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アジア人が日々の生活の中で、黒人に対する差別を内在化させている30+の行動

<はじめに>
今アメリカをはじめ、世界各地でBlackLivesMatterの運動が広まっています。先週に続き、東京でも明日(14日)平和的デモ行進が開催されます。私もこの運動に賛同するとともに、もっと知りたいと感じ、いろいろと調べてみました。その中で、Michelle Kimさんが書いた2つの記事が自分(アジア人)にとってすごく共感する部分と、勉強になると感じました。日本語を主な言語とする方々にもぜひ読んで欲しいと思い、Michelleさんに翻訳・掲載する許可をいただきました。

この記事はアメリカにいる人が主なターゲットとなっているため、少し日本と違う部分もあったり、日本ではなかなか聞いたことのない言葉や概念も出てきます。そして著者がリンク付けされているリソースはすべて英語になっています。そのため、少し補足を入れさせていただきました。(手伝ってくれた櫻井と緑さん、本当にありがとう。)私もまだまだ勉強不足で知らないこともたくさんありますが、こういった記事をきっかけにどんどん調べて、知って、行動につなげていこうと思っています。

<ここから先はMichelleさんの記事を訳したものになります。>
下記より原文もご覧になることができます。

この記事は「アジア人ができる、黒人コミュニティーへの連帯を示すための20+のアクション」(英語リンクはこちら)の後続記事です。

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1960年代からのポスター。Yellow Peril Supports Black Power(黄禍論はブラックパワーを応援します)

Amy Cooper氏や Tou Thao氏の事件と、我々の日常の行動を関連づけることで学べることがあります。これらの事件を、「人種差別主義者」が行った単独の事件として流してしまうことは簡単ですが、単純に個人による人種差別ではないということです。我々も共犯者と言えるのです。

黒人に対する差別的行動を、多くの人が日々の生活の中で固定化させています。黒人に対する差別を終わらすためには、まず自分や周囲の人びとの日常や、職場、交流の場やネット上において、差別意識がどのように現れるかを認識するところから始まります。

私は、DEI (Diversity多様性, Equity公平性, Inclusionインクルージョン・包含)に関する仕事を通して、私たちのどのような行動が、互いにとって抑圧的なものになってしまうのか、具体的に提示することの意義に気づきました。

この文章は全ての人のために書くのであって、アジア人代表として話しているわけではないと念押ししておきます。

1.黒人を警察に通報する行為。通報することによって状況は悪化し、黒人の方々にとっては命の危機を意味する可能性もあります。それにも関わらず、脅威を感じた瞬間(多くの場合、全く脅威とは言えない状況であるが)に、アジア人がこのような抑圧的行動を取る姿を、何度も見たことがあります。警察を呼んだ経験がある方は、振り返ってみてください。実際、警察は役立ちましたか?役立った場合は、何がどう役立ちましたか?警察がいれば安心・安全だと思いこみ、警察を呼んでしまいがちですが、必ずしも安心・安全とは限りません。

2.店内で買い物をする黒人のお客さんに対して、店主が勝手に怪しいと判断し、後を追跡する類の監視行為。黒人を見た瞬間、「怖がる」行為。

3.黒人の方々のストーリーや苦しみを信じず、現実認識を狂わせる行為。「気にしすぎじゃない?」や「すべてが人種の問題ではないんじゃない」といった、所謂「ガスライティング*」行為。差別を受けてきた他のマイノリティが、自らガスライティング行為をすることは、より打撃が大きいです。

*Gaslighting:一人をターゲットにして誤った情報を与え、思考や正気を失わせるような嫌がらせ
(オンライン辞書・事典検索サイトのJapanKnowledgeに収録されている「現代用語の基礎知識 2019」より)

4.濃い肌より薄い肌を好み、「美白」商品を使用し、推奨する行為。カラーリズム(肌の濃淡による差別)は、昔から世界各地のアジア文化に存在しています。このカラーリズムという負の効果は、多くのアジアのコミュニティー内で顕著に見られます。アジア地域における薄い肌への嗜好は、社会経済的地位の格差(例えば、農家は肌の色が濃く、富裕層は肌が薄い)から由来するものかもしれません。しかし、現代でもこの考え方(裕福で教育を受けている人=薄い肌の色、貧しくて教育を受けてない人=濃い肌の色)が、どのように我々の中で潜在意識として残り、行動や考え方に影響しているか振り返る必要があります。

