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東大卒30代からの医学部再受験

こんにちは、植田幹也です。(受験アカウント:mic)
2023年に受験をして、東京医科歯科大学医学部医学科から合格をもらいました。進学をする予定です。
その受験記録をここに記します。
 


前提

この記事は
・(主に再受験生のために)私の医学部受験記録をありのままに残したい 
という目的で書きます。
なのでそれ以外のこと(再受験の社会的な是非、私の動機、将来の目標、等)は省いています。
一人の男の医学部受験記録以上でもなければ以下でもない(空集合)、ということを念頭に読んでいただいて、何かお役に立てれば幸いです。

また「勉強法」に関してはあまり言及しません。
使った参考書は書きますが、「オススメ参考書」なども特段ありません。
理由は2つあります。
1つ目は、私は現役時と今回の2度しか受験を経験していないので、それほど勉強法を深く語ることができないからです。
プロの塾講師や阿修羅さんなど、もっと受験に詳しい方を参考にしてください。
2つ目は、近年参考書や動画授業等の質が格段に上がっていて、個人的には勉強法もオススメ参考書もへったくれもないと思っているからです。
合否を分けるのはおそらく「勉強法や参考書の模索」ではなく「集中して勉強した時間」なのです。
もちろん最低限持ち合わせるべき姿勢はあるでしょう。「定義を大切にする」とか、「実践演習を多く積む」とか、「覚えるべきことを覚える」とかは、勉強時に持つべき普遍的なマインドです。
 

経歴

ざっとした経歴は以下です。
・千葉の公立高校出身
・2005年に東京大学の理科一類に現役進学
 -前期試験は0.4点差落ち
 -後期試験で合格
・物理工学科に進学し2009年に卒業
・内資と外資のコンサルティング会社を経験
・26歳から10年近くはフリーでコンサルの業務委託を受けつつ、ボルダリングやロッククライミングに全身全霊を注力
・2023年3月現在、36歳

現役時に理一に合格したことはもちろんですが、
・大学時代に塾講師で数学と物理を教えていた
・大学の物理を多少わかっている
・コンサル時代にロジカルシンキングや文章の構造的な書き方を叩き込まれた
・外資企業での英語経験
あたりはもしかすると再受験に活きたかもしれません。
 

合格校

最終的な合格校は以下です
・東京医科歯科大学医学部医学科
・東京慈恵会医科大学医学部医学科(正規合格)

慶應義塾大学医学部医学科は1次試験は通過しましたが、2次試験で不合格。
国立後期は千葉大学医学部医学科に出願していましたが、受けませんでした。
 

大まかなスケジュール

・2021年9月~11月
徐々に物理や数学の勉強を再開したのは2021年の9月あたりです。
10月~11月はロッククライミングでアメリカ遠征に行っていたので、その隙間を縫って参考書を読んだり問題を解くといった感じでした。

・2021年12月
既にこの年度の出願は終わっていましたが、2022年の共通テストや国立二次試験を予行練習として体験するために、帰国した12月から勉強に本腰を入れ始めました。
2022年の東大同日模試を受け、わずかながら可能性を感じたため目標校は高く東京大学理科三類としました。

・2022年1月~2022年9月
この時期は週2日程度の業務委託のコンサルの仕事、またクライミング関係の仕事もありましたが、空いている日はなるべく10時間以上勉強に費やしたいと頑張っていました。
問題集を解きつつ、模試を数多く受けました。

・2022年10月以降
仕事を減らし、月に3,4日程度以外は残り全て勉強に費やせたかと思います。
勉強は共通テストと2次試験の過去問や予想問題を中心にしました。

・秋にA判定が出なかったこと
・成績が安定しないこと
を理由に、12月頃に理三を諦め、医科歯科に出願することを決めました。
 

使用した過去問&模試過去問&予想問題

東大は各科目30~60セットほど過去問や予想問題をこなし、その他の学校は過去問を10年前後こなしました。
ただ苦手な空間の問題などは3回くらい解いたものもありますが、2回できたら良い方で、1回だけやりっぱなしのものも相当多かったです。

東大

・過去問:英語10年分、数学25年分、理科15年分、国語10年分(現代文はやらないこともあり)
・模試過去問(主要4社トータル):英語20回分、数学40回分、理科40回分、国語20回分(現代文はやらないこともあり)

医科歯科

・過去問:英語12年分、数学12年分、理科13年分

慶医

・過去問:英語10年分、数学13年分、理科12年分

慈恵

・過去問:英語4年分、数学9年分、理科6年分


共通テスト

各科目共通してこなしたのは、概算になりますが
・過去問、試行調査、センター試験:8回分
・予想問題5回分×2年:10回分
・予想パック4社×2年:8回分
とどの科目も最低25回分は解いています。

