「勇者」使用禁止!? 物議を醸す新キャラの特徴とは?
E-sportsの種目の一つである大乱闘スマッシュブラザーズ、通称スマブラ。総勢70体を超えるキャラクターが使えることから、キャラクターの多さも一つの特徴となっています。
しかし最近、南オーストラリアのスマブラの大会で、あるキャラクターが使用禁止になったことが話題となりました。今回は禁止されたキャラ、「勇者」について述べていきたいと思います。
新ファイター、「勇者」とは?
国民的RPG『ドラゴンクエスト』から主人公の勇者がスマブラに参戦。
最新作『ドラクエ11』の勇者だけでなく、別カラーとして他のドラクエシリーズの勇者も用意されており、計4シリーズの勇者が使用可能です。
ちなみにドラクエを制作している会社は、スクウェア・エニックス。『ファイナルファンタジー』シリーズのクラウドに続いて、二度目のスクウェア・エニックスからのゲスト参戦キャラとなっております。
勇者のファイターとしての特徴
続いて、勇者というキャラの特徴を見ていきましょう。勇者には、他のキャラにはない、固有の「MPゲージ」というものが存在します。
各種必殺技は、これらのMPゲージを消費しないと出せない代わりに、かなり強力なものが揃っています。
また、勇者の醍醐味といえば、なんと言っても下必殺技のコマンド選択でしょう。
20種類以上ある技の中から、4つが毎回ランダムに選出され、その中から1つ選んでMPを消費つつ技を出すことができるというものです。
このように、コマンドは毎回ランダムに変化します。
これらには、使えば自分が不利になりうるようなものも含まれているためリスキーではありますが、その分他のキャラにはないような強い技も多く含まれています。
更に、スマッシュ攻撃を使用した際に8分の1の確率で発生する「かいしんのいちげき」。
これが当たってしまえば、例え蓄積パーセンテージが低かったとしても撃墜されてしまうことも少なくありません。
これらの特徴から、不利な状況化においても一瞬で試合の展開を変えてしまいうるキャラクターといえるでしょう。スマブラの大会でも、プレイヤーが勇者を選択すれば聴衆がざわつくことも少なくありません。
南オーストラリアで勇者が使用禁止に
そんな勇者に関する、オーストラリアの競技シーンでの動きが各地で議論を呼びました。
2019年8月14日、南オーストラリアの大会のオーガナイズなどを行っているSouth Australia Smash Centralという団体が、同団体主催の大会での勇者の使用禁止を発表しました。スマブラの大会で特定のキャラが使用禁止になるというのは、非常に珍しいことです。
こちらがその詳細について記述された文章になります。
ここで勇者の使用禁止の大きな理由として掲げられているのは、ランダム性の排除です。
以前の記事で、E-sportsの大会ではルールに特定の設定や制約を設けることで、ランダム性を極力排除していることをお話しました。
勇者の技は、あまりにもランダム性に依存しすぎている性能であるものが多くあり、それらの特性によって大会の競技性そのものが損なわれてしまうのではないか。そのため、使用禁止にせざるを得ないといった内容が、上記で紹介した英文章になります。
しかし、禁止された地域が、南オーストラリアというローカルなエリアであること。この地域自体、競技シーンの規模としてはさほど大きくないため、世界の競技シーン全体に大きな波紋を呼ぶことはありませんでした。
フランスの公式大会で、勇者使用禁止の発表
しかし、その後新たに別の地域にて大会での勇者使用禁止が発表されました。
場所はフランス、それも、公式大会での使用禁止。つまりフランスの任天堂が主催する大会での禁止です。
しかしその後、ニンテンドーフランスが、ルールを欧州基準のものに統一したことを発表。それにともない、勇者の使用禁止も撤回されましたが、ローカルな場所ではなく、比較的大規模なシーンでの使用禁止の発表は、多くのプレイヤーに衝撃を与えました。
言語による公平性の欠如
フランスでの勇者使用禁止の発表については、禁止理由ははっきりとは公言されてはいないものの、おそらくは言語の違いによって生じる問題が主な要因ではないかと考えられています。
勇者の競技シーンでの使用に際して、強いランダム性の他にも、もう一つ問題が挙げられます。
それは、下必殺技のコマンド選択における、言語の問題です。
このコマンド選択、先ほど挙げた画像では、各種選択可能な技が日本語で表記されていました。
では、言語設定を日本語以外の言語に変えてみたらどうなるでしょうか。
言語設定を英語にし、改めて下必殺技を選択してみます。
技名が全て英語になってしまいました。
それでは、韓国語では?