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5.AAVE(黒人英語)、Blaccent*など、黒人コミュニティーによって作られた黒人コミュニティーのための言葉・用語を使用する行為。―これに対して、混乱を招くことは分かっています。でもAkwafinaさんの行為に対して些か怒っていますし、私たちも時々「デジタル・ブラックフェイス」(黒人のステレオタイプを描写するGIF画像を使用すること)を通じて同様の行為をしてしまいます。

*Blaccent:ブラックxアクセント。黒人の人々の喋り方のこと。

6.美術、音楽、ファッション、髪型、化粧等による文化の盗用(Cultural appropriation)。グーグルで「Asian Rappers(アジア人ラッパー)」を検索してみてください―悲鳴をあげてしまいます。でも、アジア人のヒップ・ホップ・ファンを怒らせてしまう前に、説明させてください。私は、黒人以外の人は絶対にどんな状況においても、ラップをしてはいけないとは思いません。(しかし、そう思っている人もいて、その人に対して特に反論しませんが)私が言いたいのは、多くのアジア人はラップという音楽だけを使用し、実際の歴史や成り立ちの背景を理解したり、敬意を表したりしないことが問題です。他のコミュニティーの文化に敬意を表さず、そのコミュニティーに連帯を示す生き方をせずに、その文化を自分の利益や娯楽のために用いたとき、文化の盗用が起きます。黒人以外の方で、ドレッドヘアにしようと思っている人はぜひこのMichael Harriotさんの発言を読み、考えてみてください。「この髪型には意味があることを伝えたい。私の伝統のすべて、毛包までをはぎ取ろうとする社会の中で、ドレッドとは、反発する方法の一種です。自分をエンパワーする小さな方法です。一部の人にとっては宗教的体験とも言えます。でも、見た目が可愛いからという理由だけで文化を盗用し、私たちの伝統を軽視することは、優遇されてきた人の象徴であることを伝えたいです。」そして、ドレッドという言葉の歴史について解説する記事も、ぜひ呼んでみてくださいー記事を紹介してくれたジェニー、ありがとう。

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絶対にやめましょう。

7.偽りの物語や、モデルマイノリティの概念に基づく「尊敬すべき」政治行動(respectability politics*)。「彼らは日頃の行いが悪いから」、「犯罪を犯すべきでなかった」、「アジア人は一生懸命働いて地位を築いてきた」

*Respectability politics:偏見や差別に晒される人が、自己の属性を否定し、「尊敬できる人」や「エリート」がやっているような振る舞いをしているマイノリティを持ち上げ、そうでないマイノリティと区別して称賛する行為。マジョリティ側に立ち、偏見や差別を再生産することで、それから遠くにいる自分というイメージを作っていくこと。一方で、「Respectability politics」はマジョリティが選んだ社会的価値に屈してしまっているとか、自分の文化や人々に対しての尊厳にはつながらないという批判もある。この文章では、後者のように批判的な意味として使用されている。

8.白人を真似することで、彼らに同化できると信じこむ行為。Andrew Yang氏みたいなことはしないでください。彼は間違っています。

9.黒人を含む差別を受けてきたコミュニティーが公平な状況下での生活を求めたことによって作られてきた「社会正義」に関する用語を、都合のいい解釈で使用する行為。例えば、「アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)は、アジア人に対する人種差別だ。」←この発言は誤っているし、このような発言をしているアジア人には、その誤りを指摘していきましょう。

10.黒人コミュニティー主導、または共に行ってきた様々な社会正義運動によって、我々アジア人も恩恵を受けてきたことを忘れる行為。

11.意識的または無意識的に、見た目が自分に似ている友人だけに仕事を紹介する行為。

12.黒人の方々が暴行を経験したとき(残念ながらほぼ毎日)に、沈黙する行為。厄介者扱いされることを恐れてSNSに何も投稿しない行為。いろいろ言い訳はあるかもしれませんが、沈黙=暗黙の承認です。

13.黒人の一部が、アジア人に対して、なぜ怒っているかを理解しない行為。実際、黒人コミュニティー内でアジア人に対する不信感、皮肉や偏見は存在します。そして、アジア人はそれに傷つけられています。そうです、ときには暴力も経験しますが、黒人とアジア人のコミュニティーの間に存在する複雑な関係性と、その歴史について学び、両者間で存在する怒りと苛立ちを理解し、ソリダリティーを強めるために、協力関係を築き上げましょう。身構えないでください。多くの黒人はアジア人の味方であり、私たちのためにも戦い続けています。