加えて重点科目は予想問題や過去問をおおよそ
・英語R:+5回分
・英語L:+15回分
・数学:+5回分
・国語(センター過去問):+10回分
・倫政(センター過去問。倫理や政治経済のみも含む):+25回分
程度は追加しています。

なので(受けた模試を除いても)25~50回分くらいは共通テスト形式の問題にあたったことになります。
 

使用した問題集

問題集は何が良いか事前にきちんと調べたというよりは、昔のものがたまたま残っていたから使ったというものもあります。

英語

・単語&熟語帳
 -『鉄壁』:何周もした。95%くらいは身に付いているはず
 -『ターゲット熟語1000』:4周くらいした。定着してない語もあり

・文法
 -『基礎 英文法問題精講』:2周くらい。これじゃなくて良い、というか今購入できるか不明
 -『英文法 標準問題精講』:1周くらい。あまり身に付いていない。ここまで要らない、というか今購入できるか不明
 -『英文法・語法 良問 500 誤文訂正編』:2,3周くらい。東大4A対策に良い

・英作文
 -『ドラゴン・イングリッシュ』:何周もした。90%くらいはそらで書けるはず
 -『英作文が面白いほど書ける本』:2周くらいしたが、定着し切れず

・リスニング
 -『キムタツリスニング 黄』:結構ディクテーションとかも頑張った
 -『キムタツリスニング 赤』:結構ディクテーションとかも頑張った
 -『キムタツリスニング ピンク』:1,2周
 -『鉄緑会 東大英語リスニング』:1,2周

・長文系は趣味の英語の本を読みました

数学

『新数学スタンダード演習ⅠAⅡB』:3周くらい
『新数学スタンダード演習Ⅲ』:3周くらい
『新数学演習』:1周ちょい。全く定着し切れず
『入試数学の掌握』:3冊ともやった。青の通過領域パートは何度もやって定着させたが、他は1回解いたのみで未定着
『解法の突破口』:1周
『合格る計算ⅠAⅡB』:つまみ食い
『合格る計算Ⅲ』:つまみ食い
『合格る確率』:つまみ食い

物理

『新物理入門』:現役時から読み込んでいたので引き続き
『名門の森』:2,3周くらい。思っていたより難しくて良かった
『理論物理への道標』:1,2周くらい。定着し切ってはいない
『鉄緑会 物理攻略のヒント』:1回読んだくらいだが、結構良い
『難問題の系統とその解き方』:ちょっと齧ったくらい

化学

『新研究』:現役時から辞書代わりに結構読んだ
『重要問題集』:3周くらい。東大以外は合格点取るだけならこれで十分
『新演習』:2周くらいしたが、定着し切れず。知識系がやたらむずい
『プラグマティック化学』:ちょっと摘まんで読んだ

国語

・現代文
 -『読解力の開発講座』:2問解いて、現代文に時間を割いてる場合じゃないと気付いて止めた
 -漢字はアプリで常用漢字チェックしたり、東大過去問を相当年数遡った

・古文
 -『グループ30で覚える古文単語600』:数周して90%以上は定着。収録語数が多いから選んだ
 -『古典文法をはじめからていねいに』:何周かしたが定着はし切れていない
 -『古文読解をはじめからていねいに』:2周くらいしたけど定着はしていない

・漢文
 -『早覚え速答法』:何周かして結構頭に入った
 -『漢文ヤマのヤマ』:つまみ食い。漢字一覧とかは何度も見た

倫理・政治経済

いわゆる「黄色本」:相当読みこんで頭に入れたつもり
『倫理、政治・経済 集中講義』:1回読んだくらい
 

塾等の外部サービス

今振り返ると演習系の講座をもっと早い段階からたくさん受けても良かったです。

・Z会「東大即応演習」:毎月1度提出。添削は丁寧だが、1Bの形式が違ったり、リスニングが4択だったりと問題形式が古い

・大数ゼミ
 -後期特別選抜:9月から毎週金曜日のテストゼミ。医科歯科とかを目指すなら問題難易度が適切。50人中上位10名の名前がランキングで出るので、やる気になれてかなり良い。2,3回に1回は名前が載れたか
 -良問難問12題:1日で12題の解説。解説だけの授業は自分には物足りないと感じた。どこまでいっても演習が大切
 -化学集中講義:夏に6日間化学を総ざらいできて良いしプリントも丁寧だが、分量が多すぎて消化不可能
 -最難関理系テストゼミ:1月後半のテストゼミ3日間。翌日に成績とランキングが出るのが良い。16名しかいなかったが、1位2回、3位1回という結果を直前期に出せて数学にかなり自信が付いた

