メーカーになってやる!/自立編②
(続き)
展示会場にて。
その方(Aさん)は、我々の商品を少し離れたところからじっと見ていました。
すずき「近くでご覧になりませんか?」
Aさん「・・・」
すずき「これは水に浮いている油を回収する装置です。」
Aさん「・・・分かりました、ありがとうございます。」
全く手ごたえがないまま、Aさんはブースを去っていきました。
何度も繰り返されている光景とはいえ、悲しい気持ちを振り払いながら次のお客様を待ち続けます。
しばらくすると、Aさんが戻ってきました。
Aさん「あの、これって我々のお客さんに販売させてもらってもいいですか?」
すずき「えっ?」
Aさん「前に浮上油の回収に困っているって話がお客さんからあったので。」
すずき「あ、もちろん大丈夫です!」
Aさん「では、見積もりをもらえますか?」
と言って名刺を頂きました。
驚きました。
まさか我々の商品を売りたいという会社がいるなんて。
その時は販売価格しか決めておらず、仕切り価格や卸し価格などと言ったことは全く知らない状況でした。
自分たち以外の人に売ってもらうことの大変さをまだ知る由もなく、
ただ何か大きな一歩が踏み出される予感がしていました。
とはいえ、まだ何も成果が出ていない状況には変わりがありません。
残りの期間を必死で宣伝し、いくつかのデモ依頼と共に最低限の成果を得て展示会は閉会しました。
展示会が終わってすぐに社内で検討し、Aさんにお礼と共に見積もりを提出しました。
説明はどこへでも行きます!とテンション上げてメールしました。
我々にあまり期待させたくなかったのか、低めのテンションで返信があり、お客様に提案してきます、という内容が書かれてありました。
それから3か月。
Aさんからは音沙汰なしでした。
もはや私はAさんへの見積りのことは忘れかけていました。
誰も知らない中小メーカーの商品です。
買う方にとってはリスクしかありません。
でも、ちゃんと実物で説明して効果を実感してもらえば1台づつでも売れていくはず。
そう思って頑張っていました。
連絡は急でした。
Aさん「ご無沙汰してます、以前見積もり頂いたAですが・・・」
すずき「あ!、ご無沙汰しております。その後進捗は如何でしょうか。。。」
Aさん「はい。お客さんの反応はとてもいいです。10台買いたいとおっしゃっています。詳細を詰めたいのでお客さん打ち合わせに同行してもらえますか?
すずき「え??? 10台ですか?」
Aさん「難しいですか?」
すずき「いえ!とんでもないです!ただ驚いてしまって・・・。ぜひ同行させてください!」
半信半疑でした。
一度に10台買うメリットが思いつきません。
正直、本当に販売していいものなのか悩んだくらいです。
普通は1台テストして、他社製も調べて、価格交渉があってようやく1台買って頂けるものです。
なのに、いきなり10台。
しかもお客様は東証1部上場の誰もが知っている、CMも流れている大手企業でした。
我々では接触する事すら不可能な相手。
ましてや自社商品を導入して頂けるかもしれない機会が訪れるなんて。。。
でもここでふと思いました。
お客様がどこにいるのか?
自分に見つけ出すことってできるのだろうか・・・
今回の引き合いについて、ちゃんと考察する必要を感じました。(続く)
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