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尖ってもカタツムリ

常々、非鉄金属スクラップ並びに、その周辺に係る地政学上の蘊蓄(うんちく)を発信しております。みちるリソースと申します。

本日(8月3日)、本家ブログにて、『“サーキュラー・エコノミー”は、もはやバズワードではない。その〇の理由』という記事を出しました。マニアックなハナシは、こちらをご笑覧いただければと思います。


本稿では、残念なことに、金属の「き」の字も出てきません。その代わり、「反骨精神」や「デザイン」について言及してみます。

まずは、四の五の言わず、ロバート・キャンベル先生の『キャンベルの四の五のYOUチャンネル』をご覧ください。

登場する、ANREALAGE 森永デザイナーの世界観もさることながら、キャンベル先生の日本語が美しい。思慮深く、機微を感じながら、非常に繊細なコトバ選びをされるわけです。


相手との距離感を推し量り、真意を汲もうと全身全霊で“勝負”されている姿に心を打たれます。常日頃、筆者自身、他者とのコミュニケーションにおいて、ここまで真摯な受け答えができているのだろうか。あの人の考えを、どこまで理解できているのだろうか。そのように考えてしまいます。

このビデオを観終わると、Youtube から他のビデオも観てみないかとお誘いをいただきます。それは、コムデギャルソンの川久保デザイナーのインタビューです。


彼女は、こう言います。(意訳)

反骨精神。みんなが調子悪いんだから、『少しぐらい休んでもいい』という考えは、あまりにも危険。こういうときだからこそ、なにか新しいことに向かって前進すべきだ」と。

まさに、「クリエイティブである」ということは、逆境を跳ね除け、発想の転換から、新たな感性を生むことなのかもしれない。


「悪い状況に慣れてしまい、『こんなもんかな』と高を括った時点で終わり。この負のエネルギーをぶちまけてでも、自分なりのベストを尽くして、己の糧とすること。」

今、世間は五輪のメダルの輝きに夢中になっています。あと数日もすれば、この煌めきも、思い出の片隅に追いやられ、おぞましい現実と向き合う羽目になると思います。


オリンピック開催の是非を問うことが良かったのか。そこに意味はあったのか。開催して良かったのか。開催をなんとしてでも止めることができなかった我々に、ポスト・オリンピックのあるべき姿を論じる資格はあるのだろうか。

こうなる」と心の奥底でわかりながらも、結局、「こうなってしまう」まで傍観していた自分。なにか、世界を変えるだけの衝撃を生み出せたろうか。いや、そもそも、自分みたいな《ちっぽけな存在》に、そのような使命は与えられていたのであろうか。

誰が、そのような使命を与えるのだろうか。

誰が、そのような舞台装置をデザインしたのだろうか。


件の病原体だけに限らず、世界は未曾有の災害に呑み込まれ、混沌としています。それによって、今まで、《当たり前》だと思っていたこと、「ないことがなかった存在」が実際になくなってしまう事態に陥ってしまいました。

非常に漠然とした表現で恐縮ですが、「こわい」ですよね。

先も見えず、なにも信じられず、「こわい」けれど、我々は、前に向かわねばならないのです。ないなら、無いなりに、新しい仕組みなり、骨組みをつくって、社会を潤滑に機能させなければならないわけです。

時には、《テーゼ》に抗うことのできるだけの器量と、才覚を携え、ぴりぴりとしながらも、まっすぐ生きてゆかないといけない時期もあるのでしょう。


上記、キャンベル先生の動画内に生駒芳子さんというジャーナリストが、冒頭、登場されています。

生駒さんは、重ね重ね、「スローダウン」と仰います。

かつて、「ふてぶてしく丁寧に生きること」を良しとした、スローライフというコトバが流行りました。「あたしには、腐るほど時間があるから、ゆっくり丁寧に生きてやるのさ」といったスノビッシュな世界です。

しかしながら、《今》の文脈における《スロー》は、全くもって別の意味を付与されていることに気づきます。

誰もが、太く長い生涯を全うできるのか否か、「生きるか死ぬか」ということに対して、わずかでも懐疑的にならざるを得ない状況に置かれています。

つまり、《今》は、有限であることが大前提となります。その限られた《》の中で、人生を謳歌するためには、ギアを一段下げて、ゆっくり確実に生きる必要に迫られるわけです。

生き急いだからといって、他者の2倍も3倍も良い思いを享受できるとは限りません。むしろ、急いだがゆえに、とうんでもない茨の道を突き進むことになることも十分に考えられます。

もしかしたら、速度でいうところの《スロー》だけでなく、地に足の着いた《ダウン》な状態も大切かもしれません。

スローダウン》できているか。焦っていないか。停滞していないか。

常々、確認してゆきたいと思います。

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