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【ネタバレあり感想】私がシン・エヴァンゲリオン劇場版:||を観て涙せずにはいられなかった理由

なんとなく自分のお気持ちを書き殴っておきたいなあという思いが強く芽生えたのでだらだらと記していきます。

公開から2週間が過ぎ恐らく様々な感想や考察が展開されていると思うのですが全体的にエヴァンゲリオンという作品に対して正面から向き合ってる内容が多いなあという印象を持っています。

一方私はというと子どもの頃は間違いなくエヴァンゲリオンという作品を好きになりその難解な内容にものの見事にハマっていたのですが歳を重ね、色々な経験を経たこともあったからなのか、いつの間にエヴァンゲリオンへの興味が生みの親である庵野監督への興味にスライドしていたのでシンエヴァがどういう結末を迎えるのかというより庵野監督がどうやってエヴァンゲリオンに向き合ったのかという視点でシンエヴァの視聴に臨みました。

シンエヴァ公開に至るまでの庵野監督の身に起きていたことを断片的にではありますが知っていたのでそういった現実での出来事を加味した上で鑑賞した結果キャラクターの台詞一つ一つが庵野監督の感情の発露に聴こえ、涙なしには見ていられなかったです。パリのシーンが終わって次のシーンでBGM流れ始めたところから泣いていたので我ながらいくらなんでも感情移入が過ぎると思います。完全にやばい人です。

正直私くらい感情移入しすぎるのはやりすぎですがエヴァンゲリオンシリーズについては庵野監督の内面が強く表れている作品だと思うので、作品が生まれるまでの背景を知ればまた違った視点で楽しめると思います。これから2周目以降を観ようと思っている方には特に知って頂きたいと思い私の感想と併せて作品の背景を知ることの出来る記録をまとめました。

まず初めに知ってほしいのはヱヴァンゲリヲン新劇場版:序の公開前に発表された所信表明です。全文は下記の通りとなります。

我々は再び、何を作ろうとしているのか?

「エヴァンゲリオン」という映像作品は、様々な願いで作られています。

自分の正直な気分というものをフィルムに定着させたいという願い。
アニメーション映像が持っているイメージの具現化、表現の多様さ、原始的な感情に触れる、本来の面白さを一人でも多くの人に伝えたいという願い。
疲弊する閉塞感を打破したいという願い。
現実世界で生きていく心の強さを持ち続けたい、という願い。

今一度、これらの願いを具現化したいという願い。

そのために今、我々が出来るベストな方法がエヴァンゲリオン再映画化でした。
10年以上昔のタイトルをなぜ今更、とも思います。
エヴァはもう古い、 とも感じます。
しかし、この12年間エヴァより新しいアニメはありませんでした。

閉じて停滞した現代には技術論ではなく、志を示すことが大切だと思います。
本来アニメーションを支えるファン層であるべき中高生のアニメ離れが加速していく中、彼らに向けた作品が必要だと感じます。
現状のアニメーションの役に少しでも立ちたいと考え、再びこのタイトル作品に触れることを決心しました。

映像制作者として、改めて気分を一新した現代版のエヴァンゲリオン世界を構築する。
このために古巣ガイナックスではなく自身で製作会社と制作スタジオを立ち上げ、初心からの再出発としました。
幸いにも旧作からのスタッフ、新たに参入してくれるスタッフと素晴らしい面々が集結しつつあります。
旧作以上の作品を作っている実感がわいてきます。

「エヴァ」はくり返しの物語です。
主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です。
わずかでも前に進もうとする、意思の話です。
曖昧な孤独に耐え他者に触れるのが怖くても一緒にいたいと思う、覚悟の話です。
同じ物語からまた違うカタチへ変化していく4つの作品を、楽しんでいただければ幸いです。

最後に、我々の仕事はサービス業でもあります。
当然ながら、エヴァンゲリオンを知らない人たちが触れやすいよう、劇場用映画として面白さを凝縮し、世界観を再構築し、
誰もが楽しめるエンターテイメント映像を目指します。

2007年初秋を、御期待下さい。

原作/総監督 庵野秀明
2006 09/28 晴れの日に、鎌倉にて

このように当時の文章からはあえてエヴァンゲリオンをもう一度作ることで何かを伝えようとする強い意志を汲み取る事ができます。私はあの難解で苦しい終わり方をした作品で何が起こるのか楽しみにしていたことを今も記憶しています。