마햐드 베기?????
このように、言語設定によってコマンドの技名の言語まで変わってしまうのです。
ヨーロッパの国の一つであるフランス。隣接国はドイツ、スペイン、スイス、イタリアなど数多く、対戦するプレイヤー間で言語が異なるということは大いにあり得ます。勇者を使用するプレイヤーの母語がゲームで設定された言語とは違うものであったら、勇者を自分の思うように操作ができなくなってしまいます。
また、勇者を対戦相手に使用された場合にも、対戦相手と母語が違うことによってディスアドバンテージを背負うことになります。
スマブラの競技シーンで勝つために肝になるのは、相手の動きを見て、それに対応して行動すること。
母語が異なることによって、勇者を相手に使用された際に反応が遅れたり、相手が次にする行動の予測がしきれなかったりといった事象が発生する可能性があります。ゲームの腕ではなく、言語的要素が試合の結果に影響を与えることになりかねません。
『勇者』は使用禁止に値するのか?
確かに勇者が競技シーンの中で使用される場合、前述したランダム性に関する問題、言語に関する問題はなかなか避けられないと思います。
しかし僕は、競技シーンでの勇者の使用は、「あり」だと思っています。
いくつか理由を挙げてみましょう。
1.ランダム性が高いといえども、使いこなすにはスキルが必要である。
勇者の技はランダム性が強いことは先程お話しましたが、それらの技を上手く繰り出す際にも、それ相応のスキルが必要です。
例えば、先ほども何度も言及しているコマンド選択ですが、
コマンドを選ぶ前に攻撃を受けてしまうと、
技が出せないことに加え、手痛い反撃を受けてしまう場合もあります。
うまくコマンド技を出すには、相手と距離を取りつつ下必殺技を選択→選択肢を確認→適切なものを選択。この一連の動きを相手の攻撃が当たる前に、短い時間で行わなくてはいけません。
短時間で画面の情報を判断し、正確にボタン入力を行う。この一連の流れは、E-Sportsの醍醐味ともいえる技術を要求されているため、競技シーンのバランスは保たれているといえるでしょう。
2.バランスが壊れるほど強すぎるキャラクターではない。
対戦ゲームの歴史では、「強すぎるから」といった理由で禁止されたことのあるキャラクターもいます。
「ストリートファイターシリーズ」の豪鬼なんかがそうですね。
しかしスマブラの勇者は、強すぎて対処しきれない、というほどのファイターでもないと思います。
確かに必殺技の破壊力は絶大ですが、
・動きが遅い
・着地狩りに弱い
・MPが尽きると攻撃手段に乏しい
等々、明確な弱い部分があります。
実際、ここ最近の大会での上位ファイターにも勇者はそれほど見られず、上位層を独占しているわけではありません。強い部分はあっても、ゲームバランスが壊れるほどの影響は与えていないのではないでしょうか。
おわりに
最後まで読んでくださってありがとうございました。
スマブラはキャラクターの多さも魅力の一つであるため、大会で全キャラクターが使えないというのは、悲しいことだと思います。
勇者を禁止にしている環境で、いちはやくルールが改定され、全世界の競技シーンで勇者が使用可能になることを願っています。
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