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ハク

僕とハクはどこか精神的によく似ていた。いつから一緒にいるのかよく覚えてないけど、一緒にいるのが当たり前でそのこと自体に僕もハクも何も疑問を感じたことがない。
僕とハクはずっと一緒に歩き続けていて勉強も学校も仕事もしたことがない。

ここがなんていう星かもよく分からないけれど、ここには無数の緑色の道があって川があって山があって森がある。海もあるけれど濡れるのが嫌で僕もハクも入ったことはない。

ハクはまん丸の形をしていて体長30センチくらいなのに、不思議と象の様に大きく見える時がある。ハクはいつも僕を見ている様なボクのずっとずっと先の方を見ている様な目をしている。

僕たちは話すことも出来るんだけど、声を出して会話をすこることはない。
話すことで真実ではないことを言ってしまうことがあるからだ。
僕達は細やかな動作の表現やエネルギーのトーンの微妙な上げ下げなどで伝える様にしている。こんなに身体全身が動かせるのに口というたった一つの器官だけでコミュニケーションを取ろうとする事は何か薄っぺらいものを感じていた。
そしてそれは僕だけでなくハクも同じことを思っていて、僕も同じ様に考えている。

何も言わずに遠くに歩いたり飛んだりして旅に出たり行ったり、寒い時はくっ付いて暖を取ったり、動きのスピード対決をして遊んだりしていた。そういった風な時間を過ごしていることで前よりもずっと、ハクの深い部分を知れるような気がした。

ハクは基本的に僕のことを否定しない。ただ稀にイヤなことがあると「止まる」というブレーキを踏むことで僕にそれを伝える様にしていた。僕はハクといてイヤなことが起きたことは一度もない。それはこれからもずっと変わらないことなんだろう。

寿命というものを聞いたことがあるけれど、それがどんな風に起こるのか昔から興味があった。突然消えるのか、誰かが伝えにくるのか、自分で感じ取るものなのか、空に昇っていくのか、どんな色になるのか、爆発が起きるのか、それともすごく静かなのか。ずっと待っているけれどなかなか寿命は来てくれる素ぶりがなかった。

もっともハクは興味がなさそうで、その生への執着の無さはどこか器の大きさを感じさせた。

一体、僕たちはどこから来てどこへ向かうのだろう。

そして何のために。

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