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私的未知の病との戦い

今日のテーマは、ワクチン。今まで散々くだらない情報をツラツラ書き連ねてきた私だが、アフリカを訪れようとする知人からにワクチンに関する質問を受けることがあるので、偶には自分のくだらないことを世の中にばら撒きたい私欲ではなく、世間に有用なことでも書いてみようかと思い立ったところだ。

初渡航までに計9本ものワクチンを接種した。今日はその最初の4本に関してお伝えしようと思う。

私の最初の渡航が決まったのは、世間でデルタ株が猛威を振い始めた2021年の夏。世間は様々な催しが自粛され、世の中はデルタ株の感染力と重症化率の脅威に苛まれる中、私は人知れず10種類以上もの感染症の恐怖と副反応に悶え苦しんでいた。

それは、インターネットで調べた渡航外来を受診したときだった。渡航外来とは、渡航者向けに様々なワクチンを接種してくれる専門外来。診察予約時に持ち物に上げられていた、母子手帳を実家のどこかの引き出しの奥から引っ張り出してその病院を訪れた。注射嫌いではないが、初めて訪れる病院で非常に緊張をしていたのを覚えている。コロナのせいもあってか、がらんと静かな病院はとても不気味で私の緊張を増幅させた。

診察室に通されると、そこには笑顔の優しい先生とフレンドリーそうな看護師さん。それまでの不安な気持ちがすっと和らいで行った。今の私なら、この時の自分にそっと耳打ちしたい。油断は禁物!!! なぜならこの先生、本当はコワイのだ!

私の渡航先と目的を先生はとても楽しそうに聞いてくれ、「そんなとこに行く人、初めてだよ〜!」とテンション高め。「過去に〇〇に行く方は来たことがあるけどね!」ととても愉快そう。

そして私の母子手帳のワクチン摂取履歴に目をやり本題に入るも先生は、さっきと変わらぬ軽快な口調で必要なワクチンをスラスラ…その中でも印象的だった感染症を2つ紹介しよう。

1つ目は、髄膜炎。脳の周りを覆っている髄膜が細菌やウィルスの侵入によって炎症を起こす病気。発症から数日以内に最悪の場合、死に至る感染症。先生は、さらに手元のパソコンで患者さんの様子を見せてくれた。そこには皮下出血を起こし、全身が真っ黒になった患者さんが横たわっていた。

私は目を背けたくなった。いきなり目の前に現れた死という恐怖、目にした全身がどす黒く変色した患者さんというショッキングな画像。引きつった顔をその画面から引き離したいのに、あまりにもショックでパソコン画面に注目し続けていると、先生はさっきと同じ笑顔で、だから打とうね!というような言葉を放った。そんな脅しいらない、なくても注射は怖くないから全然打たれるよ!先生怖い!ヒー!(もし読者の方で髄膜炎の接種を悩まれてる方がいらっしゃるなら、画像検索してください!但し、検索結果に衝撃を受けても一切責任は負いかねます)

その後も先生の感染症の恐怖を煽る→ワクチン接種同意形成戦法は継続された。他にも私の恐怖を煽った感染症は、狂犬病。狂犬病に罹った犬に噛まれることで発症する病気。噛まれた後、すぐに医療機関にかかる必要があり、発症すれば致死率は100%、とにこやかに説明してくださった。

今、現地で農村地域で野良犬が駆け回っている様子は、狼が狩りに出かけるような、一種の死の匂いをまとった風景にしか感じられない。とにかかく噛まれたくないので、お犬様様と敬い怒らせないように道を譲ることに徹している。

他にも先生は、日本脳炎、ポリオ、A型肝炎、B型肝炎など様々な感染症を口にした。先生のこわ〜いお話のおかげで、私は計4本のワクチンを接種することになんの異を唱えるつもりはなかった。なんともインフォームドコンセントを取るのが上手い先生だろうか。

看護師さんに促され、右腕を出すと、ヒョイ、ヒョイと2本、看護師さんに促され回転椅子で体勢を変え左腕を出すとヒョイ、ヒョイ、ともう2本、私に注射針を刺した。1日に4本もワクチンを接種するなんて、この先ないだろう。

恐らく気になっている方も多いその金額。計8万円程お支払いをした気がする。とっても長ーい領収書と一緒に、窓口でWHOが発行する"Intenational Certificate of Vaccination or Prophylaxis"というワクチン接種歴が記載された黄色い冊子を受け取った。先生と看護師さんは、万が一海外で犬に噛まれたり、感染症の疑いで医療機関にかかってもこの履歴書を見せればよいこと。もし何か困ったことがあったら、この病院のlineアカウントから連相談できることを教えて下さった。私は大きな大きな安心感を手に入れた。私は救われたのだ、と実感した瞬間だった。

ちなみにこの日に打ってもらったワクチンは、不活化ワクチンだったので副反応に苦しむことはなかったが、私は未知の世界に足を踏み入れようとしているのだ、と実感した記念すべき最初の日だった。

アフリカや東南アジアなど気候や衛生環境が日本と全く異なる国を訪れる方には、ワクチン接種を是非お勧めしたい。確かに値段はするが、その安心感はpriceless。買えるものはマスターカード、じゃなくてもいいので、買われることをお勧めします。

次回は、翌週に打った生ワクチンと、その副反応についてお伝えしたい。


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