんなまちにする?
・誰がつかう?
・どう決める?
・どんな条件で?
など。

「ビジョンシートを用いた町内での調整や、事業者やプレイヤーを発掘する目的も含めたサウンディング調査・トークイベントも行い、全国でのネットワークがあることやメディアを持っていることを活かして、多くの人を巻き込みながらどんなまちにしていくかを考えていきました」

事業者としては、大宮に支店を持つゼネコンと、地域ネットワークを持つローカル企業が参加し、民間主導で図書館のリノベーションを進めていったとのこと。

最初の相談から4年間かけて取り組み、2021年に「Bibli」がオープン。解体される予定だった図書館にたくさんの人が訪れ、散歩道だった参道に人力車が走るようにもなったり、にぎわいが生まれました。

このプロジェクトのように、「ひとつの拠点が再生することで、まちの風景や人々が生き生きと変わっていく」と菊地さん。

公共R不動産では、現在も全国各地でのプロジェクトが進行中で、それぞれ現地に入り込みながら取り組んでいます。

ここで菊地さんのプレゼンが終了し、フリートークへ。


公共R不動産の強みは、「こういう未来、良いですよね」とプランを描き、皆をその気にさせることだとコーディネーターの守屋(micro development inc.)は着目。菊地さんによると公共R不動産では、実際に足を動かして営業したり、調査を繰り返してプランの精度を高めたりすることで、実現させているそうです。

「東京R不動産の血を継いだ目利きを持ちつつ、色々なバックグラウンドを持つメンバーがいることも、公共R不動産の大きな強み」と菊地さんは話してくださいました。



HITOTOWA INC./荒昌史氏

<プロフィール>
大学卒業後、住宅デベロッパー入社。新規事業として環境共生住宅やマンションコミュニティづくりを行う。2010年12月に創業。ネイバーフッドデザイン事業を通じて、まちや集合住宅の人々のつながりをつくり、都市の社会環境問題の解決に取り組む。ひばりが丘団地の建て替えに伴うエリアマネジメント「まちにわ ひばりが丘」の企画がきっかけで東久留米市学園町在住。当該エリアはじめHITOTOWAが深く関わるまちの継承と創造のためにマイクロデベロップメントの事業化にチャレンジ。著書に『ネイバーフッドデザインーーまちを楽しみ、助け合う「暮らしのコミュニティ」のつくりかた』(英治出版)。趣味は愛猫との昼寝と埼玉西武ライオンズの応援。
https://hitotowa.jp/


ネイバーフッドデザイン×不動産事業

HITOTOWA INC.は、2010年に荒さんがひとりで創業した会社で、2024年で14年目に。社員数は40名、活動範囲は一都三県+関西にまで拡大し、それぞれが多様な働き方で活動しています。

HITOTOWA INC.のメイン事業は「ネイバーフッドデザイン」人々のつながりをつくりながら、都市や暮らしの課題を解決していく、という都市部におけるコミュニティ開発の新たな思想・メソッドです。ハード整備だけでなく、人々のつながりをつくるソフトのデザインも行い、エリアマネジメントを展開しています。

「例えば、武蔵浦和駅前の一角に地域のつながりを生み出す場を設け、地元の人が運営できるような仕組みづくりをするエリアマネジメント(Be ACTO 武蔵浦和)や、賃貸住宅でのコミュニティ形成のためのコミュニティの管理人として「守人」を置くことで、入居者どうしのコミュニケーションのハブをつくった事例(フロール元住吉)、ひとつのまちになっている団地の窓口として「まちまど」を設け、住人同士のつながりを生み出し、自分たちのまちを変えられるようにデザインした事例などがあります」


ネイバーフッドデザインが大切な理由

近年の社会課題として人々の社会的孤立が見られます。内閣府が実施した「親しい友人がいない60歳以上の人の割合」の調査によると、日本では約3割の人が親しい友人がいないと回答。この数値はアメリカやドイツ、スウェーデンよりも高くなっています。

どうすれば人々の孤立を解消できるのか。

「HITOTOWA INC.では、自分が得意なことを人に話せる場所があることが大切だと考えます」と荒さん。

「例えば、かつてフォトグラファーをしていた人のエピソード。この方は、ある出来事がきっかけでフォトグラファーの仕事を長い間休んでいました。ある日、雑談の中で『また写真の仕事を始めたい』と話したことがきっかけとなり、仕事として写真撮影を依頼され、自信を取り戻して、フォトグラファーとして復活することができました」

荒さんはこのエピソードについて、「象徴的なエピソードですが、誰かのことを気にかける人がまわりにいて、お互いを支え合っていける環境が社会的孤立を解消する居場所になりうることが分かります。このようなローカルビジネスが都市部にも増えていくことが大事です」とお話しくださいました。

