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拠点を運営する上で意識するべきポイントは?<それ、1から教えてくれませんか?>

こんにちは!
micro development inc. (mdi)のインターン、テリーです!

前回の「空き家改修×まちづくり(施工編)」に引き続き、
「空き家改修×まちづくり(運営編)」をお届けできればと思います!

今回はシェアキッチン「ダイロクキッチン」や、シェアオフィス「EAST DOCK」、や3軒の宿泊施設を運営している合同会社so-anの代表兼micro development inc. メンバーである荒武さんとmicro development inc. メンバーの森本さん、門井さんに話を伺いました。


空き家改修×まちづくり(運営編)

テリー:まずは荒武さんの経歴について教えてください。

荒武:僕自身は学生時代に行っていたダイロクキッチンの改修後から、地域おこし協力隊という制度を使って東伊豆町稲取に入りこみながら拠点の管理人として活動してきました。

学生時代にはじめた「空き家改修プロジェクト」では今でも後輩達が東伊豆町で空き家を改修し続けているのですが、その改修し終わった物件を僕ら創設メンバーが設立したNPOで運営していきました。その後稲取でできた仲間と合同会社so-anを設立し、宿泊施設を始めたりなどして、現在は計5件の施設の管理、運営をしています。

「拠点を運営する上で意識するべきポイントは?」

荒武:私が今回テーマにするのは「拠点を運営する上で意識すべきポイントは?」ということで、拠点を運営する上でのノウハウというよりも、マインドやどんなことにやりがいを感じてるのかを中心に話していきたいと思います。

前回のダイロクキッチン施工編でお話したように、学生時代に空き家改修プロジェクトを進めながら、改修に携わったダイロクキッチンの運営も自ら責任を持って行ってきました。その過程で、地域のさまざまな人との繋がりを築き、コロナ前ではありますが伊豆に住む多様な人々が集まるコミュニティ拠点を作り上げることができました。

他にも運営しているシェアオフィスのEAST DOCKでは、夜な夜な稲取に訪れた旅人だったり、移住してきた若者だったり、色んな人たちが集まり、拠点として場所が出来上がってきたという意味で一旦作りたい景色は作って来れたのかなと思っているんですが、この形になる前にも沢山の苦労というか、、笑

色々なことがありました。

「責任感の実感」

こちらの写真は僕たちが学生時代に一番最初に改修させてもらった施設の完成してから5年後の姿です。屋内になぜか草が生えていたりとか、なぜか天井が剥がれていたりとちょっと笑い事じゃないんですけど、ずさんな状況になってました。

学生時代の話になりますけど、ダイロクキッチンを改修している時も色々やらかしてて、改修した後もですね 飛ぶ鳥後を濁さずじゃないですが、もう跡を濁しまくっていました、、、
改修作業が終わって大学に帰ってたんですけど、地元の受け入れてくれた担当者さんからちょっとお叱りを受けるというようなことが色々とありました。

ただ、失敗してヘラヘラしてるだけじゃなくて、今はこんな笑い話として話してたりもするんですけど、当時僕らとしては責任感の薄さというか、プロジェクトに関わることへの責任を認識するきっかけというのがこの失敗をした時だったかなと思っています。

上の画像のLINEにも書いてある通り、やっぱり自分達が改修した建物への責任感がないことを、地元の人に指摘されるというのはすごく悔しいことだし、これはあってはならないことだなと強く感じてました。

こういう失敗を重ねていって、僕ら自身は地域に関わることの責任を学んでいたんだなと思っています。それと同時に、ここまで担当者さんもこんなこと絶対言いたくなかったと思うんですけど、こんなダメダメな僕らに対して怒ってくれる人がこの土地にいたというのは自分たちにとってすごくありがたいことだったし、やっぱり愛を持った関わり方をしてくれる人たちに恩返ししていかないといけないよねっていうのが建物を作り終わった後もその土地に関わろうと思った原点になっていると思います。