・駿台 市ヶ谷:直前期に、医科歯科、慶医、慈恵の科目別2日間の演習があるので、取れるだけ取った。問題形式に実戦で触れられるので良かった

・SSS Education
 -自習室利用:直前期だけだが、個別の自習室を利用。理三生を中心とした東大生に質問可能。個人的には新たな勉強仲間ができて刺激になった
 -面接・小論文対策:かなり良かった!些末なテクニックではなく、医学生や医師としてのあるべき姿勢を学べ、どのような面接や小論がきても対応できる自信が付いた。慈恵の二次試験を突破できたのは確実にこの講座のおかげ
 

模試の成績推移

現役生は毎日のようにテストや演習を経験しています。再受験生はその点で圧倒的に物量が劣るので、模試は受けられるものは全て受けました
全統記述や駿台全国もメルカリなどで過去問を2,3年分購入して、ある程度傾向を掴んでから受けました。

・東大冠模試
理三は夏C判定、秋B判定が最高でした。蓋を開けてみると自分より低い判定で受かっている人はTwitter上ではほぼ見当たらなかったので、理三出願を回避したのは賢い選択だったかなと思います。

・共通テスト模試
どこに出願するにせよ、医学部受験をする以上は共通テストで高得点を取ることは必須だと考えたので序盤から模試を受けまくりました。
近年の共通テストのレベルは非常に高く、十分に形式慣れをしないと壊滅しかねないです。

・全統記述&駿台全国
全統記述は医学部受験からすると易しめな印象はありますが、難関医学部であっても本番に全統レベルが解ければ十分な気もします。
駿台全国あたりでしっかり得点できると、慶医とかも見えてくる印象です。
(ちなみに第2,3回の全統記述は自宅受験)

・その他の模試
その他は東進の「第一回医学部82大学判定テスト」と「千葉大本番レベル模試」を受けました。


本番の結果&自己採点

共通テスト

共通テストは合計824点(得点調整後。調整前は化学が1点低く823点)でした。医科歯科志望者でもおそらく上位20~30位に入っていたはずで、アドバンテージを得ることができました。


慈恵

かなり感覚的な自己採点になりますが、一応記しておきます。
・総合点:225/400点程度(正規合格)
・物理:50/100点
 -大問1:最初の2問のみ
 -大問2:最後の問題以外正解
・化学:70/100点
・数学:55/100点
 -大問1:完答。25点
 -大問2:〇△×。(2)で答えはあっているが十分性に言及せず。10点
 -大問3:文字を置いた方針のみで、無限降下法等には持ち込めず。5点
 -大問4:△△。(1)はabcのみにしていない。(2)は最大値は答えたがなぜかaを間違える。15点
・英語:50/100点
 -記号:10/22問
 -記述:△。方向性は正しい
 -英作文は不明


慶医

こちらも大雑把な自己採点。
当時のTwitterを見ていたところ、自己採点で315点程度あっても不合格の方もいました。感覚的に正規合格者は数学であと20点は積んでいるイメージで、自分の場合は単に2次合格に点数が足りていないと思います。
・総合点:305/500点程度(1次合格。2次不合格)
・物理:85/100点
 -数値系は絶対値を抜かした以外全て当てた
 -記述と図示で明らかなミスが2つ
・化学:40/100点
 -大問1で2ミス
 -大問2と3は後半ほぼ壊滅
・数学:80/150点
 -大問1で(2)(3)それぞれ最後ミス
 -大問2は(2)で分母ミス
 -大問3は(3)まで
 -大問4はtの値ミスしたが、(2)は取った
・英語:100/150点
 -記号など確定問題:27/37問
 -記述系は不明。そこそこ書いた


医科歯科

医科歯科は後で開示が来るかもしれません。
・総合点:400/540点前後(合格)
・共通テスト:164.4/180点
・数学:90/120点
 -大問1:(2)まで。20点
 -大問2:最後の偶奇性への言及が甘いが値は合っている。30点
 -大問3:完答。40点
・物理:34/60点
  -大問1:5.5/10問。16点
 -大問2:7.5/12問。18点
・化学:30/60点
 -大問1:2.5/7問。7点
 -大問2:13/19問。13点
 -大問3:4/8問。10点
・英語:85/120点
 -TFは21/24問
 -小要約は(3)を完全に外した
 -和訳は(1)で少し訳出ミス
 -400字要約はそこそこ書けた

☆2023/5/2 追記
開示結果はほぼ自己採点通りでした!

