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三浦雨林「書くこと、作ること」(5日目)

12:00 荷造りして出発

 今日だけ温泉旅館に泊まることにしていたので、荷造りと部屋の片付けをして出発。宿から出てすぐの畑のみかん達が包まれていた。
 まずは毎日通っている温泉の横にある、大蘇鉄の元に行ってみることにした。

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 想像していたのとかなり違った。今まで見てきた大楠などのように、幹そのものが太く大きくなっていくのだと思っていた。そうか、ソテツは長く長く伸びるのか。大体、南の植生であるソテツ科の植物自体に馴染みがない。ナッシーだ、と思うくらい馴染みがない。たぶんナッシーでもない。
 推定樹齢1000年以上と看板に書かれていた。河津には古い木々や石がかなり多く残っていて、すごく大切にされている。無駄に観光地化せず、だからと言って排除もせず、歴史のあるものたちに干渉していない感じが「この土地で一緒に生きている/生きてきた」という感じがする。良い町だ。


 河津に滞在し始めてから、一人でいることについて考えていた。一人でいることの自然さを取り戻すというか、誰と対話をしてもどう出会って別れても、生きている限り結局一人ぼっちなのだ、という感覚。寂しいとか悲しいとかではなくて、ただ、どうやっても一人でしかないこの生をどう引き受けようか。たぶん生きているだけなら誰とも話さなくてもいいし、誰と心を通わす必要もない。でもそういうわけにもいかないよね、だってずっと自分が見えているものしか知らないのはもったいないし、飽きちゃう。何より、行き止まりになってしまった時、一人では抜け道を見つけられない。だからたくさん話をする。私ではないあなたが、彼が、誰かが見えているものを知りたい。教えてほしい。そうやって世界の見え方が変容していくことで、また一人で歩けるようになる。
 やっぱり、こうやって一人を思い出す時間は必要だと思う。誰かとの出会いをまた楽しむためというよりも、自分を一番大切にする時間として。
 不思議なのだけれど、河津町は一人でいても寂しくない。たぶん、見るからに余所者の私に対して快く話かけてくれたり、会話をしてくれたりするから。でも、私がどこの誰で何をしているのか、誰も気にしない。私が私のまま受け入れられている感じがする。それってすごいことだと思う。

 伸びた蘇鉄はぐねぐねしていて、自分で自分を支えきれないようで、たくさんの支えがあった。

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 峰温泉大噴湯を見ようと寄ってみたけれど、休園日でやっていなかった。
 近くに湯煙があがっていたので、吸い込まれるように行ってみる。いつも遠くから見ていた湯煙だった。てっきり噴泉の煙だと思っていた。近づいてみると、足元から硫黄の匂いと共に暖かい温度がぶわっと上がってくる。この巨大な装置からは少しづつ湯が流れ出ていて、そのまま下水道?に流れているようだった。近くのマンホールからも湯気が上がっていた。

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 イソヒヨドリのオス?色があって大きめの鳥、かわいい。お腹がふわふわ。

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 菜の花が咲いていた。ミツバチも飛んでた。

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 モズが川を見ていた。おしりがもしゃもしゃで可愛いな、と思っていたが、鳥に詳しい母に聞くと「ハヤニエする鳥だよ」と教えてくれた。ハヤニエとは、"捕った獲物を枝や有刺鉄線のとげなどに突き刺しておく習性のこと"(参照元)らしく、早贄と書くらしい。動画や写真を見てみたけど、結構怖かった…。知らなかった…。ヤモリやカエルも刺していた…結構大きい…。

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 たぶんダイサギ。電柱に乗ってるのはダイサギの子供たち?サイズが違うのがかわいい。遊びながら飛んでいた。

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 桜が咲く前の河津に来られてよかった。川沿いの桜の木も、山々もうっすらと桃色に色づいている。きっと自分で選んでいたら桜の時期にしていた。桜が咲いていなくてもこの町は美しい。夕方、日が落ちる頃の影になった山々。穏やかな川のゆらめく反射。長く生きてきた木々のざわめき。ずっとそこにいた石や岩たち。何千年も自然と共に暮らしてきた町。

 途中、港月堂という和菓子屋さんに寄った。ホストの和田さんが初日に「ここのチーズどらやきも美味しいよ」と教えてくれたところだ。中に入ると、クリスマス用のケーキも売っていて、前のお客さんが大きめのホールケーキを3つも購入していた。親戚一同集まるんだろうか、いいなあ楽しそうだなあと思っていると、そのお客さんはケーキの箱を3つ上に重ねて不安定な状態で店を出ようとしていた。当然ドアも開けられないので、私が開けに行くと、やわらかく「ありがとうね」と笑っていってくれた。
 ケーキは大きいものしかなかったので、私はチーズどら焼きと温泉まんじゅうを買った。自転車を押しながら食べた。すぐ食べ歩きしてしまう。美味しかった。

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18:00 温泉

 旅館の晩御飯!感染症対策で半個室での食事だった。生わさびを自分で擦った。わさびはあまり得意ではないけれど、自分で擦ると辛さの調節が出来るというグッドな発見があった。金目鯛の煮付けもあったけれど、私の煮付けがマサラタウンの草むらにいるポケモンレベルだということを自覚した(激弱ということ)。

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 作品を作りたいなと、常々思っている。けれど、何のために作品をつくるのかわからなくなる時も多くある。誰が求めているのだろうとか、私の作品をおもしろいと思う人などこの世にいないんじゃないかとか、そういう意味のない不安に、情けないことだが、未だに苛まれる。そんなの考えたってどうしようもないんだし、本当はどうでもいいのだ。それでも自分を、自分たちを信じて作るしかない。

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 これから温泉。
 明日は早起きして朝市に行く。
 起きたらサンタさん来てないかな。



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