「地域おこし協力隊として」

こんな感じで2016年の3月にダイロクキッチンがオープンしました。
オープンと同時に空き家改修プロジェクトを立ち上げたメンバーは卒業して就職という時期だったのですが、卒業後もこの施設を運営していく予定だったので、卒業生を中心にNPOを作ってこの施設を借り受けて運営していく形になりました。
それと同時に、僕自身はさっき冒頭に話したように、この町に移り住んで地域おこし協力隊という立場でこの場所の管理運営をすることになりました。

地域おこし協力隊に所属してから意識していたことが1つあって、自分たちのやりたいことだけを先行して取り組んでいくんじゃなくて、地域のニーズや困り事と重なる部分を模索することが大事なんじゃないかなということです。よそものとして住んでいる人と違う目線で地域を見ることができるからこそ、既存の地域にはない視点を持って自分ができる立ち回りをしていけたらいいんじゃないかなと思って、この活動を始めて7年ぐらい経つんですけど、今になってもやっぱりこの図が示す中間を意識しながら、物事に取り組んでいます。

オープンして2年目頃からダイロクキッチンはチャレンジショップとしても運用されるようになって、ここでのチャレンジショップを経由して稲取で開業したお店が現在では3店舗あります。
僕はチャレンジショップで挑戦する人のお手伝いとして配膳係をしたりとか、米を沢山炊くので、20号炊きの炊飯器をガス屋さんから借りて、朝ごはんを出したりしてました。その釜が重すぎて僕ぎっくり腰になったりしたんですけど、今になってはいい思い出ですね笑

そんな活動を積み重ねていくことで、思い出もたくさん増えて、運営をしていくことで色々な人と思い出を共有できる点が、空き家改修のプロセスとはまた違う面白さがありました。
建物と一緒に成長していく過程での経験はすごく豊かで、やっぱり僕の地域活動の原点はここにあるなと思ってます。

「感情は伝染する」

まとめると、拠点を運営する上で意識すべき点は「過程をいかに楽しめるか」だなと思って、やっぱり明確なゴールが見えにくい領域でモヤモヤすることも多いんですけど、そのモヤモヤしてる状態も楽しむことがすごく大事だなって振り返ってみると思います。

建物が盛り上がっている時にはみんながその場所を楽しんで使っている、かつ自分もその運営を楽しんでいた時期でもあったと思っていて。ポジティブな時もそうだけど運営の感情は建物に伝染しやすいという感覚を持っています。

テリー:拠点運営をする上で大切にしていることはありますか?

荒武:自分の中で大切にしたいと思っていることが3点あります。
当事者意識を持つこと。
仲間との出会いを大切にすること。
ユーザー視点であること。
偶然の出会いから仕事に繋がることだったり、活動のきっかけになることが多いので関係性の構築も楽しんでいくことを意識してます。
そして、自分自身がその施設を楽しんで使うことで品質確認にも繋がるし、感情の伝染という意味でも全部基本的な部分ではありますがその場と自分に距離感が無いかが大事だなと思っています。

中西:今後運営拠点を増やすことはあるんですか?

荒武:今後は増えてく予定ですね。
mdiにはEAST DOCKのことは一緒に考えてもらってるけど、建物は飽和状態でこれ以上拠点を増やしてもプレイヤーが足りない状態で、これから拠点を担える人たちが増えたら随時増やしていくイメージかな。

中西:荒武さん2代目を発掘するみたいな形ですか?

荒武:そうそう、やっぱりフレッシュさがなくなってきてるからさ笑

テリー:荒武さんが思う新しい2代目はどこから生まれてくると予想してますか?

荒武:それこそmdiのインターンの子たちには可能性を勝手に感じてるんだけど、地域に対する眼差しを持ってくれて次世代を担う人たちだからこの町に訪れて僕らと交流する中で、気に入ってくれたら任せていきたいなと思う。
あとは大学と連携することも多いからいつでも声をかけてほしいと思ってる。

テリー:地域おこし協力隊っていきなり応募する人が多くて任期を終えてから根付かず終わってしまう事例が多いじゃないですか。
そのあたりのギャップを埋めるためには、どうすることが大切だと思いますか?

