自転車置き場のおっちゃんと女子大生が飲みに行くまで
高校1年生から大学を卒業するまでの間、自宅から最寄り駅へは自転車で移動していた。
利用していた自転車置き場には管理人のおっちゃんがいる。
定年退職後、再雇用された5,6人がシフト制で管理人を務めているのだ。
ただ、多くの人は1,2年で辞めてしまう。
気づいたら、「あれ、あのおっちゃん、最近見ないなぁ」となる。
今回シェアしたい話は、私が大学を卒業する少し前まで、長年、管理人を務めていたおっちゃんと飲みに行く話である。
*****
ある朝。
「11月いっぱいでここ、辞めるわ」
「え、そうなんですか。すごく長くお勤めでしたよね。」
「せやなぁ、7年半になるかなー」
「お疲れ様です。…最後はいつ来られるんですか?」
「27日。長いこと、いつも喋ってくれるから、(辞めること)伝えとこうと思って」
「ありがとうございます。」
「まだ後何回かは会えると思うから、それまでよろしく」
「はい!よろしくお願いします」
朝の1分でできた会話はこんなもんだった。
27日は土曜日で大学もなかったが、おっちゃんに小さな花束を渡しに自転車置き場に行った。
*****
12月。風の強い、寒い日だった。
黄昏時、たまたま自転車置き場の近くでおっちゃんに会った。
「お久しぶりです!」
「おお、久しぶり。元気か?」
「はい!元気です。」
「寒いなー」
「寒いですね〜。何されてたんですか?」
「散歩や。
……今度、良かったらご飯でもどうや?お昼に、この辺で。」
(!)
「はい!ぜひ」
「ありがとう。電話番号、聞いてもいい?」
「もちろんです。…あの、お名前って、何て言うんですか?」
「フカガワです。」
すごく丁寧にお辞儀をされて言われた。
高校生のときからお世話になってた管理人さんの名前を初めて知った。
フカガワさんっていうんだ。
*****
そこから年末年始を挟んで1月に日程調整をして、駅近のビルに入っている中華料理屋さんへお昼を食べに行った。
よく知らないお店だったが、店内を見る限り50代以上の方から支持を集めているチェーン店のようだった。
「ビール、飲むか?」
「、いただきます。」
正直ビールは苦手だが、飲めないほどではない。フカガワさんが飲むのに私が飲まない選択肢はなかった。
茶色いビール瓶が届く。
小さなコップに、お互いビールを注ぎ合う。
これから何を話すんだろう。
おっちゃんとは週3くらいで顔を合わせていたけれど、知らないことだらけだ。
「じゃあ乾杯」
「乾杯」
久しぶりに、ぐびっとビールを飲む。
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