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#11「夏の読書」~ 闘う読書

「マラマッド作『夏の読書』~読書における闘争~」について語ります。
米の作家・マラマッド(1914-1986)の短編に「夏の読書」がある。
                     (「魔法の樽」所収)

【あらすじ・・・・】
高校を中退した16歳のジョージが住むNYの下町には、移民ゆえに本を読むことすらなかった人々がいる。就職口もなく怠惰に雑誌をめくり夕刻に散歩する無為な夏の日々が続くジョージは、その周囲に本を読んで過ごしていると嘘をつき、人々はかれを尊敬のまなざしでみつめる。

悶々と過ごす日々も秋の入り口に差し掛かかる。徐に彼は図書館に向かい百冊の本を机に積み上げ、そして読み始める。小説はここで終わる。

今、彼に必要なのはデートの食事代と就職して賃金を得ることである。読書で飢えは癒されるのか? なぜ彼は図書館に向かうのか? それは姉のソフィがアルバイト先で持ち帰る安っぽい雑誌をめくる怠惰な日常ではないことだけは明らかである。

【闘争する読書について】
であるならそれは闘争を余儀なくするのではないか。

「飢えた子の前で文学は有効か?」とサルトル(1905~1980)が問うたように。読書が手段・情報・点数となり対価と報酬となるとき読む作法は喪失している。

高校の教科書「教材」であったこの短編小説は余禄の授業として扱われた記憶がある。のちに購入した青い表紙の文庫本は今や見当たらない。

闘う読書。闘争する読書。高校時代を過ぎて人生の降り口に立つ今になって、そのように「夏の読書」を読み解くことができる。(某高等学校「図書館だより」の依頼記事を再編しました)


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