次にシン・ゴジラ制作に際してのコメントの記録があるのでご覧ください。

当時私は「エヴァは心を壊すほどにエネルギーを使う作品ということなのか、正直Qはあんな終わり方だったんだから早く完結編作って欲しいけどゴジラも好きだからそれならまあ待つか、仕方ない」くらいに思っていました。

次にカラー創設からQ劇場公開後、そしてカラー10周年を迎えるまでに何をしていたかを映像にしてわかりやすくした作品がカラー公式youtubeチャンネルにて公開されているのでご覧いただければと思います。

当時はエヴァではない事柄で庵野監督が露出する度にそんな寄り道してないで早くエヴァ完結させろよと思った人は少なくなかったと思います。ですがそういったエヴァではない仕事を通して庵野監督の心は少しずつ回復して行ったのだと思います。

そしてこういった事柄と並行して古巣のガイナックスとの争いがあったことをご存じでしょうか。これについてはダイヤモンドオンラインで庵野監督本人による特別寄稿として事細かに状況を記した記事があるので読んでいただければと思います。

この記事が掲載されたのは2019年12月の末なのですがこの記事を読む前からカラーとGAINAXの間で係争中だということはニュースで知っていましたしGAINAXから続々とクリエイターが続々と離脱していたことも知っていましたがここまでひどい状況だとは思いませんでした。特にこの記事の最後の文章がとてもショックでした。以下に引用を記します。

会社の経営だけでなくこのような事態になっても当時の経営者たちは、自身にも社員にもスタッフにも作品にも社会にも相応の責任を取ろうとはしていません。

 そのことが、債権会社の経営者としてではなく、学生時代からの友人として、残念です。

そして、彼らとは昔のような関係にはもう戻れないであろうことを、最も残念に思います。

私はこれを読んだときQの製作に心身をけずってさらに付き合いの長い友人からも裏切られるような出来事があればそりゃあ心も壊れるよなと納得せざるを得ませんでした。

ですが、どれだけズタボロになっても、それでも庵野監督は立ち上がりました。エヴァの「くりかえしの物語」にシンクロするかのように立ち上がりました。TVシリーズと旧劇でボロボロになっても、もう一度立ち上がって、またボロボロになってもまた立ち上がってついに辿り着いた庵野監督の境地がこれなのかと思うと涙せずにはいられませんでした。第3村でシンジくんが「どうしてみんな優しいんだ」とアヤナミに叫ぶシーンがありました。Qの後の庵野監督の状況と重ね合わせると涙せずにはいられませんでした。宮崎駿が風立ちぬの堀越二郎の声に庵野監督を起用したのも、東宝がゴジラの新作の監督として庵野監督に熱心にオファーしたのも色々な形での優しさだったのかと思うとその優しさに涙せずにはいられませんでした。また、シンジくんがもう一度エヴァに乗ると決意し自らDSSチョーカーを取り付けた時の姿に庵野監督の姿を重ねて涙せずにはいられませんでした。鈴原サクラのエヴァに乗らんでくださいという叫びに私は自分の思いを重ねてしまい、涙せずにはいられませんでした。Q以降エヴァ以外のことで活躍する庵野監督の姿を見てもうエヴァを作らなくてもいいんじゃないか、エヴァを作らない世界があってもいいんじゃないか、もう苦しむ必要はないんじゃないかという思う気持ちとシンエヴァが公開されるのを心待ちにしている気持ちがぐちゃぐちゃに混ざった私の心を鈴原サクラが代弁してくれてるように思えました。それでもシンジ君(庵野監督)は決着をつける為にエヴァに乗った(作った)のでした。そこまでの決意を見せられてはもう無事を祈って見送るしかありません。

最終盤の各キャラクターの独白はありのままの庵野監督の気持ちを見せつけられたような気がしてまるで自分にとって大切な人が悩みを打ち明けてくれている時のような気分になりました。だから私はそれが嬉しくてそこでもやっぱり涙せずにはいられなかったのだと思います。

そして最後のシーンでシンジ君(庵野監督)はDSSチョーカー(エヴァの呪縛)を外されマリ(庵野監督の中にはないモノの総体)と一緒に新しい世界へと駆けて行きました。まさかエヴァンゲリオンという作品でこれほどまでにスッキリと、そして希望に満ちた気持ちになれるとは思いませんでした。

所信表明から14年以上の時が過ぎましたが今思えばこの歳月は庵野監督にとっても私にとっても必要な時間だったのかもしれません。奇しくも物語で過ぎ去った時と同じ時間が過ぎましたが庵野監督は当時少年だった私との約束を確かに守ってくれました。

さようなら、全てのエヴァンゲリオン。
そしてありがとう、庵野監督。

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