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壁画を見ちゃったのよ!

何かやってるけど、なんだろう?

赤かめバスに乗って高松塚古墳にやってきたら、バス停の向こうに白いテントが建ててあり、なにかをやっている。なんだ?

こんな企画があったのかー。勉強不足ですみません。

え。壁画の本物が見学できるの?
「事前申込制ですが、申し込みがなくて空いてるコマなら見学できますよ」テントに座っていた受付の人が教えてくれる。
で、どのコマが空いていたかというと14時の回。そこなら1人分空きがあるという。
ううう。今、11時半やし、かなりあるなあ…。
しかし!ここで見ないなら、いつ見るんだ!
千載一遇のチャンスじゃないか!

…ということで14時まで待機。
その間に、壁画館を見学しました。

壁画館。小さいですが、じっくり壁画を味わえます
文字が昔といっしょ

なつかしい…。この文字に見覚えが…涙。
むかし、このあたりは雨は降ると、ぬかるみになってねえ…と感慨にふけりつつ、さっそく中へ。

壁画館は撮影OKです。

おおおおー。人物の配置、ふっくらした頬、腕に沿った袖のしわの加減、プリーツスカート(違うか…)のくっきりとした色の取り合わせ、7世紀にしてこれだけの描写というのは素敵すぎる。
昔は考えたことがなかったけれど、今、「これを描いてください」と言われても私には描けない。大半の人は描けないんじゃないか。そう思うと、バランスよく収まりつつ動きのある構図、表情や衣装の繊細な表現は、やっぱり素晴らしい。しかもあの時代に。

穏やかです

壁画館を出て、現在の高松塚古墳をぐるっと一周する。
まあ、きれいに養生してもらって…と眺めつつ、美しく整備されすぎて「なんか違う」感が漂う。まあ、30年ぶりなんだしね。

さて、いよいよ壁画の見学。
①集合し、部屋に入って、「高松塚古墳の発見と保存、修復作業のこれまで」といった10分程度の動画を視聴
②修復作業室に移動、「文化庁」の札?を下げたおじさんの監視のもと、10分間壁画を見学
という流れである。

集合も移動も超厳重だ。毎度毎度人数を数えられるが、実は参加者は8人しかいない。ほんの100m足らずの移動にも引率スタッフがつき、修復作業室のある建物の前で「14時の回、8人です」「了解しました!」と引き継ぎがあり、建物前と建物内でまた引き継ぎがあり…そのうち、見学者も緊張して2列縦隊で行進でもするように歩いた(笑)。なにをそんなに、警戒する? いや、大切な国宝だから当然か。

修復作業室では、二つの女子群像と、天井の星宿、玄武が私たちを待っていた。玄武は薄くて見づらい。借りたオペラグラスを通して線をたどっていく。星宿は星を示す金箔と、星をつなぐ赤い、細い線が見える。金と赤の対照が美しい。埋葬された人物は、星を見ながら眠りについていたのだろう。

いちばん奥に置かれた女性像は、壁画館で感じた以上に素晴らしかった。女性らしいふくよかさが線画でよくわかるし、「たおやか」とはこのことかと思う。壁画館で「予習」してきたので、本物だ!と思うと胸が躍る。1500年近くひっそりと眠っていた壁画をこうして目にできるのってほんとに幸せ。

館内にいた文化庁のおじさんに、「さきほどの動画で紹介されていた修復作業の経過について詳しく知りたいのですが、なにか本はありますか?」と聞いたところ、「あー。あのう。飛鳥駅前の観光案内所の本屋とかにあるんじゃないですかねえ」とのお答え。動画まで作ってるのに、活字にはしてないのか…。

なにはともあれ、壁画の感動を胸に、30年ぶりの飛鳥をあとにした。
土曜日の早い時間にホテルを出たこともあり、比較的すいていて、よい旅だった。

※タイトル上の写真は、見学待ちの時間つぶしにやってみた「ベンガラ染め」体験。慎重にやりすぎてほとんど色が入らず、お洗濯したらすべてが消えてしまった。なんてこと!


<追記>
帰宅後、大脇和明『白虎消失 高松塚壁画劣化の真相』(新泉社)を読む。「きれいに整備されすぎ」の高松塚古墳とその壁画に何が起きていたのか、読みつつ、胸が痛んだ。壁画、文化財保護には時代の制約もあり、どこかに・だれかに責任を問えるものではない。しかし、「偉い人がいっぱい集まってもちゃもちゃっと会議をやって、なんとなくこうなったのね」という感は否めず。今後は壁画が大切に保護されるよう祈るばかり。

いろんな意味で興味深いです





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