14.「黒人は恋愛対象外なんだ」←「みんな好みがあるじゃん」という言い訳は、黒人に対して差別的価値観を持っているということになります。

15.「黒人だけが恋愛対象なんだ」←黒人をフェティッシズムの対象にしている人は、自分の行動を深くふり返ることが必要です。

16.Nワード(*参考:日本語リンク)を使用する行為。マジでやめましょう。「でも黒人の友達いるし」、「黒人の友達が使って良いって言ってたもん」とか、そんなことはどうでもいいのです。そして一人の人が一つのコミュニティーを代表して意見することはできません。こういう考え方は、表面上の差別撤廃で、私たちはもっと上を目指さなければいけません 。

17.黒人アーティストの音楽を楽しみながら、社会正義に関して全く考えない行為。

18.黒人が多く住む居住区を避けたり、その場所に「怪しい」、「ゲットー」、「疑わしい」というレッテルをはる行為。「優れた学区域」(good school districts)を探す行為は、エリート大学への進学を希望する裕福な白人や東アジア人が多いことを意味しています。

19.リーダー、指導者としての地位におかれている黒人がなぜこんなに少ないか、その構造的理由を理解せずに、偽りの理由を信じる行為。(例えば「パイプライン問題(そもそも、その分野・団体に黒人があまりいないという言い訳)」や「選考基準は下げられないから」、「一番優秀な人が選ばれるから」など)

20.白人至上主義者のアジア人に対する抑圧行為を、そっくりそのままアジア人が黒人に行っていることを理解しない行為。抑圧する側(白人至上主義者)にとって、マイノリティ・人種間での衝突は都合が良いという、この思惑通りの行動を取ってしまうこと。

21.家族のそばに居たいから移民権を大切にする一方で、黒人の大量投獄によって多くの家族がバラバラに暮らしている事実に対して無関心である行為。

22.白人のお客さん、クライアント、利用者等をすごく大切にする一方で、黒人のお客さん、クライアント、利用者には異なる態度をとる行為。

23.「私は色なんて見てないから(人の肌の色とか全然私にとって関係ないから)」と言う発言。オーマイガ、今すぐ黙れ。(この言葉がなぜ人を傷つけるかわからない人は、これを読んでください)

24.黒人との連帯より、白人からの承認を大切にする行為。白人による人種差別的発言や、マイクロアグレッション(無自覚な差別行為)を見逃す行為。その場に(差別対象となった)黒人がいても、いなくても、指摘するべし。

25.連帯や運動のパワーを見せるために、集会やデモに多くの人の参加が求められているのに、行かない・参加しない行為。

26.個人の経済的・金銭的成功で自由は獲得できると信じ込み、*私たち*のコミュニティーを汚し続けている構造的格差を否定する行為。

27.親、家族、友達による、黒人に対する差別的発言や行動を見逃す行為。家族との関係を保ちたい気持ちはわかりますし、多くのアジア人家庭では家族をとても大切にすることも知っています。でも差別的発言を見逃さないため、Kim Tranさんが作ったこのガイドを参考にして、挑戦してみてください。

28.読み物、学びの対象、参考にする発言が、非黒人の学者や演説家、作家ばかりである行為。主に白人で構成されている団体の研究結果、論文しか使用しない行為。

29.#BlackLivesMatterなどのハッシュタグを使用して、連帯アピールをする一方で、変化をもたらすための行動を何も起こさない行為。

30.日常生活の中で、黒人を取り締まろうとする行為。黒人の方々は職場で他の人に比べ過剰に監視されている。過剰に罰する行為(これを「スクール・ツー・プリズン・パイプライン(学校から監獄へのパイプライン)」という)トーンポリシング(トーン・口調を取り締まる)行為(例:「そういう攻撃的な言い方をやめた方がいいよ」)

31.「正しい」英語があると信じ込み、それを重要視しようとする行為。同時に白人・欧州白人(White-European)が中心となる喋り方や書き方に当てはまらない場合、知的でないと判断する行為。実は、この考え方によって私たちアジア人も傷つけられるのはわかりますよね?

32.ブラックアジアン(黒人系、アジア系の両方にルーツを持つ人々)の存在を忘れる行為。

他にも思いつくものはありますか?コメントを投稿して、互いに学び合いましょう!どうアクションをとればいいかわからないですか?「アジア人ができる、黒人コミュニティーへの連帯を示すための20+のアクション」という記事を読んでください。

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Awakenとは
思いやりを持てる場を作り、その中で普段なかなかできない対話を通して、包含的なリーダーやチームの育成を行っています。多様性やインクルージョンに関する表面的な話し合いには、もう辟易しています―もっと深い話し合いましょう。人と人が顔を合わせ、本質的な対話をする時がきました。行っているプログラム(対面型、オンライン型のワークショップ)の詳細は www.visionawaken.comをご参照ください!

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