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高野ゆらこ「9665歩・女優(4日目)」

何にもしない合宿は朝7時半解散。親が迎えに来る子もいれば、寝袋やぬいぐるみを抱えて徒歩で帰る子も。
滞在しているホテルの真向かいに住んでいらっしゃるおやじの会メンバーの方が3人の旅人を送り届けてくださる。合宿にはご家族全員で参加していらっしゃる、と聞きびっくり。

「滞在している」と数行前に書いたものの、正確には昨日で一度チェックアウトしているので今日またチェックインするまでは部屋には入れない。
なので荷物だけ置かせてもらい、外に放り出されてしまう。旅が始まってから4日目、日々の疲れが確実に溜まってきている……。
ぼんやりした頭をなんとか回転させながら近くのコメダ珈琲で3日目の日記を書く作業。かづみさんと二人、今日は少し休まないとヤバいね、なんて話し合う。体の疲れもそうだけど、日々の自分が感じたことなどをここまで文字にしていく時間は、なんていうか「己(おのれ)を見つめ続け疲れ」のようなものもある。そうだ、考えない時間を作ろう、今日は。

日記の作業を終えて一旦ホテルにPCを置きにいく。
真向かいのおうちのベランダにはさっきまで皆さんが着ていたであろう、おやじの会ポロシャツが4枚風になびいている。
なんてことない景色も、自分の中に情報が一つ加わるだけで全然受け取るものが違うんだよなあ。

意識的に休まなきゃと思いつつ、宿題を終えたら出かけたくなってしまう性。どうせ明日はちょっと天気も崩れそうだし、徒歩はきついけどシェアサイクルだったらそんなに疲れないはずだし、えーい行ってしまえ!と、お隣の三島市にある「ゆうだい温泉」さんへ自転車で。
ふんふんふーん、と気持ちよく漕いでいたのも束の間、そりゃそうだよね、「雄大」な景色を見られるからきっと「ゆうだい」温泉なんだもの、民家が途切れてからはひたすら上り坂が続く。

これはまだ余裕があったとき

え、あたし、さっきまで今日は休むって言ってなかった……?

シェアサイクルで行く場所じゃない

滝のような汗を流しながら上った先にあるゆうだい温泉。わかっちゃいたけど本日の天気は曇り時々晴れ。当然、富士山の「雄大」な姿は眺められず。でも温泉は最高でした、サウナと天然水の水風呂のセットを繰り返してデトックス完了。ていうか静岡って基本軟水?ホテルの部屋の水も、心なしかやわらかく感じるんだけど。詳しい人誰か教えてほしい。「静岡 軟水」でググってもよくわかんなかった。

意見交換会までは何しようかしら。お風呂に入って元気になってきたし、このまま自転車であちこち行ってみようか。ゆうだい温泉を出発し、今度は延々下り坂を気持ちよく走る。

可愛すぎる

急いでいないからこそ、道端の小さな地蔵や独特な水路にも目を向ける余裕がある。


え、ここ?てとこにいた

初日に、自分は造形物からインスピレーションが湧くアーティストではないと書いたけど、さらに思ったことがあって。
今回、旅をしている中で感じた感覚、それは肉体的なものも精神的なものも両方、あらゆる「感覚」を舞台上・カメラの前に「再現」したいとは思う。
わたしは演出をするときによく「そのセリフを言っているとき、寒い?暑い?着ている服は心地いい?どんな空気?」など、本人の気持ち以外の状態を聞く。たとえば、すごく切ない、お互い悲しみマックスみたいなセリフを言い合ってるとする。でもそんなときにも人は空気中の埃を見つめて「埃が舞ってるな…」と思ったりもする。無菌室で演じているわけじゃないからこそ、セリフ以外の状態をどれだけ想像して体に再現できるか、それが重要なんじゃないかなーなんて、1,000おこがま(おこがましいの最上級表現)なこと承知で思うわけ。で、まあ造形物から直接作品に落とし込むことはなくともその時に感じた気持ちだったりそこにたどり着くまでの肉体の状態だったりはこの先絶対役に立つと思うんだよね、ていう話。

延々何日か前の言い訳じみたことを書いてしまった。

勢いで今度は裾野から御殿場方面へ進み、気になっていた古民家カフェ「いちごの里 Berry Good」さんへ。正直、インスタ映え的なスイーツにはまったく興味がなかったけど…何このいちごごおり。凍らせたいちごのみをかき氷みたいにふわふわにして練乳つけて食べるの。語彙失うくらい美味。いちごの農家さんがやっているカフェだからそもそもいちごが美味しい上に、都内じゃ考えられないくらいの価格設定。
滞在中また食べられたらいいのになあ。ほんっとに美味しかった。

いちごごおり600円

夜はいよいよ本日最後のイベント、住民との意見交換会。
飲んで食べてしゃべって、笑って。
正直、たった何日か滞在しただけの自分が裾野市の、しかも一地区である東地区に対して言えることなんて何もない。偉そうな「意見」なんて持ちたくもないし、マジでそれこそ1,000おこがまじゃね?と思う。
コーディネーターの北本さんに「本当に人が好きですよね。」と言われて、つくづくそこに尽きるなあと。わたしはお節介だし他人のことがどうでもよくないから、いろんな人と会って話せるこのプロジェクトが好きなんだと思う。

とはいえ「好き」だけで補助金もらってる場合じゃないぜ自分、オリジナルの還元方法でこれまでつながった方々に返していかねば。

今日のハイライトは意見交換会で11歳女子に「女優と俳優はどう違うの?」と聞かれたこと。
「女優」の言葉が持つイメージについて11歳の女の子とラーメン食べながら深掘りできる機会なんてないだろ!



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