荒武:それこそ僕たちの役割だなと思っていて。東伊豆でしか通用しないけど地域との関係性においてこれまで得てきた町の信用があって使えるリソースは持ってるから、信頼できる移住者にどんどん繋いでいくことが大切だと思う。

テリー:町に入る際に地域おこし協力隊以外の選択肢はありましたか?

荒武:当時の僕はやさぐれてて、あまり人が敷いたレールに乗りたくないみたいな人で、、、笑

役場の方には地域おこし協力隊を提案してもらってたんだけど、それもこの国が敷いたレールだから嫌だなって、、自分で切り開きたい欲求が強かったので農家さんや職人さんの日雇いバイトをして食いつなぎながら、ダイロクキッチンを運営します!って役場に伝えてたね笑

それ以外にも大学院まで進んでいたので建築の設計事務所に勤める選択肢はあったかな。
けど、ただ設計事務所に入るのは面白くないなと思っちゃって、道を踏み外したいなって思ってたからなのかエントリーシートに『私は御社に入って空気を読みません』って全部に書いていて、迎合した行動は取りたくありません。
こんな僕でよければ選んでくださいって。

そしたら誰も選んでくれなかった笑

テリー:笑笑

テリー:話は変わるんですけど、荒武さん自身のキャリアステージはいくつかあると思ってて、協力隊時代からNPOとso-anで活動して今はmicro development inc. といった動きの中で、どんな心境の変化があったか教えてもらっていいですか?

荒武:今は拠点としてEAST DOCKがあるけど、協力隊時代は運営拠点がダイロクキッチンしかなくて、いかにダイロクキッチンを使って町に貢献するか考えていました。
ただ広い視野で町を見るとダイロクキッチンだけじゃ満たせない機能や町のニーズがあるなと思って、EAST DOCKを作りました。人が集まる施設として、公民館や町の会議室といった地元向けの貸出空間はあったのですが、外の人が来た時に活動できる拠点がなかったんですよね。
そんな部分が見えてきた時にもっとこの町は色々な人が関われるなと自分が町と外の人を繋ぐ役割を担えると思いました。

森本:micro development inc. の強みとして設計があるけど、運営してみてわかった設計が甘かった部分とかある?

荒武:ダイロクキッチンでいうとパレットが本当に重い笑
お客さんに動かしてもらうことはできなかったね。

パレット:フォークリフトなどで荷物を載せたまま運ぶための荷台のこと

門井:運営する中でレイアウトを変えられるポイントは成功した部分で、ただレイアウトを変更するのが結構大変って部分がもう少し運びやすさとかに配慮できてたら良かったかもね。

森本:自由度を高めると逆にお客さんがつかない場合もあるよね
利用する側にとって自由なことが使いやすいとは限らないから。

門井:ある程度まで提供してあげることが大切なのかもね
観光として栄えてきた町で観光以外の視点で町を見ることができるのは強みになるよね

最後に

今回のインタビューを通じて、地域活性化や空き家改修のプロセスにおける貴重な経験や考えが伝わってきました。空き家改修を行い、運営する上で、拠点を建物としてではなく地域の一部として捉え、そこから生まれるストーリーを描く姿勢は、施設の運営だけでは収まらない意義を感じました。地域に対する眼差しを大切にし、次世代を担う人たちとの連携を図る姿勢は、これからの東伊豆を作る上で大きな鍵となると思います。1つの拠点に留まらず、町全体を視野に入れて拡大していく荒武さんの覚悟が伺えました。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

執筆:石田瑛也(テリー)

合同会社so-an:https://www.so-an.co.jp/
ダイロクキッチン:https://www.dai6kitchen.com
EAST DOCK facebook:https://www.facebook.com/inatori.eastdock

公式ウェブサイト https://microdeve.com/
公式facebook:https://www.facebook.com/microdeve/