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『地面師たち』を見たらお盆に墓参りに行きたくなくなった。

*このnoteは『地面師たち』のネタバレを含みます。しかし、『地面師たち』はネタバレを踏んだ状態で見ても面白いので問題ありません。どうしても気になる場合はブラウザバックしてください。


Netflixのオリジナルドラマ『地面師たち』へが話題になっている。

積水ハウス地面師詐欺事件という実際に起こった事件を元にしたドラマで、全7話ということもあって一気に見てしまった。


ちなみに、ドラマでは積水ハウスならぬ石洋ハウス(セキヨウハウス)が地面師に112億円というバカみたいにデカい金額を騙し取られている。三井、東急、野村、森といった大手不動産会社の名前は出てくるが、積水ハウスは石洋ハウスだ。
騙された側としてちょっとでも名前を変えておこうという効果があるんだかないんだか分からない配慮がされている。

死体転がりすぎ

『地面師たち』の話に戻る。

地面師グループの中では豊川悦司が演じる「ハリソン山中」というキャラクターがとにかくぶっ飛んでいる。人の死に興奮するという性癖で、とにかく人を殺す。地面師詐欺よりもこっちの方が罪として重い。


実際の地面師詐欺に重要なのは身分証明書や印鑑証明、パスポートの偽造という地味な部分が大きい。

綾野剛がホストに弟子入りしたり、リリーフランキー演じる刑事をハリソン山中(豊川悦司)が殺したり、と無駄に裏社会っぽい要素が多すぎる。
まあ、そうでもしないと三為(さんため)契約がどうとか、善意無過失がどうとか、宅建試験の対策動画の様相を呈してしまうというのは分かるが、それにしても死体をゴロゴロ転がしすぎ感は否めない。
ドラマに起伏をもたせるために演出をどんどん派手に派手にしようとするのは分かるが、ハリソン山中の元となった積水ハウス地面師詐欺事件の本当の犯人は、とんだサイコパス野郎のように仕立て上げられてたまったもんじゃないだろう。
「いやぁ~人殺しまではやってないんですけどねぇ・・・」という犯人の声が聞こえてきそうだ。ガチの犯人は是非レビューサイトに星1を付けてコメントしてほしい。


地面師詐欺というのは、地主に成りすまして詐欺を行うという、構造としては分かりやすすぎる詐欺だ。
それを112億円という騙されるにしては大きすぎる金額、犯人である主人公の過去、追いかける定年間際の刑事と新人女刑事のバディ、地面師詐欺グループトップのハリソン山中の不気味さ、という分かりやすく面白いパーツを組み合わせてドラマが成立している。

道中も無駄にハラハラさせる演出が多い。本物の地主がタクシーで戻ってきたと思ったら、寺を参拝するおばあちゃんがやって来ただけだった、なんてシーン、あれはなんなんだ。視聴者をハラハラさせるためだけのおばあちゃん。


刑事ドラマあるある。犯人、墓参りがち

地面師グループの綾野剛が演じる辻本拓海は20代の頃に母親と妻と子供を亡くしている。
父親は町の小さな不動産屋を営んでいたが、地面師詐欺に遭い会社は倒産。ヤケになった父親は自宅に火をつけて一家心中を謀ったが自身は生き残ってしまい、刑務所に収容されている。

綾野剛が石洋ハウスとの契約前に案の定墓参りに訪れる。
そこで待ち構える池田エライザ演じる若手女刑事。
池田エライザは逮捕状を取らず独断で動いているので、綾野剛はその場で逮捕はされないものの、詐欺を諦めるように説得される。

お墓は逮捕に至っていない状態で犯人と刑事が話す場所の定番だ。
どんなアニメや映画で見たか覚えていないほど、このシチュエーションはよく見かける。100回は見ているかもしれない。

よくあるシーンだなあと思いながら見ていたが、綾野剛の立場を自分自身に置き換えてみると急に怖くなった。

警察が逮捕できない人間はいない

私は普段車を運転しているが、よく通る道に白バイがしょっちゅうネズミ捕りをしている。止まれを一時停止しない、横断歩道を渡ろうとしている人がいることに気がつかず通り過ぎてしまう、制限速度30キロの道を40キロで走る、などで切符を切られている人を頻繁に見かける。

交通違反を肯定するわけではないが、車を運転している人間で違反をしていない人間を探す方が難しい。
都会では電動キックボードのLUUP(ループ)が流行っているが、あんなもの違反切符が金を払って街中を走っているようなもんだ。


https://news.goo.ne.jp/il/102317/LUUP%E3%81%AB%E4%B9%97%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%80%81%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%80%8C%E9%9B%BB%E5%8B%95%E3%82%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%AB%E6%86%8E%E6%82%AA%E3%81%8C%E6%AD%A2%E3%81%BE%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D


我々は、生きているだけで何かしらの罪を犯したと言いがかりをつけられて逮捕される可能性を秘めている。
ちょっとした動き、ちょっとした目線だけで他人を不快にさせたとして知らず知らずのうちに逮捕要件を満たしてしまっているかもしれない。

シェアしたくなる法律事務所というサイトでは、体臭や口臭で罪に問われることはまずない、と断言しており「相手が病気や目まいになるほどの悪臭を嗅がせる必要があるので、現実的には体臭・口臭が原因で傷害罪で立件されることはまずないでしょう。」と主張している。

https://lmedia.jp/2014/05/01/52218/

しかし、弁護士先生は甘い。私が普段どんな悪臭をまき散らしているか分かっていないようだ。
私自身風呂に毎日入っており、体臭や口臭には気を遣っているが、実際に臭いかどうかは別の話だ。自分自身の臭いというのは分からない。

どれだけケアしていたとしても、電車に乗り遅れそうになり走った後、汗の臭いで爆臭兵器になった身体で乗客が目まいを起こさないとも限らない。

自分が知らないところで、爆臭によって目まいを起こしたと言い張られた場合、それを否定する材料は持ち合わせていない。

最新流行はお墓でネズミ捕り

『地面師たち』の綾野剛は明確な意思をもって詐欺を行っていたので当然逮捕されるいわれはあるが、自分はそうではない。ただただ普通に生活しているだけだ。

しかし、前述の通り、警察は本気を出せば全人類を逮捕することができる。

私がお盆にお墓参りに行ったとする。警察はそこで待機をしていて、爆臭の罪で私を逮捕できるのだ。
例えその時臭くなくても関係ない、いつかどこかの電車で爆臭だったと警察に言い張られてしまえば、それで終わりだ。


警察は見通しの悪い交差点でネズミ捕りとして交通違反者の切符を切ることが主流だが、2024年からはお墓で待機して、臭そうなヤツがいたら逮捕するというのが主流になるだろう。間違いない。


『地面師たち』は私たちに大きな学びを与えてくれた。お盆に墓参りをしてはいけない。
この記事は2024年8月12日に書かれているが、教えを守るため、私は今年墓参りに行かないことにする。よろしくお願いします。


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