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愛のしるし

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たくさんの「スキ」をもらった文章。下のほうにも良いやつがたくさんあります。
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#思い出

たったひとこと、miwaの“声”

 1年ほど前、数ヶ月だけ働いていた当時の職場で初めて「VIPのお客様」というのを経験した。  その日の朝はみんなが少しソワソワしていたように思う。当然わたしもそうだった。今日来店する顧客の一覧とタイムテーブルの表を見る。他の欄には「タケウチ様」などと名前が書かれているのに、VIPのところは「VIP様」としか書かれていない。  新人のわたしはもちろん、職場で1番下っ端だった。そもそも正社員が顧客の接待や打ち合わせ、アルバイトはその下準備という構図で成り立つ仕事であったがゆえに

心の微熱

「好きな人ができない」  昔のクラスメイトがしょっちゅう言っていた。わたしも今ならあの子の気持ちがよく分かる。こんなことは初めてだ。4歳の初恋から一昨年の秋まで、過去に1度も絶やした時期などなかったのに。  確かにできないね、好きな人。  何を以てわたしは誰かを好きになるんだ。どういう瞬間ぎゅっと心を掴まれるんだ。恋をしている間の自分は一体どんな感じだったか。  人を愛する微熱を失くしてもうすぐ2年、それがなかなか心に戻ってきてくれない。  このままじゃ恋のしかたを

今だから言えること

 昔は髪が長かった。確か胸の先くらいまでは伸ばしていたんじゃないかと思う。真っ黒くて我ながら綺麗にゆらゆらとうねるくせっ毛。仲の良かった若い女の先生は「私、橘に憧れてるんだ」と言って、天然じゃないパーマの髪をファ、と揺らした。  自分でもすごく好きだった。だから突然ショートにしたとき、クラスメイトにさぞかし驚かれたのは今でも覚えている。  でも何ていうか、思い出してみて自然と頬が緩むのはやはり当時の好きな人の反応。後ろから「え?」と声がしたかと思ったら、急いで前にまわりこま

今も昔も綺麗なままで咲いていて

 同窓会にはまともに行ったことがない。  当時から今もずっと変わらず付き合いのある親友がいて、彼女が参加し、そしてわたしもちょうど故郷に帰省していたタイミング。  かつ元恋人やいじめっ子などが参加しないと確定しており、「行っても良いか」という気が少し芽生えた会。  そんな会しか参加をしないものだから、成人の日の小学校の同窓会しか今まで行ったことがない。  高校時代のメンバーたちは年に1~2度開催しているみたいだったが、いずれの場合もわたしの中の「行く」の基準は満たさなかっ

せんせい、あのね。

 きのうのアルバイトのとき、久しぶりにホウキとチリトリを使って床をそうじしました。  中学校でも高校でもそうじの時間はあったけど、わたしが思い出したのは小学校のそうじです。あのころはまだ身体が小さかったから、ホウキ係とチリトリ係に分かれてゴミを集めていました。  わたしがホウキ係のときに好きな人がチリトリ係をしていたり、その反対だったりしたときはちょっとだけ嬉しかった。  そういえば小学生って、どうして好きな人に順位をつけたがるんですかね。1位ユウキくん、2位ショウタくん、