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霊的にはよろしくない場所/48歳バツイチだけど運命の人に出会った【22】

BARを開いた「私」は出会った次の日から「たー君」と付き合い始めました。たー君は会社の従業員が乗っ取りを企み、ストレスで毎日私に当たります。会社は従業員の半分が辞めて大打撃。そして今度は私にもトラブルが。

つきあうようになって一年余り。あまりにつづくトラブルに、元々楽天家の私も次第に不安になってきました。

こんなに悪いことばかりつづくのはなぜなのか?

たー君は毎日、やれ警察だ裁判所だ、と駆けずりまわっていますが「曽我が横領した」という決定的な証拠もなく、どれだけの金額や期間もわからないので起訴は無理、という結果に終わりました。
私も車の事故や違反切符切られたり、となぜか車のトラブルばかり起きます。

実際、たー君から

「お前とつきあうようになってからトラブルばかり起こる」

……と言われたことがあるのです。

そんなことを言われたら、私は泣くしかありません。

私がたー君にとって良くない存在なら……と、一時は本気で別れようかと思っていたくらいです。

それにたー君の体の不調もあります。
アトピー、夜に出るナゾの咳、痛風。そのくせ毎晩酒を飲むし、贅沢な食事が大好き。そりゃ、具合も悪くなるというものです。

痛風は何度か経験してるので、しばらくビールを控えれば大丈夫、と言っていたのに一向に治る気配がありません。
たー君は病院に行って検査してもらいましたが、なぜか検査結果は「痛風ではない」とのこと。

えっ、こんなに毎日痛い痛い、って言ってんのに?
痛くて暴れるほどではないし、仕事はできるのですが、もっと大きな病院に行くことを検討していたくらいの時期でした。

その頃、たまに店に来ていた30代の女性がいました。
名前は和ちゃん、とします。
和ちゃんは最初はだんなさんとその友達夫婦と四人で来店しました。それからしばらくすると、少し年かさの女性と二人で来ました。

「お母さんかな? あまり顔は似てないけど」と、思うくらいの年齢差の二人は、奥の席で長いこと話していました。

すると彼女は、今度は一人で店に来るようになりました。

ウチの店は女性のお客様がけっこう多いのですが、夜の商売やお店で働いている人が多く、普通の仕事の人はグループ客がほとんどでした。
和ちゃんみたいな「いいところの奥さん」風の女性が一人で来るのはめずらしいことです。

彼女は早い時間に一人で来て、家が遠いから飲めないということで、ソフトドリンクとお食事で長い時間居ました。その時はいつも来るお客様も見えなかったので、いろんな話を彼女としました。

彼女は地元ではなく、中部地方の大学で知り合っただんなさんに付いてこっちに来たとのこと。
近くにあるお寺さんで仏像が公開された時に、たまたま私の店の前を通ったのだそうです。彼女は仏教についての造詣が深く、スピリチュアルな話も詳しいのです。

その頃の私は、あまりにもつづくトラブルに「霊的な何か」を疑っていました。
そんな話をしていたら、和ちゃん自身に霊感があることを聞きました。

どうも私の店があるあたりは霊的にはあまりよろしくない場所だということ。
私が店を開いている場所は、昔、遊郭だった町なので女性の怨念が渦巻いていそうです。それに、近くの古いビルには霊がいる、という話はよく聞くし。

第一、私の前の前に店をやっていた人は自殺しているのです。亡くなったのは住居で、店ではないのですが、それを聞いたのは店の営業を始めたばかりの頃で「事故物件かよ……」と暗澹たる気持ちになったものでした。

私の前にやっていた人もあまり評判が良くなく、店の前には枯れた鉢植えがいくつも並び、ノラ猫が何匹も出入りしているような店でした。
店の下見にきた時もゴミが床に散乱していたし、運気的にはあまりよろしくなさそうです。

でも和ちゃんは、

「ミチルさんのお店は大丈夫ですよ。掃除をちゃんとしているし生花を飾っているから。それと壁の絵もいいですね」

……と言ってくれました。

私は地元に帰ってからずっと生け花を習っているのですが、おけいこで使った花材を店に活けているのです。

それと和ちゃんが「良い」と言っていた絵はPierre et Gillesというアーティストのマリア様をイメージした写真で、それを金色の額縁に入れて壁に飾っています。

しかも和ちゃんが以前連れて来た女性は、お母さんではなく和ちゃんの師匠で、霊視ができる方だということ。和ちゃんはその方に付いて、霊能力の修行をしているそうなのです。

それを聞いた私は、

「その人紹介して!!」

……と、藁をも掴む気持ちで、和ちゃんに頼み込みました。

こうして私は霊視鑑定を受けることになったのです。

つづく



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