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サイコパス男の恐るべき企み/48歳バツイチだけど運命の人に出会った【18】

登場人物
私 48歳バツイチ、BAR経営者
たー君 58歳。私の彼氏。運転代行社社長
曽我 47歳 代行の従業員。頭は回るが嘘しか言わない。
原口 42歳 勢いだけのバカ。たー君に殴られる。
川崎 50代 代行の従業員。昔ワルかったけど、根は真面目な人。

曽我の不正は、たびたび仕事中に連絡が取れなくなる、休みの日に「スマイル代行」を名乗って仕事しているのを目撃されるなどから発覚したわけですが、その後決定的な証拠が見つかります。

それは、ほかの従業員からの密告でした。

川崎さんという50代後半のこの人は、わりとやんちゃな人生を送ってはきたものの、根はまじめな人。この人が「曽我がスマイル代行の乗っ取りをたくらんでいる」とたー君に忠告したのです。

川崎さんは、曽我の不正の証拠メールを転送してくれました。

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(略)……利用する為の目的と計画性をもってこのスマイル代行に近づきました。この代行を標的にした理由等々は事前に情報をもらい、リサーチしておりました。まともに営業している他の代行では無理だったのです。私もただいいように利用される気はありませんね。利用されている事を岡崎(たー君の事)はバカだから気付いてないだけです。まぁ気付いた時には、この代行は潰れますがね(笑)当初の計画通り一年間。もうそろそろ準備期間もちょうどよくなりつつありますので、今後もよろしくお願いいたします。
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川崎さんは曽我のたくらみを見抜き、協力するフリして情報を得ていた、とのこと。そして彼の最終目的が分かりました。
曽我は会社の金を横領し、それを元手に自分の会社を立ち上げようというのです。

曽我は代行料金を水増しし客に請求、差額分を「チップ」と称して懐に入れていた。それを自分のみならず、ほかの従業員にも指示していたらしい。つまりは従業員全員が横領しているということになります。

そして、曽我は売上のみならず客も盗もうとしていました。
その手口は、おそるべきものです。

よくスマイルを使ってくれる居酒屋があります。
そこは、たー君のお兄さんである阿彦さんを気に入っていて、よく指名で呼んでくれてました。ところが、曽我は休みの日にその居酒屋に行き阿彦さんの話をしたのです。

阿彦さんは表面的には穏やかで紳士に見えます。たー君がちょい悪オヤジなのに対し、阿彦さんは「上品な高田純二」みたいなルックス。酒癖が少し悪いけど、声を荒げたりするような人ではありません。ところが曽我は、居酒屋大口(仮名)のマスターと女将さんに向かい、

「阿彦はそんないい人間じゃない。だいいち運転が荒くて何度も事故を起こしている」

などと嘘八百並べました。

そして「阿彦は俺の父親が会社をつぶしたことを嘲笑った。俺はアイツだけは許さない」などと、涙ながらに語った、というのです。

それからイケイケの阿部は手癖が悪い、などとほかの従業員の悪口も吹きこみました。そして最後に、

「スマイルに電話すると阿彦や阿部が来る。俺に直接電話くれれば、俺が運転するから」

……と、お客様から直接電話を取るようになったのです。これをあちこちでやっていた。

それから私とたー君が旅行して、ホテルのレストランで食事してたとき、曽我から電話がかかってきた件。あれもカラクリがわかりました。

電話したとき、曽我の隣にはほかの従業員が居たんです。そして、曽我はこういうようなことを言ったはず。
「岡崎は金にだらしない。俺が貸した金も返さない。今日は給料日だっていうのに払わないだろ?」

携帯の液晶画面を見せて、たー君に電話していることを確認させたうえで、「金払え!」などと怒鳴ったというわけです。

たー君は何のことかワケがわからず「酔っぱらってるんだろう」としか思っていなかったのですが、曽我はこんなことも言っていたかもしれません。

「岡崎は給料を払わない。俺は何度も滞納されている。お前の給料もそのうち払わなくなるだろう。こんな代行はすぐにつぶれるから、お前、俺の起ち上げた会社に入れ」

……こんなところですかね。

川崎さんにもそう言い、金があることを吹聴していたらしいですが、それなら貸してくれ、と川崎さんが言ったにも応じず、逆に貸してくれ、と言ったことを不審に思ったそうです。

そして曽我はたー君にアバラ折られた原口と、電話取りをしていた晴彦と成明、もう一人坂田という年配の男性を連れて会社を出て行きました。

その坂田という人は、いつも仕事が終わると、自分が乗っていた業務用車におしっこをひっかけてから帰る、という人でしたが、その行為からして、この坂田も曽我から何か吹きこまれているにちがいないのです。

多分「岡崎がお前のことを悪く言ってたぞ」などという言葉を真に受けたんでしょう。原口と坂田、どちらも単純な性格です。
原口がたー君のことを「バカだ」と言っていたのも、曽我の嘘を真に受けているにちがいありません。晴彦と成明は、性格的に憶病なタイプなので、何かで脅されて、渋々ついていったようです。

晴彦と成明は辞める前に売り上げを横領していたことを認め、だいたいの金額を返しました。晴彦に至っては六十万相当も盗んだらしく、それを分割で返すという話し合いができています。まだ会社に残っている従業員も「曽我の指示で盗んだ」ことを証言し、お金を返しています。

ところが一番の黒幕曽我と腰ぎんちゃく原口は認めません。警察にメールの内容や、従業員の念書などを見せて被害を訴えたものの、横領したという証拠にはなりません。

曽我は別件でもなにかやっているらしく、名前を出しただけで「ああ……」という反応でしたが、

「限りなく黒に近いグレーですね」

と、言われたきり、それ以上の進展はありませんでした。

つづく




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