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20世紀のリコーダーとモダンチェンバロの事情


リコーダーとチェンバロの組み合わせのことを考えています。
現代は歴史的チェンバロも弾くことが簡単にできます。歴史的チェンバロはリコーダーとの音量のバランスも良く、ぴったりな気がします。さて、過去の作品を弾く時に考えなくてはならないこととして、その曲が想定している楽器のことです。今年の春にレコーディングしたHans Ulrich Staepsのリコーダーとチェンバロの作品が作曲された時代は1950年代から1980年代。ドイツではまさにモダンチェンバロ全盛期であり、そしてヒストリカルに移り変わっていく時代です。今回のレコーディングではシュテープスが主に活動していた時代を考え、モダンチェンバロを使用することになりました。

さて、20世紀初頭、モダンチェンバロの製造会社が続々現れました。エラール、プレイエル(1888年)、ノイペルト(1906年)、メンドラ・シュラム(1907年)、アンマー(1927年)、ヴィットマイヤー(1929年)、シュペアハーケ(1948年)等。
特にドイツでは大量のモダンチェンバロを生産していました。
アンマーはイゾルデ・アールグリムが1936年製アンマーのペダル・チェンバロを愛用し、ヘルムート・ヴァルヒャも弾いていました。録音を行っています。



ノイペルトを愛用したのはカール・リヒターです。

今年の春にレコーディングしたHans Ulrich Staepsのリコーダーとチェンバロの作品について考えています。

Hans Ulrich Staeps(1909–1988)はどのチェンバロを想定していたのでしょう?
ハンス・ウルリッヒ・シュテープスはドイツの作曲家、音楽教授、プロのリコーダー奏者でした。 シュテープスはドルトムントに生まれ、1940年から1975年までウィーン音楽院の教授を務めました。 彼はリコーダー作品の多作な作曲家であり、30 年間で 20 以上のリコーダー用の作品を書きました。 これらの作品の多くは、2 台から 6 台のリコーダーによるリコーダーアンサンブルのための作品であり、ピアノ、チェンバロ、またはギターの伴奏が伴う場合もあります。 リコーダー奏者に関する教訓的な本を執筆しました 。

ウィーン音楽院の教授であった1940年から1975年の間、特にドイツのチェンバロメーカーが1920年代から1940年代に創設され、モダンチェンバロが盛んに製造されていました。
そのため多く使用されていました。
ウィーン音楽院といえば、イゾルデ・アールグリムは、(1945 年から1958年まで)と(1969年から1984年まで)ウィーン アカデミー の教授でした。 (1958年から1962年まで)はにザルツブルクのモーツァルテウム大学の教授でした。旺盛な演奏活動や録音でものすごい仕事量をこなしたチェンバロリストです。
というわけでSteepsとAhlgrimmは同じ時期にウィーンで教鞭を執り、活動をしていたわけです。



Steepsの作品には楽器の指定はなくチェンバロ、ピアノ、どちらでも可能な作品です。ピアノ譜の強弱や表現指示は書かれているものもあります。
私の知っている3つの作品については

Fantasia con Echo (1974)
J.van Eyckのメロディーに基づく「エコーのアルファンタジー」
序文で{Flautario}シリーズは伝統的な作品だけではなく現代の作品も含まれます。演奏者と聴衆の興味と喜びは慣習的な伝統を超えたアイデアや概念の出会いから生まれるト信じている。
このシリーズはソリストとアンサンブル両方のリコーダー奏者を刺激し、音楽の視野を広げるというニーズを満たすことを望んでいる。歴史的伝統だけに専念する小さな限られたサークルの限界を超えてリコーダー奏者の世界がその時代から生まれる楽しみと広く受け入れられることが出来るでしょう。(序文 Hans Ulrich Staeps)

Sonate im alten Stil für eine Blockflöte in C oder F Continuo(1956)
序文で様々な楽器編成が可能であること、特に学校での演奏などで小規模な作品として演奏する場合の組み合わせも書かれている。


インテルメッツォ(1993)
Michala Petriに献呈
記号なし
Hanne Petriのチェンバロで録音されています。おそらくヒストリカルチェンバロです。


20世紀におけるリコーダーの演奏を考えるとき、活躍した演奏家の中でハンス=マルティン・リンデ(1930年~)はモダンチェンバロ奏者(ノイペルト・ハープシコード・バッハと思われる)であったカール・リヒターと多く協演しています。1972年にリンデ・コンソートを結成しています。


デヴィッド・マンロウ、ハンス・マリア・クイナスらのコンソートのように1967年以降の演奏者はピリオド楽器を使用し、早くからより18世紀音楽を具現化しようとしました。
他にもフランス・ブリュッヘン(1934~2014)、ワルター・ファン ハウヴェ(1948~)、ケース・ブッケ(1950~)、ミカラ・ペトリ(1958~)らが活躍しました。










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