二次試験の面接・小論文

二次試験の形式や、された質問を書いておきます。
特に二次試験の内容に関して口外禁止はされていないはずですが、もし書いてまずい内容であれば後で消します。

再受験生なので当然経歴や志望理由は深掘られますが、どの学校でも圧迫面接は無いと感じ、再面接も無かったです。

慈恵

■面接
・5分×6セット。所謂MMI(マルチプル・ミニ・インタビュー)
・1人目:「医学科の友人が食中毒で実習を休むと言ってたのに、当日テーマパークの写真をSNSに上げていた。あなたはどうするか次のA〜Eから選べ」
・2人目:4コマ漫画の4コマ目が空白でそれを埋める絵を考え説明しろ。しりあがり寿の『地球防衛家のヒトビト』の毒キノコを採るべきか採らないべきかみたいなもの
・3人目:2枚のグラフから言える事実と推論。「各国の男性自殺率×女性自殺率(ただし旧共産諸国だけグルーピングで明示)」「各国の女性平均寿命を100としたときの男性平均寿命」
・4人目:「あなたは柔道世界大会のスポーツドクター。ある選手が頭を打ち、再び頭を打てば10%で命にかかわる。どうするか」
・5人目:経歴に付いての普通の面談
 -ここで、"気になると思いますので説明しておくと、うちは再受験差別はないので気楽に面接を受けてください"と説明され、非常に好印象であった
 -"1次試験は悪くない。さすが現役理一"などど褒められ和やか
 -ただし、志望動機に関しては”もっと直球で欲しい!”と言われる
・6人目:模造紙をホワイトボードに貼らされ、そこに図形や名前やモットーを書く

■小論文
・課題文を読み、90分でテーマ設定し1,200〜1,800字で書く
・好井裕明『「あたりまえ」を疑う社会学』
・部落差別に関して評論家と活動家が話しているニュース番組で、評論家側の「私は差別などしない普通の人ですが、、、」という論調にこそ分断があるという論旨
 

慶医

■小論文
・寺田寅彦『科学者とあたま』
・本文を読んで、あなたは「科学者は頭が良いと同時に悪くなくてはならない」についてのどう考えるか述べよ、的な内容

■調書記入

■面接
・10分程度×2回(再面接で3回目がある場合も)
・面接官はどちらも2名
・主にされた質問
 -志望理由
 -経歴説明
 -あなたの志すマイナースポーツの医療は、この高齢者問題等を抱える社会に受け入れられるのか
 -身の周りの人は、あなたの再受験になんと言っているか
 -入学したら周りの学生とどう接するか
 -18歳の自分と違うところ
 -(面接官の2人)どっちが外科医だと思う?→奇跡的に正解できた(笑)
 -あなたは医療にどんな貢献ができると思うか
 -自身の過去の被災地ボランティア支援の話
 -コロナであなたが必要とされたら駆けつけるか
 -独り身か結婚しているか
 -経済的な余裕はあるか
 -自身の転職の経歴の話
 -どんな6年間にしたいか
 -在学中にベンチャー立ち上げとか考えているか


医科歯科

・面接のみで10分×1回(再面接が課される場合も)
・面接官は3名
・主な質問内容
 -自己紹介
 -これまでの自分の会社の内容説明
 -工学部からコンサルは普通なのか
 -志望理由
 -その他経歴に関するつっこみ
 -医学部受験は今年初めてか。勉強は大変だったか
 -なぜ今年、再受験を決めたのか
 

費用

概算値だけ載せておきますが、私の場合は生活費とは別に1年ちょっとで130~140万円くらい受験費用(入学費用含む)がかかったようです。
ただ私は塾などの利用は一般的な受験生よりはかなり少ないかと思います。
これとは別に、もし私立医に入学手続きのお金を支払うなら、1校で少なくとも100~300万円程度かかります
ご参考までに。

・参考書代:24万円
 -赤本:2,000円×20冊=4万円
 -模試過去問:2,000円×50冊=10万円
 -参考書:2,000円×50冊=10万円
・講座代:41万円
 -Z会:5,000円×12ヶ月=6万円
 -大数ゼミ4講座合計:12万円
 -駿台直前9講座:13万円
 -SSS、自習室&面接小論:20万円
・模試代:6,000円×28回=16.8万円
・受験料:14.5万円
 -共通テスト:1.8万円
 -国立前期:1.7万円
 -私立医:6万円×2校=12万円
・入学費用:40万円
 -入学金:28万円
 -諸費用:12万円

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