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吉﨑裕哉「旅人ではない何者か」龍山町3日目

今回のMAWは僕自身の都合で2月と3月に2回に分けて滞在させていただくことになっている。それぞれ3泊4日の短期間ずつなのだが結果的にとても良い判断だったと思っている。

龍山町は1日目のnoteでも言及したように人口500人余りの過疎地域で、小中学校を始めとする教育機関がない、正しくは2014年を最後に閉校してしまっている。
つまりざっくり言うと若い人がいないと言うのが現状だ。

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今回ホストの鈴木さんの計らいで地域に住むおじいちゃんおばあちゃん達に多く会わせていただいた。その誰もが口を揃えて「若い人がいないからねぇ」と言う。
もちろん若い人が全くいないわけではなく、ホストの鈴木さんを始めとして、浜松山里いきいき応援隊(通称:山いき隊)の長谷山大騎さんと鈴木千陽さんが龍山担当として精力的に頑張っておられるが、前述した通り現在町内に教育機関はなく子供達がおらず、町を歩いていても見かけることはなかった。かつて最大13000人の人口を誇った昭和30年は龍山村立第一小学校を始めとして5つの小学校、そして中学校も1校あったことを考えると、町に子供がいないと言うのは確かに寂しい思いがする。

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龍山より少し先に行ったところに佐久間や水窪といった地域があり、ここには多くの人が住み学校がありスーパーがあり病院がある。駅もあり電車も通っているし、薬局もあるし、床屋なんて斜めに2軒向かいあって立っていた!!
ほんの30分ほど離れただけで、より奥地には人がいて、なぜ龍山には...。
そこには地形や駅の有無など様々な要素があるのだろうが、正直この距離感で人口が増えていく町と減っていく町を見るのは残酷な気持ちにもなった。

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今日お話を伺った大野のおじいちゃんは帰り際に向かいの集落を見つめて「あそこはもう終わりだ、若い人がいない、ここももうダメだな。小さい集落はもうなくなるよ。しょうがない、そういう時代だ」と呟いた。

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そこには、ただ1度だけ旅人としてここに来た人間にはわからない複雑な想いが読み取られ、とても「そんなことはないですよ」などと無責任なことは言えなかった。無くなりゆく町とそこに来た通りすがりの旅人、地域のために何かを還元する気概を持って来たものの、目の前に厳然と立ちはだかる現実の重みに、自分の無力さを痛感した。

そんな中、去り際に「実は3月にまた来るんですよ!」と伝えると皆ぱあっ顔色が変わり「そうなんだ、じゃぁまた寄っておいでね!」と優しい笑顔で言ってくれたのが救いだった。

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短期間レジデンスというのは我々芸術家にとっては非日常体験として大きな経験・養分を得る機会となるが、龍山のような過疎地域の人達からしたら実はそれはとても残酷なものなのかもしれないなどと考えてしまった。だからこその「また来るね」という言葉へのあの表情だったのだろうか。
気軽に移住、などと言うつもりはないが本当に地域のことを考えるのならば、ならなければいけないのかもしれない「旅人ではない何者か」に。

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以下今日訪れた場所...


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鮎釣の地蔵様・・・身体の痛いところをさすり、もし治癒した場合は天竜川から自
         分の歳の数だけ石を拾いここに並べるそうな。
         大人気のため胸から下は既に埋まった状態だったので、そっと
         ご挨拶だけさせていただいた。

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秋葉神社下社・・・昭和18年の大火で上社が焼けてしまったためその一時的な代
         わりとして創建。近くに上社まで行く表参道があるため多くの
         人で賑わっていた。

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白倉峡・機織淵・・・淵の神様が落とした斧を返してくれた逸話や、機織り機を背
          負った女が淵の底に沈んでしまった逸話が残る。
          とても美しい淵。次来たら泳ぐ。

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鈴木さんのお知り合いの山田のおじさん。この土地の所有者で「龍山ハーモニカバンド」なるものを組んでいるチャーミングなおじさま。初対面の僕にも飴と鞭を使い分けてふきのとう採りを指導してくれた。

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立派なのが採れました!!なお天麩羅にして美味しくいただきました。

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大野のおじちゃん。ご自慢の珍しい竹と昔家の天井に吊るしていた竹網(?)を見せてくださった。

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笑顔が可愛いおばあちゃんもありがとうございました。

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夜ご飯調達に水窪にあるスーパー「まきうち」さんへ。なんとここには鮮魚店がありとても新鮮な魚が食べられる。今日はホタテ、イカ、マグロ、ブリをいただきました。とっても美味しかったです。

さて明日は一旦横浜へ戻る日。次の滞在はどんな出会いがあるのか。
ワクワクを胸に、また来るね!


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