書籍レビュー『フジテレビはなぜ凋落したのか』
お久しぶりになってしまった。
不覚にも挨拶で書いていた「悪い癖」が見事に復活していました…(笑)
習慣ってのはなかなか治らないですね…。
復帰戦1発目は書籍レビューを!
ずっと読みたいと思っていた本が
なんと会社にあったため、失敬して読むことができ、
今回はそのレビューをさせてください。
書名はタイトルにある通り、『フジテレビはなぜ凋落したのか』というセンセーショナルなもの。
逆説的なタイトルで客の目を引く戦略は
文芸界隈ではよくあることだそうですが、
この本はとりわけ挑戦的というか、挑発的だなと…。
この本を書いた人はきっとフジテレビに恨みでもあるんだろうと思っていたのですが実態は真逆でした。
書かれていたのは元フジテレビ社員の30年にわたる会社の「成功と失敗の歴史」でした。
そして視聴率三冠王にまで登り詰めたフジテレビが民放最下位にまで転落してしまった悲痛な現実と、
どうにかしてそこから這い上がってほしいという作者の悲願でした。
例えるなら「ヒーローの復活の儀式」。
ストーリーの中盤で瀕死になってしまったヒーローが人々の願いで復活する、というあの展開をご想像いただければと思います。
しかし私はというと、この本を読んでとても切なくなりました。
この本にはバブル期にかけて一気に盛り上がったフジテレビが斜陽の主人公となっていく様子が克明に書かれており私にとってはレクイエムのようでした。
私がまだ小さかったとき、
リビングにあったテレビはいつも「8チャンネル」固定でした。
フジテレビのコンテンツを見ると何となくワクワクして
根拠もなく明日もきっといい日だろう!なんて思えたりしたものでしたが。
あの頃の感動や興奮を思い返すといたたまれない感傷が胸に押し寄せました。
そしてこの本を読んでフジテレビの再起を難しくしている「理由」がはっきりとわかりました。
フジテレビの「楽しくなければテレビじゃない」という社訓や、お茶の間参加型のバラエティー、メディアミックスをふんだんに使ったプロモーションが「バブル経済」という世の中の浮わついた空気感とマッチしたのです。
そしてその化学反応こそが爆発的なテレビブームを作りました。
しかしその化学反応は「時代」を後ろ楯にしたものだったため時代が変化してしまうと途端に尻すぼみしてしまった。
フジテレビがパイオニアとして切り開いてきた新たなテレビの常識に今度はしがみついてしまっているという惨状もそうした時代に翻弄される企業風土ゆえの現象なのだと考えると納得がいきました。
日本テレビは「視聴率至上主義」という世情に流されない「芯」があるがゆえに今も前向きな番組作りができていると言います。
あとは、フジテレビが反日、と非難される理由も興味深かったですね。
私はフジテレビが産経新聞を傘下にしているどちらかというと右寄りのメディアであることを知っていたので、なぜ売国メディアなんて呼ばれているのか不思議で仕方なかったのですがその謎も解けました。
これに関しては私の勉強不足もありました。
色々書いてきましたが、私はフジテレビという会社に愛憎を抱いているのかもしれません。
小さいとき、フジテレビで働くのが夢でした。
キラキラしていて楽しげで、人を笑わせ楽しませることに全力を注いでいるフジテレビ社員のプロ根性は幼心ながら憧憬を抱かずにはいられなかった。
それが今はなんだ?たるんでんじゃないのか?
俺が憧れた会社が簡単に時代に翻弄されるなよ。
そういう怒りを抱かずにはいられないのは手を伸ばしても届かなかった夢への後悔の裏返しであることは言うまでもありません。
だからこそ心のどこかでフジテレビがこの「令和」という時代を牽引するメディアとなり「踊る大捜査線」や「海猿」のような新時代のヒット作を産み出してほしいと願わずにはいられないのです。
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