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医学部受験に年齢差別はあるのか

こんにちは、植田幹也です。(受験アカウント:mic)
今年受験をしてみて、いわゆる再受験差別に関して私が把握した事実と自身の受験経験から感じたことを述べます。

結論を先に書くと以下になります。
・少なくとも私が受けた3校(慈恵、慶医、医科歯科)では、年齢差別を一切感じなかった
・全体として属性による差別は緩和傾向にあるのではないか

ただ、あくまで私が経験したことだけの話ですし、一括りに医学部と言っても多種の学校があるので一概には語れない、という点を差し引いて読んで下さい。

<前回記事:私の受験記録>

 

再受験差別とは

医学部は
・6年制である
・医師養成学校としての側面がある
・多くの場合入試に面接や小論文が課される
・面接や小論文は点数化されることもあれば、一発アウトもあり得る
などの点において、普通の大学受験とは異なります。

そして上記の特徴ゆえなのか、年齢を重ねた人が医学部を再受験することは一般的には不利であるという通説があります。
Web上や予備校界隈では、
"〇〇大学はxx歳以上では受からない"
"△△大学は1浪するごとに-10点引かれる"
などの様々な噂が流れています。

その他、女性が合格しづらいという女性差別も噂されています。

判決の事例

まず事実を述べると、判決では、少なくとも過去には差別は行われていた可能性が高いとされています。
実際の裁判で争われた事例を以下にいくつか貼ります。
ただ近年これらの事件がニュース等で大々的に報じられたため、現在は多くの大学が、年齢や性別に対する差別をかなり緩和させている、もしくは完全に無くしているのではないかという話もあります。

順天堂大に性別・浪人で異なる合格基準を設けていたと認定し、賠償命令

東京医大が性別を理由に不合格にしたとして、賠償命令

  

女性差別に関するデータ

再受験差別とは異なりますが、女性差別に関しても述べておきます。
上述のように2018年あたりから医学部受験における差別に対して世間での問題意識が高まり、文部科学省が緊急調査などを行いました。
その結果なのか、(データのある2013年度以来)2021年度の入試で初めて医学部入試において女性の合格率が男性を上回りました
このデータだけを持って、それまでは女性差別が存在した、と断定するには根拠として薄いですが、興味深いニュースではあります。

医学部の合格率、初めて男女逆転

 

再受験に寛容な情報ソース

逆に、(少なくとも現在は)再受験差別はそこまでない、という情報ソースもいくつかあるので、私の受験校だけになりますが紹介します。

慈恵

東京慈恵会医科大学は一時期再受験に厳しいと言われていましたが、近年は大学側がアドミッションポリシーとして「属性による差別を一切認めない」と主張しています。

この話は実際に私も面接でされましたし、事実30代の私が正規合格を貰っています。
他にも今年、慈恵に合格した20代後半の女性を知っていますし、Twitter上では30代男性で慈恵に進学する方も見かけました。
 

慶医

慶應の医学部は再受験に対して非常に厳しいという意見を散見しますが、以下の「医学部受験のプロ」チャンネルでは、実際に慶医を卒業した医師が"30代の入学者もいる"と明言しています。

また20代後半で東大理三に入学したことで有名な栗林さんは、以下の動画で慶應医学部から正規合格を貰ったと明かしています。


医科歯科

東京医科歯科大学も国立大学の中では再受験生に厳しいと言われることがありますが、事実として30代の私は合格をいただきました。
また以下の「MEDUCATE」のチャンネルでも、東大卒の再受験生が医科歯科には多いことに触れていて(編入の可能性もあるが)、中には社会人の再受験生もいたと話しています。

 

私の経験からの推察

再受験差別に関して今回の自身の受験経験から言えることは、少なくとも私が受けた3校では再受験差別は全く感じなかった、です。
私の体感では圧迫面接は無かったですし、再面接もありませんでした。
2次試験で落ちた慶医は自己採点の感触からわかるのですが、私は単純に筆記で点数を取れていないです。
(慶医は2次試験をやるものの、1次試験の点数をベースに最終的な合格者がおおよそ決まるとされている)

あくまで推論の域を出ないのですが、なぜ難関医学部が再受験に厳しいと言われがちなのか、思い当たる理由を2つ書きます。
 

理由1:そもそも再受験生が少ない

まず再受験生は圧倒的に情報を持っていないです。
また予備校などであっても、大学別の再受験生の合否確率などに関しては十分なデータを持っていないところがおそらく多いです。
とするならば、
"再受験の寛容度が不明瞭で、かつ難易度が高い大学は、危険だから出願を回避しておこう"
という選択をするのは自然なことです。
実際に私も医科歯科に出願するかは非常に悩み、何人かに相談させていただきました。

またTwitter上でかなり多くの再受験生と知り合いましたが、私以外に医科歯科に出願した方を知りません。(1名、もしかしたら出したのかな、というアカウントはありました)
更に医科歯科の会場で周りを見渡しましたが、私より年齢が高く見える受験生は見つからず、現役生の割合が非常に高いと感じました。
特に2日目の面接時は、皆ほぼ制服を着ているので判断できます。
男女1人ずつ程度若いけどスーツの方がいたかな、くらいの印象です。

つまり、
・再受験生は東大理三以外の最難関医学部への出願がそもそも非常に少ない
というのが私の仮説です。
(東大はかつては面接もなく、差別が全くないと噂されている。また理三は医師になるという目的以上に、受験界のトップだからという理由でここを狙う人が多い)


理由2:単に難しい

医学部受験は優秀な現役生がこぞって集まるので、再受験生が高い成績を出すことは困難です。
特に超上位校には、その現役世代の超優秀受験マシーン達が数多く集まります。

慶医の筆記試験時には私のすぐ後ろと3つ後ろが明らかに自分より年配の受験生でしたが、2次試験では彼らの姿は無かったです。
(1次は純粋な筆記スコア勝負なので、要は点数が足りずに2次に進めなかったということ)
つまり、
難関医学部は再受験生として筆記試験を突破するのがそもそもめちゃくちゃ難しい
という仮説が立ちます。

これは「Y-SAPIX」が公表している理三の年齢別受験データを見ても、その傾向が掴めます。
東大が年齢差別をしていない、という前提に立ちますが、2022年度の入試での合格率は
現役:43.9%(79人/180人)
1浪:27.5%(14人/51人)
2浪以上:2.1%(4人/190人)※なぜか表では9.1%となっている
と、2浪以上すると合格率が極端に落ちることがわかります。
超上位校では、やはり再受験生が現役や1浪に勝つことがものすごく難しいのです。

終わりに

医学部再受験は実際に受けて、自分で経験してみないとわからない点は多いです。
噂を鵜呑みにして夢を追いかけないのはもったいないと、個人的には感じます。
ただし、再受験差別が実際に横行するような学校を選んでしまって、それによって+1年などかかるのは人生にとって大きな損失であるものまた事実です。

最後は自分で決めるしかないですが、この記事があなたの決断や選択の助けになれば幸いです。
みなさんのご武運を祈ります。

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