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先日、朝起きたら突然聞こえが悪くなって耳鼻科へ行きました。女性は耳と鼻をつなぐ管が細く、老化によって不安定になりがちなのでそういうことが多いそうです。
その後も不調が続きました。音は聞こえるので聴力検査では問題ないのですが、男性のボソボソ声などがはっきり聞き取りづらいのです。
これはストレス。
82歳の父と話したら「そうそう!」と盛り上がり、父曰く「テレビを見ていても、ドラマでボソボソ喋る役のセリフや、ドキュメンタリーでも俳優のボソボソしたナレーションは聞き取りづらい。やっぱりアナウンサーのような声で話してもらうと内容がわかる」とのこと。

そこでふと思いました。
今まで考えたこともなかったのですが、就活などの面接の際、最終になればなるほど年配の方が増えますよね。そんな時、ボソボソ喋ったのでは伝わらないのではないかと。
今まで、ハキハキ話せるということはプラス要素だけれど、ハキハキではなくても普通に話せれば特に問題ないと思っていましたが、年をとった今となってはハキハキ話してもらわないと何を言ってるのかわからないのです。
伝わる声で話せるかどうかは、とても大事な要素なのではないかと思いました。

皆さん、小学校や中学校で学んだことを思い出してください。
声を出す授業はどんな授業がありましたか?
歌を歌う音楽、国語の音読、英語も声を出しますね。
そのほかの授業でも発言をするときは声を出します。
その中で、伝わる声の出し方を学んだことはありますか?
多分ほとんどの皆さんがないと思います。
外国では、小さいうちから伝わる声の出し方やスピーチ、ディベートなど、音声言語表現を学ぶ機会が多いそうです。

私を振り返ると、特にこれといって学ばないまま中学生になりました。
初めて声を出すレッスンをしたのは中学の演劇部です。
顧問の先生は名ばかりで先輩がみんな教えてくれたのですが、これが意外と今思っても理にかなっている指導で、私はそこで、腹式呼吸、通る声の出し方、滑舌などを身につけました。
その後、高校では演劇部と放送委員会に所属していたので、生の声で遠くまで響かせる演劇と、マイクにのせる放送の声の出し方の違いもわかりました。
大学ではマスコミ講座という自主的な勉強会でアナウンサーの指導を受けましたが、その講座でも伝わる声の出し方を初めて学ぶ人が大半でした。
今の学校教育では伝わる声の出し方を学ぶ機会がないのです。

伝わる声は大きな声ではありません。よく通る声です。
聞き取りやすいアナウンサーの声などは通る声なので、内容が良く伝わります。
私の息子二人は高校球児でしたが、彼らが日頃グラウンドで出している声は大きい声だけれど伝わる声ではない場合も多々ありました。
中には大きな声を出せない子もいて、「声を出せ!」と監督やコーチに言われる場面をよく見かけましたが、監督、そう言うなら声の出し方を教えてあげてくださいと思ってしまいます。
「腹から声を出せ!」もよく言われていますが、声は腹からは出ません。口から出ます。(ただ、伝わる声に「腹」は大きく関係します)

こんなふうに、声ってとても身近なのに思うように使えなかったりするんですよね。

私は数年前に県庁の受付でバイトしたことがあり庁内アナウンスも担当したのですが、一緒にやっていた方の声の悩みが「暗いと言われる。明るく読むにはどうしたらいいか」ということでした。

声の高さや声質はその人それぞれのものなので無理して変える必要はないと思いますが、声の印象はちょっとしたことで変わります。
試しに口角を上げてしゃべってみてください。それだけでちょっと明るい印象の声になります。
オペラ歌手の声がどこまで届くか実験したところ、アイウエオのうち一番遠くまで届いた音は「イ」だったそうです。イは笑顔の形。笑顔で話すと声もよく通るのです。

ただ、私が気になるのは暗いアナウンスではないんです。
私に悩みを相談してきた方は自分では声が暗いことを悩んでいましたが、声は低めでも、マイクの向こうに身近な誰かがいるということを想像して、その人に笑顔で話しかけるようにすると低くても明るい声になります。
そして、「このお知らせの内容をしっかり伝えよう」と思って普通にアナウンスすれば十分です。 
逆にちょっと喋りが上手くなった人が節をつけてアナウンスすると、そのイントネーションばかりが気になって内容がしっかり伝わりません。

でも、実は相手に何かを伝えるとき一番大切なのは声の質や読み方のテクニックではなく、伝えたいという気持ちです。
その気持ちにプラスアルファでしっかり伝わる声が出せたら、より一層思いが相手に伝わります。
自分の声を受け入れて、堂々と声を出してください。
自分の声が好きになると自己肯定感が上がるという研究結果もあるそうですよ。

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