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21. ハガツオってどんな魚?(魚)

菅寿美(『ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく』訳者)

さらにほぼ一時間南に向かっていたとき、ぼくらはハガツオを発見した。ものすごい数のカモメの群れだ。ぼくらが近づくと、水面が沸騰しているかのように激しく泡立っているのがわかった。その水と泡とが混ざり合ったところから空中へと、小さな銀の魚が、そしてハガツオの鋼の体が跳び出し、カモメが舞っていた。(「ハガツオ」より、p.124)

日本の初夏の味覚のひとつに、初ガツオがある。どの時期が最も美味なカツオであるかはさておき、カツオは魚離れの久しい今日でも、比較的、日本の食卓にしばしば上る魚だろう。では、ハガツオはいかがだろうか?

ハガツオ(palamida)はスズキ目サバ科に分類される。漢字で書くと“歯鰹”であり、口の中にびっしりと歯が生えているのがその所以である。葉っぱの“は”ではない。

ハガツオ

(ハガツオ/菅寿美画)

カツオよりやや小ぶりの、美しい流線形の魚であり、細長い顔が狐に似ていることから、キツネガツオとも呼ばれていたらしい。日本近海では鹿児島県から高知県、和歌山県などの太平洋沿岸部および長崎県五島から山口県、鳥取県や福井県などの日本海沿岸部で水揚げされている。鮮度の落ちるのが非常に早いため、新鮮な状態で刺身を食べる機会はごく貴重であるが、カツオ特有の鉄臭さがなく、非常に美味だという。漁獲最盛期は夏から秋にかけてであるが、最も脂がのるのは冬である。オタがブルガリアで釣り上げたハガツオも、市場で小机の上に広げるや、それが旨いと知っているおかみさんたちにすぐに売りさばけてしまったという。どれだけおいしいのか、とても気になる。

ハガツオは生息数自体が少なく、知名度の低さと鮮度落ちが早いために都市部までなかなか流通してこないらしいが、もしも機会に恵まれれば、味わってみてください。

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