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インドという国の因果~ホテル・ムンバイ

2008年、ムンバイの同時多発テロを描いた『ホテル・ムンバイ』。このテロ以降、ムンバイは日本人の少ない街となったというが、ここまで凄惨なものだったのか。
今でもパキスタンとインドの間では緊張が続くが、インド社会に横たわるイスラム教との根深い対立の、現代のひとつの象徴なのだろう。 映画は、顧客を守るホテルマンを軸に展開するが、自動小銃を手に迫り来る恐怖の下で、スタッフの間、スタッフと顧客、顧客間の小さな心の隙間も描かれる。宗教、家族、差別、不信間。「団結を」とシェフは呼び掛けるが、狂暴なまでの恐怖と緊張の中、個々の思いは錯綜する。自分が当事者ならどうしたか。そんな思いを否応にも抱かせる臨場感に息が詰まる。
一方、離れた場所にいるボスに操られながら、神のために暴走する実行犯も人間臭い。パキスタンの関与の有無など、この事件の背景や首謀者には、未だ諸説あるようだ。許しがたいテロに勇敢に抗したホテルマンたちの物語、とすっきり腹に落ちないのは、民族や宗教、貧困や格差という複雑な問題に自分として理解があまりに乏しいからだ、とも思う。
伸びゆく巨象インドのひとつの側面でもあり、テロはそこにある脅威と改めて感じる一本。

The film, "HOTEL MUMBAI," was released in Tokyo today. It describes "Mumbai Attacks," which were a series of terrorist attacks that took place in November 2008. At least 174 people died, including nine attackers, and more than 300 were wounded. The film depicts not only the fear of terrorist attack but also the complexed Indian society.