不動産を通して解決できる社会課題はいっぱいある、と荒さんは言います。「これから本格的に取り組んでいくひばりが丘団地での『グリーンデベロップメント』の活動では、本当の意味での持続可能なまちをつくっていきます。会社として事業をやるのはもちろんですが、個人の想いがより重要で、個人的にもそのまちの住民として絶対成功させたい」と熱い想いを語ってくださいました。



ADDReC/福島大我氏

<プロフィール>
大手デベロッパーにて、戸建住宅や商業施設を含む住宅・医療・福祉分野における設計、不動産開発事業のコンサルティング、及びマーケティングを担当。同時に、東京エリアにおける賃貸住宅の販売戦略立案、ブランディング、新規商品のプロトタイプ開発等を手掛ける。
その後、広告業界にて空間プロデューサーを務め、セールスプロモーション領域でのブランドデザインとプロデュースを経験する。
2016年、ADDReC株式会社を設立。建築や不動産等のリアルな空間領域からの思想・技術に基づく「生活者」のためのデザインファームとして、行政、鉄道、住宅、観光、広告宣伝事業等の業界をまたぎながら、これまでにない新しい仕組みのデザインを目的に活動している。
https://addrec.co.jp/


ホームシェアリングとまちづくりの未来

ADDReCは、元は空間デザインから始まった制作会社です。代表の福島さんは「ひねくれてる特化型」と言い、例えば北海道の端っこで人口がどんどん減っていく地域など、「人気ひとけがない地域に入り、新しい価値を生むために問題を解くプロデューサー集団」と表現します。

福島さんは近年のまちづくりの傾向として、「運営の仕組みやビジネスモデル、コミュニティのあり方などソフトの要素が、ハードの空間デザインに大きく影響する」と考えているそうです。昔は空間デザインによって先に構造をつくり、それに合わせて運営の仕組みなどを検討していましたが、それとは反対に、「つくった後の仕組みをどうやって整えよう?」というところから逆算して空間デザインを行い、構造をつくろうとしています。


Airbnbとのまちづくり事例

ADDReCではAirbnbと共同し、Airbnb型まちづくりのマニュアル化に取り組んでいます。

Airbnbは、ホストが持つ物件にゲストが宿泊できるというCtoC型のビジネス。ホストとゲストをつなげてコミュニティを形成したり、まちの可能性を広げたり、一種の「人起点」でのまちづくりといえます。

国がまちづくりを進めるアメリカや中国、シンガポールなどとは異なり、日本では民間が進めていることが多く、日本のAirbnbホストの動き方にはAirbnb本社も注目しています。この流れから、日本のホストの動き方を視察し、再現性を持って全国に展開していくために、Airbnb型まちづくりのフレーム化プロジェクトがはじまりました。

「例えば、個人が主張する(主語がI)ではなく、全体最適(主語がWE)を目指すことであったり、『郷に入ったら郷に従え』と言われるように地域の中の人として入り込んでいくことであったり、地域を活性化させていくための方法のマニュアル化を進めています」


アクションを進めていくためにはまちの特徴に合わせて関わり方を考えていくのが重要なのだそう。

モデルエリアとして、0→1モデルのエリアでは、フルコミットでの拠点開発からはじめ、新たな付加価値を生み出す。1→10モデルのエリアでは、拠点のもとでプレイヤーがアクションを起こしていく。既存活動が活発な10→100モデルのエリアでは、ライトコミットで事業をつくってドライブしていく。というように、まちの特徴に合わせた展開をモデル化します。

熱心に話を聞く参加者

また、今後の展開として、地元とホストの仲介役になる地域のプレイヤーを「ローカルアンバサダー」と名付けてコミュニティリーダーになってもらいつつ、まちづくり関連企業やスタートアップ、Airbnb Partners / ADDReC が事務局として「Airbnbまちづくりワーキンググループ」を組み、ローカルアンバサダーコミュニティ運営やマニュアル提供、勉強会を行っていくとのことです。

「ADDReCは仕組みのデザイン会社として、プロジェクトマネジメントという形で地域に入り込んでいきながら、長期的なスパンで、広告系エージェンシーではつくれないような文化や言語をつくっていけるのが強み」と福島さんは話してくださいました。



クロストーク

各社の活動紹介を終え、ここで少し休憩タイム。隣の人と話す時間をとりました。

すると、会場は大盛り上がり。横とのつながりもつくってもらうイベントでもあるため、良い時間になりました。

このあたりで本レポートも折り返し。後編に続きます。

TEXT, PHOTO,&EDIT:花崎寛太(micro development inc.)



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